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プレスリリース 発行No.104 平成21年11月10日

本学理学部卒業生 日本動物学会 論文賞 及び 藤井賞 を受賞
~識別困難なカタツムリが別種であることを明らかにした研究で~

 本学理学部卒業生の関 啓一さん(2002年3月 博士課程修了 / 現 信州大学アネロファーマ・サイエンス)と共同研究者が学術雑誌 Zoological Science に発表した論文が日本動物学会 Zoological Science Award (論文賞)及び 藤井賞を受賞し、2009年9月18日に行われた日本動物学会第80回大会総会において表彰されました。
   〈論文タイトル〉Fluorescent Pigment Distinguishes Between Sibling Species
   〈  著 者  〉Keiichi Seki, Amporn Wiwegweaw and Takahiro Asami
   〈 掲 載 誌 〉 Zoological Science, 25: 1212-1219
~識別困難なカタツムリが別種であることを明らかにした研究で~

Zoological Science Award (論文賞)と藤井賞は、Zoological Science(年12号)に発表された論文を対象に選考され、優れた論文の著者に授与されるものです。本件は、25巻に掲載された全301編の中から選ばれました。そして、研究対象であるカタツムリの生態写真が、本論文の掲載号の表紙を飾りました。特に藤井賞は、本学にとてもゆかりのある賞で、2002年に亡くなられた理学部生物分子科学科 藤井良三先生のご遺志とご遺族からの日本動物学会へのご寄付により創設されたものです。これを本学の出身者が受賞することは大変に喜ばしいことです。

 受賞した本研究により、殻や軟体部の形では識別困難な2種のカタツムリが生物学的に異なる別種であり、優れた進化生物学の研究材料であることが示されました。貝は、古くから殻の形で分類されてきました。しかし、本研究対象の2種は殻では区別できないのに、例外的に軟体部の色で識別され、黄色のほうは日本固有種とされてきました。色に着目した著者らは、問題の黄色は外套膜の色素粒の色であり、粘液とともに排出される植物由来の蛍光物質であることをつきとめました。飼育すると約一ヶ月で消失し、他方の種と識別できなくなることから、はたして2種が生物学的に別種であるかが問題になりました。そこで、巻貝では通常は困難な交雑実験を駆使し、交尾器の微細構造に決定的な差異を発見、さらに酵素の遺伝的変異を解析し、生殖的隔離が不完全な別種であることを明らかにしました。
 本研究は、自然史的、動物学的観点からも興味深い現象に着目し、環境依存の形質が巻貝の生物学的種の差異を反映することを立証しただけではなく、世界に類を見ない独自の研究を地道に重ね、今後の展開が国際的に期待される研究課題を数多く発掘した功績が評価され、受賞に至りました。

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