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動物の麻酔薬及び鎮痛薬、安楽死処置方法について

 

平成28年12月7日 東邦大学 動物実験委員長

平成28年度 臨時動物実験委員会(平成28年8月17日、於習志野キャンパス)にて、動物実験における麻酔薬及び鎮痛薬、安楽死処置方法について本学におけるペントバルビタールナトリウム等バルビツレート(以下バルビツレート)の使用指針を検討し、以下の通りに改正したので周知する。

ジエチルエーテルの使用禁止について

指針『ジエチルエーテルは下記の理由につき、使用を禁止とする』
考え方
  • ジエチルエーテル(エーテル)吸入麻酔
    本剤は引火性がある。また気道刺激、それにともなう気道分泌物過剰および喉頭痙攣などの副作用があることが報告された。欧米の最近の専門教科書では本剤による吸入麻酔は不適切であるとしている。
    これらの短所を克服すべく、ハロセン、セボフルレン、イソフルレンなどが新たに開発され、臨床的には十分普及している。またその薬理作用なども十分研究が進んでいる。
    臨床的に使用されなくなったため、本剤は麻酔薬としては既に市販されていない。
    試薬、工業用薬品として販売されているが、それらについては労働安全衛生法、消防法などにより規制されている。麻酔に医薬品以外を用いることは倫理的に許されない。
    また麻酔が苦痛の軽減のためであれば、健康被害が知られている化学物質を麻酔の目的に使用することは適切ではない。

バルビツレートの使用について

指針『東邦大学では、動物実験に際しバルビツレートの使用を条件付きで認める』

本剤はこれまで広く麻酔薬、催眠薬として使用されてきた。特に実験動物では注射麻酔薬として多くの教科書に記載されたことから、十分な薬理作用を理解せずに記載された用量を投与してきたものと思われる。実際1980年代までの麻酔学、獣医麻酔学の教科書には本剤による全身麻酔についての記載があり、実験動物学の教科書にも多く記載されている。
しかし、本剤には鎮痛作用はほとんどなく、その強力な催眠作用により意識喪失の状態にすることによる外科麻酔が得られるとされてきた。
そして、意識喪失の状態が得られる用量は致死量に極めて近く、本剤の呼吸抑制作用のため、外科麻酔が得られる程の投与量では死亡事故が多発することが知られている。特に極力実験動物使用数の極少化を計る観点から、麻酔死するような麻酔方法は不適切であるとされた。
近年出版された実験動物麻酔学の教科書(Fish, et al 2008, Flecknell, 2010)では本剤の単独投与による全身麻酔の不適切さが明示された。また、他の注射麻酔法も多く開発され、その鎮痛作用、副作用、広い安全域などから本剤より適切な麻酔法が普及している。
よって、本学では可及的な苦痛軽減の原則に従い、より適切な注射麻酔法を用いるべきであり、バルビツレートの単独投与による外科麻酔は不適切とする。バルビツレートの外科麻酔として使用が不可避な例外的事案では、他の注射麻酔薬または吸入麻酔薬との併用を必須とする。
またバルビツレートを安楽死用薬剤として使用する際には静脈内に投与こととし、熟達した施術者の手技を前提とする(AVMA Guidelines on Euthanasia 2013:https://www.avma.org/KB/Policies/Documents/euthanasia.pdf)。

主な実験動物に推奨する麻酔薬及び鎮痛薬について

マウス
  • 吸入麻酔薬(麻酔気化器を使用した際のガス濃度)
    セボフルラン(劇)(指) 導入濃度:5% 維持濃度:2.5~4%
    イソフルラン(劇)(指) 導入濃度:4~5% 維持濃度:2~3%
    ハロセン(劇)(指) 導入濃度:4~5% 維持濃度:1.5~2%
  • 注射麻酔
  1. 単独投与:静脈内投与
    プロポフォール(ラビノベット)(劇)(動)(指) 26mg/kg
    チオペンタールナトリウム(ラボナール)(劇)(指) 30~40mg/kg
  2. 2種混合投与:腹腔内投与/静脈内投与(生理食塩水にて希釈)
    塩酸ケタミン(ケタラール)(麻)(劇)(指) 80~100mg/kg+塩酸キシラジン(セラクタール)(劇)(指) 10mg/kg
    塩酸ケタミン(ケタラール)(麻)(劇)(指) 75mg/kg+塩酸メデトミジン(ドミトール)(劇)(動)1.0mg/kg
  3. 三種混合:腹腔内投与(生理食塩水にて希釈)
    塩酸メデトミジン(ドミトール)(劇)(動) 0.3mg/kg+ミタゾラム(ドルミカム)(劇)(向) 4.0mg/kg +酒石酸ブトルファノール(ベトルファール)(劇)(動)(指) 5.0mg/kg
両棲類・爬虫類
  • 吸入麻酔薬(麻酔チャンバー内に湿った脱脂綿を置き、気化させて暴露)
    メトキシフルラン 3%(0.5~1 mL/litter jar)
  • 注射麻酔薬
    トリカイン(3-アミノ安息香酸エチルメタンスルホン塩酸) カエル成体(1~2g/L)
    溶液のpHは使用前に重炭酸ナトリウムで7.0~7.4に調整してください。
    麻酔は18~30分続きますが、それ以上の維持は、麻酔溶液を皮膚に塗布することにより可能となります。また、回復を早めたい場合は動物を水で洗ってください。
    麻酔時と回復時には皮膚の乾燥を防いでください。
【注意】
吸入麻酔薬使用時には、局所の排気や薬剤の吸着を行い、人に作用しないように注意する必要があります。
(参考)

CCAC(Canadian Council on Animal Care)

The Pennsylvania State University Animal Resource Program

【補足】
  1. 略称は以下の通り。
    (劇):劇薬:薬事法第44~46条に基づき規制され、管理法が定められています。
    毒薬・劇薬に指定された医薬品は、薬事法施行規則別表第3を参考にしてください。
    (向):向精神薬:麻薬及び向精神薬取締法に基づき規制され、管理法が定められています。
    (指):指定医薬品:薬事法第29条に基づき、薬局又は一般販売業において薬剤師による取扱いを必要とし、薬種商販売業においては販売することができない医薬品です。
    (動):動物医薬品:購入に際し、獣医師の処方箋が必要となる場合があります。
    (麻):麻薬及び向精神薬取締法に基づき規制され、麻薬研究者の免許が必要です。
  2. ケタミン(ケタラール)は麻薬研究者免許の取得が必要となります。都道府県の薬務課に問合せてください。

(参考)ケタミンの取扱い(質疑応答)2006年8月 厚生労働省医薬品局監視指導・麻薬対策課

安楽死方法について

物理的方法としては鎮痛薬や麻酔薬を投与し頸椎脱臼または断頭、化学的方法として炭酸ガスによる過剰投与を推奨する。