プレスリリース 発行No.1348 令和6年3月4日
学生が偶然採集したサンプルから新種発見!
~ カタツムリとスズメを利用する新種の寄生虫 ~
~ カタツムリとスズメを利用する新種の寄生虫 ~
東邦大学理学部の脇 司准教授と同大学大学院理学研究科の古澤春紀(研究当時、大学院生)は、学部生と偶然採集したカタツムリとスズメのサンプルから新種の寄生虫Brachydistomum suzume(和名:スズメノハラヅモリ)を見つけて記載・発表するとともに、この寄生虫がカタツムリとスズメを利用した生活史を送ることを明らかにしました。
この研究成果は、「Systematic Parasitology(Electronic ISSN 1573-5192)」にて2024年2月19日に発表されました。
この研究成果は、「Systematic Parasitology(Electronic ISSN 1573-5192)」にて2024年2月19日に発表されました。
発表者名
古澤 春紀(東邦大学大学院理学研究科環境科学専攻 博士前期課程 2021年度卒業)
高山 美衣子(東邦大学理学部生命圏環境科学科 2020年度卒業)
脇 司(東邦大学理学部生命圏環境科学科 准教授)
高山 美衣子(東邦大学理学部生命圏環境科学科 2020年度卒業)
脇 司(東邦大学理学部生命圏環境科学科 准教授)
発表のポイント
- 学生が偶然採集したカタツムリとスズメ(事故死体)を研究室で調べたところ、どちらにも同じ種の寄生虫がついており、さらにそれが新種であることが分かりました。この寄生虫はスズメノハラヅモリBrachydistomum suzumeと名付けられました。
- この寄生虫の成虫は、現在のところスズメからしか見つかっていません。現在、スズメの個体数は減少していると言われています。宿主のスズメが減ることで、この寄生虫も一緒に減ってしまうのかもしれません。
- この寄生虫は、幼虫がカタツムリに寄生し、成虫がスズメに寄生します。カタツムリとスズメの間にもう一つ、別の宿主動物を経由すると考えられましたが、その宿主動物は現在のところ分かっていません。今後、カタツムリやスズメのいる地域で詳細な調査を行うことで、その宿主動物が明らかになると考えられます。
- この寄生虫の人への感染報告はありません。
発表内容
寄生虫は多数な種を含む分類群で、全ての動物にそれ特有の寄生虫が付くと言われています。このため、私たちの身近な動物にも例外なく寄生虫が付くことになります。その一方で、それらの寄生虫の種、宿主範囲、分布などの詳細な情報は意外と明らかにされていません。
このような状況の中で、東邦大学理学部の脇准教授は、都心部の自然公園、畑や田んぼのような身近な場所で、様々な寄生虫(人には感染しない種類)を発見してきました。今回、同理学部生命圏環境科学科 群集生態学研究室の古澤春紀(研究当時、大学院生)と高山美衣子(研究当時、学部生)が、2020年から2021年にかけて、買い物中などに千葉県や茨城県でカタツムリとスズメを偶然採集し、それらを研究室で調べました。その結果、カタツムリから寄生虫の幼虫(スポロシストと呼ばれる幼虫)が、スズメから成虫がそれぞれ見いだされました。詳細な研究の結果、DNA解析によってそれらが同じ種であることが分かり、さらに新種Brachydistomum suzume(和名:スズメノハラヅモリ)であることが明らかになりました(図2)。追加の調査によって、スズメノハラヅモリは少なくとも関東から四国にかけて分布し、カタツムリ4種を幼虫の宿主として利用できることも分かりました。
この寄生虫はスズメに強い病害性を示すことはなく、半ば共存する形で寄生していると考えられます。スズメノハラヅモリの成虫は、現在のところスズメからしか見つかっていません。現在、スズメはその数を減らしていると言われています。したがって、この寄生虫も、スズメとともにひっそりとその個体数を減らしているのかもしれません。
なお、スズメノハラヅモリの属する寄生虫のグループ(吸虫の二腔吸虫科)は一般的に、カタツムリからいったん外に出て、別の無脊椎動物を経由してから、鳥のような脊椎動物に感染して成虫になることが知られています。したがって、スズメノハラヅモリも、カタツムリに感染したスポロシスト幼虫からセルカリア幼虫と呼ばれる幼虫が遊出し、それが何かしらの無脊椎動物に感染すると考えられます(図3)。そして、その無脊椎動物がスズメに食べられることで感染して成虫になると考えられます。カタツムリとスズメの間に存在するはずの宿主動物は現在のところ不明ですが、スズメに食べられるサイズのものであることは間違いないでしょう。今後、カタツムリとスズメの両方が生息する場所で調査を行うことで、その宿主動物が明らかになると考えられます。
このような状況の中で、東邦大学理学部の脇准教授は、都心部の自然公園、畑や田んぼのような身近な場所で、様々な寄生虫(人には感染しない種類)を発見してきました。今回、同理学部生命圏環境科学科 群集生態学研究室の古澤春紀(研究当時、大学院生)と高山美衣子(研究当時、学部生)が、2020年から2021年にかけて、買い物中などに千葉県や茨城県でカタツムリとスズメを偶然採集し、それらを研究室で調べました。その結果、カタツムリから寄生虫の幼虫(スポロシストと呼ばれる幼虫)が、スズメから成虫がそれぞれ見いだされました。詳細な研究の結果、DNA解析によってそれらが同じ種であることが分かり、さらに新種Brachydistomum suzume(和名:スズメノハラヅモリ)であることが明らかになりました(図2)。追加の調査によって、スズメノハラヅモリは少なくとも関東から四国にかけて分布し、カタツムリ4種を幼虫の宿主として利用できることも分かりました。
この寄生虫はスズメに強い病害性を示すことはなく、半ば共存する形で寄生していると考えられます。スズメノハラヅモリの成虫は、現在のところスズメからしか見つかっていません。現在、スズメはその数を減らしていると言われています。したがって、この寄生虫も、スズメとともにひっそりとその個体数を減らしているのかもしれません。
なお、スズメノハラヅモリの属する寄生虫のグループ(吸虫の二腔吸虫科)は一般的に、カタツムリからいったん外に出て、別の無脊椎動物を経由してから、鳥のような脊椎動物に感染して成虫になることが知られています。したがって、スズメノハラヅモリも、カタツムリに感染したスポロシスト幼虫からセルカリア幼虫と呼ばれる幼虫が遊出し、それが何かしらの無脊椎動物に感染すると考えられます(図3)。そして、その無脊椎動物がスズメに食べられることで感染して成虫になると考えられます。カタツムリとスズメの間に存在するはずの宿主動物は現在のところ不明ですが、スズメに食べられるサイズのものであることは間違いないでしょう。今後、カタツムリとスズメの両方が生息する場所で調査を行うことで、その宿主動物が明らかになると考えられます。
発表雑誌
-
雑誌名
「Systematic Parasitology」(2024年2月19日)
論文タイトル
A description of a new species of the genus Brachydistomum (Trematode, Dicrocoeliidae) from the Eurasian Tree Sparrow Passer montanus in Japan, with a report on the first intermediate host.
著者
Haruki Furusawa, Tsukasa Waki
DOI番号
10.1007/s11230-024-10148-1
アブストラクトURL
https://link.springer.com/article/10.1007/s11230-024-10148-1
添付資料

