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プレスリリース 発行No.1168 令和3年11月9日

若年者メンタルヘルスにおける都市型統合サービスの効果が明らかに
~臨床型ケースマネジメントが医療と保健のギャップを解消する~

 東邦大学医学部精神神経医学講座の根本隆洋教授らの研究グループは、厚生労働科学研究(「MEICIS」⦅参考1⦆)において、若年者を対象としたメンタルヘルスに関する早期相談・支援窓口「ワンストップ相談センターSODA:以下、SODA」(参考2)の活動を続け、この度相談者の特徴や臨床型ケースマネジメント(注1)の支援効果を明らかにし、同研究の論文が2021年11月7日に国際学術誌「Early Intervention in Psychiatry」に掲載されました。本成果は、厚生労働省が構築を進める「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」への「早期相談・支援サービス」の導入を強く促すものといえます。

発表者名

内野 敬 (東邦大学医学部精神神経医学講座/医療法人財団厚生協会東京足立病院 医員)
小辻 有美(医療法人財団厚生協会東京足立病院 相談員)
北野 知地(東邦大学医学部精神神経医学講座/医療法人財団厚生協会東京足立病院 医員)
塩澤 拓亮(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所
      地域・司法精神医療研究部 研究員)
飯田さとみ(医療法人財団厚生協会東京足立病院 相談員)
青木 瑛子(東邦大学医学部精神神経医学講座 研究補助員)
岩井 桃子(東邦大学医学部精神神経医学講座 研究補助員)
白幡 真教(医療法人財団厚生協会東京足立病院 事務次長)
関 晶比古(医療法人財団厚生協会東京足立病院 理事長)
水野 雅文(東京都立松沢病院 院長)
田中 邦明(医療法人財団厚生協会東京足立病院 名誉院長)
根本 隆洋(東邦大学医学部精神神経医学講座 教授)

発表のポイント

  • SODAは、若年者の抱える悩みや困難に対する早期相談・支援を目的とし、若年者がアクセスしやすいような工夫や設計がなされた相談窓口です。
  • 精神疾患を有しながらも精神科受診に至っていない者や、軽度のメンタルヘルス不調を抱える者に対して、SODAのようなサービスは支援や治療の「入り口」として有用であることが明らかとなりました。
  • 早期相談・支援窓口での一定期間にわたる臨床型ケースマネジメントは、地域社会の課題である精神科領域の医療サービスと保健サービスのギャップを解決すると期待されます。

