2017年度物理学科コロキウム(7月19日)(6月21日から延期)
日時
2017年7月19日(水)16:30 - 17:30
場所
理学部5号館 1階 5103
講師
小澤 正直 氏 (名古屋大学大学院 特任教授)
開催内容
量子測定と不確定性原理
物理学において測定の概念は最も基本的な概念のひとつである.とりわけ,量子力学においては,その理解に特有の困難が伴う概念とされている.ハイゼンベルクやシュレディンガーによって体系化された初期の量子力学における量子測定の理論は,フォン・ノイマンによって公理系としてまとめられた.そこでは,測定によって物理量が正確に測定されるためには,反復可能性仮説を満たすことが要請された.反復可能性仮説は,波束の収縮仮説とも呼ばれ,被測定系の状態が測定によって被測定量の固有状態に変化することを意味する.このことから,量子物理に関して,測定前の値が存在することを仮定することができず,測定は測定値と言う値を生み出す過程であると言う誤解が生まれた.ところが,通常の光子数測定などは,明らかに反復可能性仮説を満たさないが正確な測定と考えられ,反復可能性仮説の普遍性には疑問があった.このような混乱を収拾するために,1970年代より反復可能性仮説を破棄した新しい量子測定理論である量子インストルメント理論が生まれ,1980年代にその基礎が完成した.ハイゼンベルクの不確定性原理は,正準共役な二つの物理量が同時測定可能でなく,それらを同時に測定すると不可避な誤差があり,それが有名な不確定性関係を満たすとされた.ところがこの関係式を導くために,ハイゼンベルクは,当然のこととして,反復可能性仮説を仮定していたと考えられる.従って,反復可能性仮説を仮定しない場合に,同時測定の誤差がどのような関係式を満たすかは,量子インストルメント理論に基づいて新たに調べる必要があった.このような歴史的な流れに沿って,不確定性原理の理解の深化と新しい不確定性関係について解説する.
他学部、他学科の教員、学生のみなさんの聴講も大歓迎です。
お問い合わせ先は物理学科コロキウム係:大江純一郎 junichirou.ohe(atmark)sci.toho-u.ac.jp (atmark)は@です。
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