プレスリリース 発行No.1157 令和3年10月1日
難治性の涙小管狭窄症・閉塞症に対する新しい手術を開発
~ 結膜鼻涙管吻合術 ~
~ 結膜鼻涙管吻合術 ~
東邦大学医療センター佐倉病院耳鼻咽喉科と眼科のグループは、 難治性の涙小管狭窄症・閉塞症に対する新しい手術「結膜鼻涙管吻合術」を開発しました。同疾患に対しては、保存的治療が無効であった場合には涙小管形成術が行われますが、涙小管の開通が維持できない場合には、従来外切開による手術やジョーンズチューブ留置術(本邦では保険適用外)が行われていました。ただ、それぞれ顔面に傷が残る点、異物を半永久的に留置しなければならない点が問題でした。今回の手術はこれらの問題を克服しており、涙小管狭窄症・閉塞症で流涙に悩む患者さんに新しい選択肢を提供できるようになりました。
この成果は2021年10月1日に 雑誌「Laryngoscope」にて発表されました。
この成果は2021年10月1日に 雑誌「Laryngoscope」にて発表されました。
発表者名
牛尾 宗貴(東邦大学医療センター佐倉病院耳鼻咽喉科 講師、難聴めまい回復センター センター長)
発表のポイント
- 難治性の涙小管狭窄症・閉塞症に対する新しい手術を開発
- 外切開も異物留置も不要な手術
- 涙小管狭窄症・閉塞症による流涙で悩む患者さんに新しい治療の選択肢を提供
発表内容
東邦大学医療センター佐倉病院耳鼻咽喉科と眼科のグループは、難治性の涙小管狭窄症・閉塞症に対する新しい手術「結膜鼻涙管吻合術」を開発しました。
上眼瞼(うわまぶた)の裏側にある涙腺で分泌された涙は、内眼角(眼裂の内側)にある上・下涙点から吸引され、上・下涙小管を経由して涙嚢、鼻涙管を通り、鼻腔内に排泄されます(図1a)。この涙の流れる経路を涙道と呼んでいます。涙道のいずれの部位で狭窄や閉塞が生じても涙の流れに問題が生じ、常に涙っぽい感じや、泣いていないのに涙が溢れたり、また目やにが増えたり等の症状に悩まされることとなります。今回開発した「結膜鼻涙管吻合術」は、涙道のうちの涙小管の狭窄や閉塞に対する手術です。
涙小管狭窄症・閉塞症に対しては、まずは経過観察や点眼薬の処方などが行われますが、これら保存的治療が無効であった場合には、細いシリコンのチューブを涙小管に通して拡げる涙小管形成術が行われます。一方、この涙小管形成術でも涙小管の開通を維持できなかった場合は、外切開による結膜涙嚢吻合術、本邦では保険適応外のジョーンズチューブ留置術などが行われてきました。ただ、外切開による結膜涙嚢吻合術では鼻の脇に2 cmほどの傷が残りますし、ジョーンズチューブ留置術では内眼角から鼻内に細いガラス管を半永久的に入れておく必要があります。ジョーンズチューブは異物ですので、定期的な洗浄や交換が必要なことや感染などによる問題もありました。「結膜鼻涙管吻合術」は外切開も半永久的な異物の留置も必要ない新しい術式です。
「結膜鼻涙管吻合術」は全身麻酔で行います。まず、耳鼻咽喉科医師による鼻腔内の操作から開始します。内視鏡下に鼻涙管と涙嚢の内側壁全体を露出させ、鼻涙管をできるだけ下方で切断し、涙嚢の上端のみが結合している状態で涙嚢から鼻涙管を剥離挙上します(図1b)。続いて、眼科医師が結膜の操作を行います。顕微鏡下に内眼角の結膜に切開をおいて鉗子を刺入し、鼻内内視鏡でも確認しながら鼻涙管の断端を内眼角方向に引き出して結膜切開部と縫合します(図1c)。最後に涙嚢内壁を大きく開放して涙の出口を作成し、内眼角に新設した開口部(涙の入口)から鼻内までシリコンのチューブを挿入して、新しい涙道が安定したら抜去します。
「結膜鼻涙管吻合術」は従来の外切開による手術やジョーンズチューブ留置術の問題点を克服し、外切開も半永久的な異物留置も必要ない術式です。涙小管狭窄症・閉塞症で流涙に悩む患者さんに新しい選択肢を提供し、QOL向上に寄与できる術式であると考えています。
