理学部物理学科

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2012年度物理学科コロキウム(2012年6月20日)

日時

2012年6月20日(月) 16:00 - 17:00

場所

理学部5号館 1階 5104

講師

塚崎 敦 氏(東京大学大学院工学系研究科附属 量子相エレクトロニクス研究センター)

開催内容

酸化物ヘテロ界面における2DEG生成と量子ホール効果

 半導体界面に形成される2次元系は、量子ホール効果やメゾスコピック輸送をはじめとする多様な物理現象の舞台となっている。それらの研究を進める上では、半導体をベースとする高い制御性が欠かせない。特に、積層構造を自在に制御できる分子線エピタキシー技術や伝導性制御のための電界効果素子技術が重要となっている。我々は、酸化物の持つ様々な特長を電子素子として応用する「酸化物エレクトロニクス」を標榜し、薄膜技術の高品質化や伝導性制御技術開発を行ってきた。その過程で、ZnO系ヘテロ構造の制御性を半導体水準にまで引き上げ、高移動度2次元電子系の形成技術開発に成功した。ZnO系界面の2次元電子系は従来の半導体技術とは異なり、分極効果によって生じる。ウルツ鉱構造を有するZnOは、結晶構造の非対称性によって自発分極を持つ。自発分極量の異なる二層を積層すると、その界面には分極量差が生じ、この静電不安定性を電荷蓄積によって補償する。この分極効果で蓄積される電子系の輸送現象では、ドナーなどの不純物添加を行わないため、低温でのイオン化不純物散乱の影響が小さいと期待できる。現在までに、MgZnO/ZnO界面における最高電子移動度は770,000 cm2V-1s-1に到達し、平均自由行程も1mmをゆうに越える。酸化物ヘテロ界面で初めて整数量子ホール効果の観測に成功した2007年以降[1]、4年間で約2桁の移動度向上を達成した。それに伴って、明瞭な分数量子ホール効果、特にn=1/3準位についても観測した[2,3]。今後、電子相関の強い2次元電子系として、電子間相互作用によるスピン分極率の増大やウィグナー結晶相の観測などが期待される。本発表では、整数および分数量子ホール効果の観測に至るZnO系ヘテロ構造形成技術の経緯を紹介するとともに、電子間相互作用に起因するg因子の増大など、ZnOヘテロ界面の2DEG輸送現象について述べる。

[1] A. Tsukazaki, et al. Science 315, 1388 (2007).
[2] A. Tsukazaki, et al. Nature Materials 9, 889 (2010).
[3] Y. Kozuka, et al. Phys. Rev. B 84, 033304 (2011).

お問い合わせ先は物理学科コロキウム係:大江純一郎 junichirou.ohe(atmark)sci.toho-u.ac.jp   (atmark)は@です。

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