プレスリリース 発行No.204 平成23年4月12日
小さな侵略者のオスを日本で初めて発見
~コモチカワツボ:高校生との共同研究の中で~
コモチカワツボはニュージーランドが原産の外来種で、大きさ 5 mm程の淡水性の小さな巻貝であり、基本的に侵入地では単為生殖で繁殖を行うことが知られています。ヨーロッパ諸国、オーストラリア、アメリカ合衆国や日本など世界各国で近年急速に分布を拡大させており、生態系に悪影響を与えるとして問題視されています。
日本では1990年に三重県で確認され、現在では1道20県から本種の侵入が報告されています。しかし、今までオスは発見されておらず、メスのみの単為生殖を行っているとされていました。本種はヨーロッパやニュージーランドからのマスやウナギ等の食用淡水魚類に伴って国内に移入し、またはゲンジボタルの餌として人為的に持ち込まれたと考えられています。本種を餌としたゲンジボタルは通常より生存率が低く、さらに発光量が弱くなるため繁殖も抑制されると言われております。
本研究では、まず多々良さんが千葉県の稲毛海浜公園において日本初記録となる“オス”を発見しました。そこで本種の棲息状況とオスの有無を確かめることを目的に青森県から宮崎県の10地点で調査を行いました。その結果、オスは稲毛海浜公園でしか発見されず、コンクリート水路や自然河川、淡水域から汽水域、流水から止水、水中の藻や転石の上、ヨシの落ち葉の下などあらゆる場所で本種が棲息していることが確認されました。向上高校で稲毛海浜公園産のコモチカワツボがメスのみの単為生殖を行うのか調べるために74日間に及ぶ飼育実験を行ったところ、他産地と同様に単独で繁殖できることが分かりました。
稲毛産の本種はオスが一定の割合で存在していることから単為生殖と両性生殖が並行して行われている可能性があります。また単為生殖だけでなく両性生殖を行うことで遺伝的多様性が増加すると、環境適応能力がより高まると考えられます。そのため論文では、今後さらなる分布拡大が生じるのを防ぐための対策が望まれるとしています。
この研究は向上高校の生徒が主体となって活動し、東邦大の多々良 有紀さんのサポートで行われました。多々良さんが本種の研究を行っている生物部に声をかけて共同研究が始まり、これは大学と高校が協働して行った画期的なプログラムです。
〈論文タイトル〉外来水棲腹足類コモチカワツボ新生腹足類:リソツボ上科)における日本初の
雄性個体の発見ならびに新産地
〈 著 者 〉緒方大地・飯田 茜・中島美貴・山崎愛柚香・園原哲司・多々良有紀・芳賀拓真
〈 掲 載 誌 〉Molluscan Diversity 2(2) 2010年12月 発行
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