理学部生命圏環境科学科

メニュー

ふたたびアツくなる地熱(2014年3月)

また動き出した地熱エネルギーの世界

このコーナーでは、過去、2009年6月に地熱エネルギーについての記事(山口教授)が掲載されました。こちらの記事で山口教授は、地熱エネルギーの 基本的な理解と、火山国日本にあっての地熱エネルギーの可能性についてわかりやすく解説されています。その後、日本での地熱エネルギーは効率的に利用され るようになったかといわれると、実はその後も困難な状況がずっと続いてきました。ところが、東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、ふたたび地熱利用の議論がにわかに脚光をあびるようになってきています。今日は、地熱エネルギーの基本的な性格をおさらいすると同時に、ここ数年の大きな変化、今後の期待と課題について、わかりやすくご紹介します。

日本で稼働する地熱発電所(八丁原) 日本で稼働する地熱発電所(八丁原)

熱のもとは地球のチカラ

最近では自然エネルギーや再生可能エネルギーという言葉も、すっかりなじみのものになりました。自宅に太陽光発電の設備を付けているという家も、さほど珍しくなくなってきましたし、風力発電の大きな風車を目にしたことがある人も多いでしょう。そしてこれらは、電気エネルギーを生み出すときに地球温暖化のもとになるといわれるCO2などの温室効果ガスの排出が、従来の石油や石炭などの化石燃料に比べて少ないのが特徴です。そしてこれらは、太陽や地球などの自然のチカラに由来し、私たち人間が利用するよりも多くのエネルギーが自ずと補充されることが特徴です。

ではこの再生可能エネルギーの利用では、全くCO2を排出しないのかといわれると、実はそうではありません。例えば、そのエネルギーを利用するための設備を作る時や、設備のメンテナンス、使い終わった設備の片付けの時など、CO2を排出することになります。このように、そのものを利用している時だけでなく、前後も含めて全体でどれだけ環境に優しいのかを考える方法として、ライフサイクル・アセスメント(LCA)があります。モノの一生をとおして考えようという発想です。下のグラフを見るとわかるのですが、実は地熱発電は風力や太陽光などの発電に比べても、CO2の排出が少ないと考えている人もいるのです。

そして、地熱エネルギーの特徴として、安定した利用が挙げられます。例えば、太陽光のエネルギーでは、夜になったり昼までも空が曇ってしまったらうまく行きませんし、風力も風が止まってしまったらエネルギーが得られなくなってしまいます。でも地熱のチカラは、昼でも、夜でも、夏でも冬でも、どんな天気だって得ることができます。

このような理由から、地球のチカラ、地熱エネルギーによる発電は、再生可能エネルギーの中でも、優秀なエネルギーと考える人もいるということです。

地熱エネルギーの利用への応援

でも、そんな地熱エネルギーですが、私たちの国では十分に利用できていないと考える人が多くいます。それはなぜでしょうか。例えばこんなデータがあります。日本は世界で3番目に多く地熱のエネルギーが地下に眠っているとされています。しかし、それを利用している量は、日本の7分の1しか地熱エネルギーを持たないイタリアよりも低いのです。これでは宝の持ち腐れといわれてしまうかもしれません。

どうしてそんなに利用されていないのか。以前の山口教授の記事でも少し触れられていますが、地熱の利用には難しい課題が主に3つあったのです。

・1つは、多くの地熱エネルギーが自然公園などの貴重な自然の下に眠っていて、そういった場所は開発してはいけないと国によって決められていたのです。

・2つ目の課題は、目で直接見られない地下のエネルギーなので、探すのに苦労して開発に大きなお金がかかるという課題です。

・そして、3つ目は地熱エネルギーを利用することで周りの人々へ迷惑がかかってしまうかもしれないと心配されているということです。

地熱エネルギーを積極的に利用するためには、この3つの課題をクリアしていく必要があるのです。そのために、日本の政府は工夫をしました。例えば、1つ目の課題については、貴重な自然に傷を付けなければ大切な自然公園の中や近くでも、地熱エネルギーを利用してもいいと、ルールを新しく作くりました。また、2つ目のお金の問題でも、地熱エネルギーを使ってみんなの電気を作るのであれば、お金のやり繰りを国が手助けしてくれる仕組みを作りました。このような工夫もあって、地熱エネルギーを利用するための開発の計画が全国で作られるようになったのです。

