理学部生物学科

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「動物精子の運動」 【2006年11月号】

動物精子の運動
 ある種の細胞は、人間の目で見てもわかるほど(もちろん顕微鏡で見てですが)大きく動きます。これらの細胞は見て楽しいだけでなく、細胞がいろいろな作用をするための仕組みを調べる上でも、役に立ちます。つまり、外からの刺激がどのように細胞に届き、さらに細胞の内部でどのように伝わっていくか、結果がすぐ目に見えるので調べやすいのです。この代表が精子です。
 ほとんどの精子は鞭毛を持っていて、この鞭毛がむちのようにしなって、精子細胞全体を前に進めます。顕微鏡で見ていると、元気な精子は、あっという間に視界に入ってきて、またあっという間に去って行きます。あまり元気のない精子は、ゆっくりとやって来て、途中でへたりこんだり、もっとくたびれているやつだと、首(細胞本体)だけふり動かしていたり、鞭毛がゆるやかに、うねっているだけだったりします。
 精子は、雄の体の中にいる時は決して動きません。動く能力は持っているのですが、不必要に動かないような仕組みがあるのです。そしていったん外に出るやいなや、動き出します。卵に出会うために一生懸命泳ぎます。動き出すためには、精子の中で、複雑な反応が非常に早く進みます。この反応は、まだわかっていない部分もたくさんありますが、細胞が一般に刺激に対して反応する仕組みと、共通点が多いのです。この「精子の運動開始機構」と呼ばれる仕組みを調べることで、細胞一般の反応の仕組みを知ることができます。
 硬骨魚の精子については、東大の森沢正昭という先生が、運動を始めるきっかけを見つけました。それは、
1.シロサケやニジマスなどのサケ科の魚類では、まわりにカリウムイオンがたくさんあると精子は動かない。
  • サケの雄の体の中では、精子を含んでいる液体はカリウムイオンを多量に含んでいるので、精子は動かないようになっている。  
  • 放精により川の中に精子が出されると、川の水によってカリウムイオンがすぐに薄められ、精子は運動を始める。
 ほかの硬骨魚では、
2.キンギョなどの淡水魚では、体の中と同じ浸透圧の液体(これを等張液といいます)の中では、精子は動かないようになっている。
  • したがって、雄の体の中では精子は動かない。
  • 放精により、池や川の水のような、体の中よりも低い浸透圧の液体(これを低張液といいます)の中に出されると、精子は運動を始める。
3.海水魚では、やはり等張液のなかでは動かないので、雄の体の中では精子は動かない。
  • 放精により、海水のような体の中よりも高い浸透圧の液体(これを高張液といいます)の中に出されると、精子は運動を始める。
 これがわかればしめたものです。硬骨魚の精子を使って、本来動かない条件の液体に、たとえば精子のなかのカルシウムを増やす薬を加えてやると、精子が動き出したとします。これは、精子の中にカルシウムが増えることにより、この精子は運動を始める可能性が高いことになります。このようにして、「硬骨魚の精子の運動開始機構」の研究は一気に進みました。
 また動物によっては、卵が「こっちだよー」と、精子に知らせます。誘引物質と呼ばれるものを出すのです。これも昔から、いろいろな人が興味を抱いてきました。ある動物の誘引物質はどんなものか、精子はその物質にどう反応するのか、ほかの誘引物質と共通点はあるかなど、これも非常に面白いテーマです。
(写真は、コオロギの精子です。とても長い鞭毛を持っています。)

(発生生理学研究室:谷本さとみ)

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