上眼瞼(うわまぶた)の裏側にある涙腺で分泌された涙は、内眼角(眼裂の内側)にある上・下涙点から吸引され、上・下涙小管を経由して涙嚢、鼻涙管を通り、鼻腔内に排泄されます(図1a)。この涙の流れる経路を涙道と呼んでいます。涙道のいずれの部位で狭窄や閉塞が生じても涙の流れに問題が生じ、常に涙っぽい感じや、泣いていないのに涙が溢れたり、また目やにが増えたり等の症状に悩まされることとなります。今回開発した「結膜鼻涙管吻合術」は、涙道のうちの涙小管の狭窄や閉塞に対する手術です。
涙小管狭窄症・閉塞症に対しては、まずは経過観察や点眼薬の処方などが行われますが、これら保存的治療が無効であった場合には、細いシリコンのチューブを涙小管に通して拡げる涙小管形成術が行われます。一方、この涙小管形成術でも涙小管の開通を維持できなかった場合は、外切開による結膜涙嚢吻合術、本邦では保険適応外のジョーンズチューブ留置術などが行われてきました。ただ、外切開による結膜涙嚢吻合術では鼻の脇に2 cmほどの傷が残りますし、ジョーンズチューブ留置術では内眼角から鼻内に細いガラス管を半永久的に入れておく必要があります。ジョーンズチューブは異物ですので、定期的な洗浄や交換が必要なことや感染などによる問題もありました。「結膜鼻涙管吻合術」は外切開も半永久的な異物の留置も必要ない新しい術式です。
「結膜鼻涙管吻合術」は全身麻酔で行います。まず、耳鼻咽喉科医師による鼻腔内の操作から開始します。内視鏡下に鼻涙管と涙嚢の内側壁全体を露出させ、鼻涙管をできるだけ下方で切断し、涙嚢の上端のみが結合している状態で涙嚢から鼻涙管を剥離挙上します(図1b)。続いて、眼科医師が結膜の操作を行います。顕微鏡下に内眼角の結膜に切開をおいて鉗子を刺入し、鼻内内視鏡でも確認しながら鼻涙管の断端を内眼角方向に引き出して結膜切開部と縫合します(図1c)。最後に涙嚢内壁を大きく開放して涙の出口を作成し、内眼角に新設した開口部(涙の入口)から鼻内までシリコンのチューブを挿入して、新しい涙道が安定したら抜去します。
「結膜鼻涙管吻合術」は従来の外切開による手術やジョーンズチューブ留置術の問題点を克服し、外切開も半永久的な異物留置も必要ない術式です。涙小管狭窄症・閉塞症で流涙に悩む患者さんに新しい選択肢を提供し、QOL向上に寄与できる術式であると考えています。
原著論文情報
-
雑誌名
Laryngoscope
論文タイトル
Conjunctivoductivo-dacryocystorhinostomy: A novel surgery for intractable canalicular obstruction
著者
牛尾 宗貴*(東邦大学医療センター佐倉病院 耳鼻咽喉科)
昌原 英隆 (東邦大学医療センター佐倉病院 眼科)
坂本 理之 (聖隷佐倉市民病院 眼科)
太田 康 (東邦大学医療センター佐倉病院 耳鼻咽喉科)
前野 貴俊 (東邦大学医療センター佐倉病院 眼科)
鈴木 光也 (東邦大学医療センター佐倉病院 耳鼻咽喉科)
DOI番号
10.1002/lary.29861
添付資料
以上
お問い合わせ先
【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学医療センター佐倉病院
耳鼻咽喉科 講師
難聴めまい回復センター センター長
牛尾 宗貴
〒285-8741 千葉県佐倉市下志津564-1
TEL: 043-462-8811(代表)
【本ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
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