発表内容

 精神疾患は生涯で5人に1人が経験するとされ、それに伴う社会的損失が世界的に強調されており、予防や回復に向けた早期介入は社会全体で考えるべきテーマといえます。精神疾患の75%は25歳前に発症するといわれ、若年者のメンタルヘルスに対して手厚い支援が求められています。特に、軽度のメンタルヘルス不調段階から精神疾患早期段階にわたる連続した対応、すなわち病気であるか否かに依らない、不調を抱えた全ての若年者に対する包括的な支援が重要となります。
 近年、アジアを含めた世界各国で、このような連続した対応が可能な統合型サービスの設置が進んでいます。わが国においても、本研究グループは厚生労働科学研究補助金(注2)を受けて、2019年に東京都足立区の北千住駅前に、SODAを開設しました。SODAは若年者が物理的・心理的にアクセスしやすいように、スティグマ(偏見)を感じず若者が受け入れやすい、洒落たデザインで設計されています。ここで、若年者の多様な悩みや困難に対して、多職種チームによる包括的アセスメントと臨床型ケースマネジメントを実施しています。
 本研究報告では、SODAに来談した105名の相談記録を集計し、6ヶ月間継続して相談支援(臨床型ケースマネジメント)を受けた群(21名、平均19.2歳、女性57.1%)と、少数回の相談のみで終了した群(84名、平均20.9歳、女性54.8%)に分けて、検討を行いました。結果として、両群ともに最も多い相談内容は、漠然とした「メンタルヘルス不調」でした(図1)。来談者はメンタルヘルス不調に関する相談に加えて、家族問題、ひきこもり、学校に関することなど、複数領域にわたる悩みや困難を同時に相談していました。6ヶ月間の臨床型ケースマネジメントを実施した群は、統計学的に有意に多領域・項目の相談をしていました(臨床型ケースマネジメント群は平均3.4項目、短期間相談群は平均2.5項目)。
 6ヶ月間の臨床型ケースマネジメントを提供した21名のうち、71.2%は精神疾患の診断基準を満たすと考えられました。最も多かったのは不安障害などを中心とする神経症性障害(54.4%)であり、次いでうつ病などの気分障害(13.3%)、そして統合失調症などの精神病性障害(6.7%)と続きました。初回相談時点で精神科治療を受けていた者は、42.9%にとどまりました。これらの21名は、6ヶ月間に平均491.3分の臨床型ケースマネジメントを受けました。その内容は、地域生活のための支援(31.2%)、精神・心理面の支援(24.8%)、他機関との連携のための支援(19.8%)、就労支援(13.8%)、家族支援(10.5%)、であり、これらが来談者に合わせて柔軟に組み合わされていました(図2)。メンタルヘルス不調と社会生活における対人関係、就学就労状況等を総合的に評価した全般的機能は、一定期間にわたる臨床型ケースマネジメントを実施した群において、初回相談の6ヶ月後には有意に改善が見られました(Global Assessment of Functioning [GAF]スコアは、初回相談時点46.6、6ヶ月時点59.3)。
 本研究から、多くの医療機関が存在する大都市部においても、メンタルヘルスの不調や精神疾患を抱えた若年者が、適切に保健・医療機関を訪れるには依然として高い障壁があることが示唆されました。相談や支援に繋がりにくい若年者に対象を特化した、心理的にもアクセスしやすい相談・支援窓口を地域に設置し、そこで一定期間にわたる臨床型ケースマネジメントを実施することが効果的と考えられました。このような取り組みは、地域社会の喫緊の課題である精神科医療サービスと保健サービスのギャップを解決するものと期待されます。

発表雑誌

    雑誌名
    「Early Intervention in Psychiatry」(2021年11月7日)

    論文タイトル
    An integrated youth mental health service in a densely populated metropolitan area in Japan: Clinical case management bridges the gap between mental health and illness services

    著者
    Takashi Uchino, Yumi Kotsuji, Tomoji Kitano, Takuma Shiozawa, Satomi Iida, Akiko Aoki, Momoko Iwai, Masanori Shirahata, Akihiko Seki, Masafumi Mizuno, Kuniaki Tanaka, Takahiro Nemoto**責任著者)

    DOI番号
    10.1111/eip.13229

    アブストラクトURL
    https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/eip.13229

用語解説

(注1)臨床型ケースマネジメント
ケースマネージャーが様々な支援機関の仲介を担うだけでなく、当事者と協働的関係を構築しながら心理社会的介入も行うケースマネジメントの手法。

(注2)厚生労働科学研究
平成31年度〜令和3年度 厚生労働科学研究費補助金 障害者政策総合研究事業「地域特性に対応した精神保健医療サービスにおける早期相談・介入の方法と実施システム開発についての研究(MEICISプロジェクト)」(研究代表者 根本隆洋、研究分担者 田中邦明)

添付資料

図1 来談者の相談内容

図2 6ヶ月間に実施した臨床型ケースマネジメントによる相談支援時間

参考

1、「MEICIS」
地域特性に対応した精神保健医療サービスにおける早期相談・介入の方法と実施システム開発についての研究
(Mental health and Early Intervention in the Community-based Integrated care System)

2、「ワンストップ相談センターSODA」
(Support with One-stop care on Demand for Adolescents and young adults in Adachi)

以上

お問い合わせ先

【本研究発表の問い合わせ】
東邦大学医学部精神神経医学講座 教授 根本隆洋

〒143-8540 大田区大森西 5-21-16
TEL: 03-3762-4151(代表)
E-mail: meicis[@]ext.toho-u.ac.jp
URL:(精神神経医学講座)https://www.toho-u.ac.jp/med/lab/rinsyo/psycho1.html
   (MEICIS)meicis.jp

【SODAへのご相談】
ワンストップ相談センターSODA
担当者 内野敬

〒120-0034 足立区千住 2-29-2
TEL: 070-1353-3215
URL:https://soda.tokyoadachi.com
Instagram: @soda_sodan LINE: @944xijhu

【本ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部

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