図1. スズメノハラヅモリの宿主スズメ(左)とカタツムリ(写真はコハクオナジマイマイ)
写真:古澤春紀。
写真:古澤春紀。

図2. スズメノハラヅモリの成虫
スズメの胆管から採集された。体長2 mmほど。
撮影:古澤春紀。
スズメの胆管から採集された。体長2 mmほど。
撮影:古澤春紀。

図3. スズメノハラヅモリの現在明らかになっている生活史
成虫はスズメを、スポロシスト幼虫はカタツムリ4種を宿主としてそれぞれ利用。
第二中間宿主(幼虫が2つ目に利用する宿主)は未発見である。
イラスト:土井怜奈、脇 司。
成虫はスズメを、スポロシスト幼虫はカタツムリ4種を宿主としてそれぞれ利用。
第二中間宿主(幼虫が2つ目に利用する宿主)は未発見である。
イラスト:土井怜奈、脇 司。
以上
お問い合わせ先
【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学理学部生命圏環境科学科
准教授 脇 司
〒274-8510 船橋市三山2-2-1
TEL: 047-472-1653
E-mail: tsukasa.waki[@]sci.toho-u.ac.jp
URL: https://www.lab.toho-u.ac.jp/sci/env/synecology/index.html
【本ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
〒143-8540 大田区大森西5-21-16
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