テレビに映った研究室や病院で見かける「あれ」は何?
はじめに
今回の記事では、生命科学系の研究室によくある機器・用品のうち、テレビや病院の診察室などで見かける頻度の高いものをいくつか紹介したいと思います。
キムワイプ
理系の研究室であれば生命科学系かどうかを問わず、ほとんどの研究室に転がっている・・・ではなく、使われている、日本製紙クレシア株式会社の商品です。テレビに研究室がでてくる時に主役として登場することはありませんが、ほぼ間違いなく映っている、「超一流の脇役」的存在です。一見ティッシュペーパーのようで、実際それに近い使い方をするのですが、ティッシュペーパーと大きく異なる点があります。それは、使ってもホコリが出ない、破けにくい、ということです。そのため、研究室では器具についた汚れや液体を取る際に使います。工場や一般家庭でも愛好家がいるようで、ネットショップでの取り扱いも結構あります。この深緑と緑のデザインの箱、次回テレビで研究室が映った時に探してみてください。きっと見つかると思います。
スターラーとスターラー・バー
英語のスペル(stirrer/stirrer bar)をみればわかりますが、物を攪拌(かくはん)する(=混ぜる)のに使います。これは、著者が研究室に配属になった時に最も感動した機器です。スターラーは箱型の装置で、中にモーターと連動した磁石が入っています。一方、スターラー・バーは棒状の磁石(円盤型やラグビーボール型の物もあります)で、日本語だと「攪拌子(かくはんし)」と呼ばれます。
ここで、砂糖水を作ることを考えてみましょう。高校では普通、ビーカーに砂糖と水を入れてガラス棒で一生懸命かき混ぜますよね。しかし、スターラーとスターラー・バーがあれば、眺めているだけでよいのです。ビーカーの中に砂糖と水、スターラー・バーを入れ、スターラーの上に載せてスイッチを入れる。そうすると、スターラーの中で回転する磁石と連動してビーカー中のスターラー・バーが回転し、自動で攪拌してくれる、というわけです。なんと便利なことでしょう!
ウォーターバス
英語で書くと"water bath"。「水風呂」・・・と訳したいところですが、日本語だと「恒温槽」と言います。温度センサー付きのヒーターがあるので、中に入れた水(湯)を希望の温度で一定に保つことができます。試験管やフラスコなどを水(湯)に入れ、その中身を一定温度で反応させたり、試薬を一定温度で保温するのに使います。料理でいうところの湯煎(ゆせん)器のようなものです。これがあれば、チョコのテンパリングもバッチリ(?)。
オートクレーブ
高温高圧になる蒸気釜のようなもので、日本語では「高圧蒸気滅菌器」と言います。しかし、漢字で呼ばれるのを聞いたことはなく、通常カタカナ名で呼びます。中に水を入れて高温(著者の研究室では121℃)にすることで水蒸気を発生させ、この時の高温と水蒸気による高圧(121℃の時だと2気圧の圧力が発生)とで、機器の中に入れた器具や液体を滅菌します(注1)。卓上型のタイプのものは、歯医者さんや病院の診察室、保健室などでも結構見かけます。
(注1)機種によってはオートクレーブ処理後の減圧を積極的に行うものもあり、そのような機種では液体の滅菌を行うのは危険です。高温になっている液体が、急な減圧時に突沸してしまうからです。
おわりに
研究機器・器具は、一般家庭にあるような日用品ではありません。量産しないためか、どうしてもその価格は皆さんが予想するよりも一桁ほど高くなっています。今回紹介した機器・器具なども、街中のホームセンターや電器屋で日用品として売られるようになれば、一般の人も手軽に料理その他に使えるようになるし、逆に我々研究者は安価に購入できて助かるのですが・・・。