周りのみんなの心配ごと

ところが、地熱エネルギーの開発計画ができると、周りに住んでいる人たちの中から、いろいろな心配ごとが聞かれるようになってきました。その中でも最も多くの心配は、温泉にかんする事柄です。地熱エネルギーをたくさんとってしまうと、近くの温泉が枯れてしまったり、お湯があまり出なくなってしまうのではないかという心配です。もし、地熱エネルギーを利用したために、近くの温泉が枯れてしまったら、そこで温泉を使って事業をしている人は大変に困ってしまいますし、その温泉を楽しみにしている人たちも困ってしまいます。なにより、日本には昔からたくさんの温泉があって、多くの人がそれを楽しむという習慣があります。そして、それぞれの温泉地には、それぞれの文化があり、長い年月で育まれた歴史もあります。

それが突然、止まってしまったら・・・。

温泉はこれまで説明してきた地熱エネルギーと同じように、地球のチカラを利用しているのですから、心配になるのも無理はありません。他にも、地熱エネルギーの利用では地下から高温の水蒸気をたくさん取り出すので、周辺で地震が起き、これが大きな地震のきっかけになったり、地滑りがおきてしまうと心配する人もいます。

みんなが納得のできる地熱エネルギーの利用を

それでは、周りのみんなが心配している中で、どのように地熱エネルギーを利用したら良いのでしょうか。

ポイントはみんなの「理解」と「納得」です。

私たち研究者は、このようなみんなの心配ごとを「リスク」と呼びます。このリスクをどのように管理していくのか。それについて私たちは様々な方法を研究しているのですが、今日は最後に面白い取り組みをご紹介します。これはスイスのある街でのお話です。
高温岩体発電といわれる新しい地熱エネルギー利用の開発現場(スイス)
高温岩体発電といわれる新しい地熱エネルギー利用の開発現場(スイス)

この街では、高温岩体発電(山口教授の記事に解説があります)といわれる、新しい地熱エネルギー利用の開発が進められています。実はこの開発が始まる数年前、同じスイスの別の都市でよく似たタイプの開発が行われました。しかし、その開発工事中に、大きな地震がおきてしまい、街の建物に多くの被害が生じてしまいました。当然、この工事は中止になりその地熱は利用できなくなりました。そこでこの街でも、開発が始まる前に地震による被害を心配する声が多く聞かれました。

そこでこの街の人たちはどのようにしたかというと、考えられるリスクを包み隠さず、みんなで話し合うことにしたのです。それだけではありません、実際の地震が起きるとどのようなことになるのか、被害が生じた場合は誰がどのように責任をもつのか、みんなで話し合いを行ったのです。これは、リスクの可視化といって、心配ごとを互いに理解し共有するためにはとても重要な方法です。それだけではありません、地熱エネルギーを利用できるようになったら、誰がどのようにそれを利用し、利益はどのように分けるのか、心配ごとだけでなく良い面についてもみんなで話し合いを行い、みんなの計画を作ったのです。

そう、エネルギーを開発する会社だけでなく、街みんなの計画になったのです。このように、良い面も心配な面も、みんなで理解し、納得をして、それから工事を始めたのでした。実は昨年、この街でこの工事がきっかけと考えられる地震が発生してしまいました。このとき、すぐに工事は中断されましたが、ふたたび街みんなで話し合いを行い、なんと工事を再開しようという結論に至ったのです。このスイスでのお話では、温泉の課題が無いので、そのまま日本に応用することは難しいかもしれません。でも、みんなが納得のできる地熱エネルギーの利用を考える上で、とても大事なポイントを教えてくれているかもしれません。

お問い合わせ先

東邦大学 理学部

〒274-8510
千葉県船橋市三山2-2-1
習志野学事部

【入試広報課】
TEL:047-472-0666

【学事課(教務)】
TEL:047-472-7208

【キャリアセンター(就職)】
TEL:047-472-1823

【学部長室】
TEL:047-472-7110