理学部物理学科

メニュー

2013年度物理学科コロキウム(2013年5月15日)

日時

2013年5月15日(水) 16:00 - 17:00

場所

理学部5号館 2階 5201

講師

胡 暁(Xiao Hu) 氏(物質・材料研究機構)

開催内容

トポロジカル超伝導のマヨラナ準粒子励起

 素因数分解が最先端の暗号技術に使われていることはご存じでしょうか。実は、大きな整数の素因数分解は世界一のコンピューターでも苦手です。一方、量子波動関数の重ね合わせを利用する量子コンピューターはこの問題を解くのが得意です。しかし、量子状態は容易に壊れてしまい、デコヒーレンス問題が大規模な量子計算の実現を妨げています。最近、トポロジカル量子計算という新しいアイデアが大きく注目を集めています。トポロジーは系の大局な状況で決まる本質的な特性ですので、ノイズに影響されにくく、うまく利用できればデコヒーレンスのない強靭な量子コンピューターが可能になります。
 私のグループはトポロジカル超伝導のマヨラナ準粒子励起を利用した量子計算の可能性を探索しています。マヨラナ粒子はその反粒子と等価で、素粒子としては未だに見つかっていませんが、その同類(準粒子)が超伝導体に宿っています。我々はナノトポロジカル超伝導体を調べました。サンプルの真ん中に量子渦をピン止めしています。サンプルの間にくびれ接合部を設け、そこにゲート電極を設置して、ゲート電圧の調整でサンプル間の連結を制御します。単一或いは連結されたサンプルの中に奇数個の量子渦がある場合、サンプルの縁にマヨラナ準粒子が現れます。一方、サンプルに量子渦が偶数個ある場合、それが消えてしまいます。この性質を利用すれば、くびれ接合部のゲート電圧を一定の順序に従ってオン・オフにするだけで、縁マヨラナ準粒子を移動、位置交換できることが我々の研究で明らかになりました。ここで興味深いのは、粒子が反粒子に等価であるために電気的に中性になっているマヨラナ準粒子をゲート電圧だけで意のままに素早く駆動できることです。マヨラナ準粒子の断熱的な運動の全過程を時間依存ボゴリューボフ‐ド・ジャン方程式を解くことによって追跡しました。この結果、マヨラナ準粒子の位置交換がトポロジカル量子計算に必要な非アーベル量子統計を満たすことが確認されました。デコヒーレンスのない強靭な量子コンピューターは本当に実現できるかもしれません。
参考文献:Q.-F. Liang, Z. Wang, and X. Hu, Europhys. Lett. [Editor’s Choice], 99, 50004 (2012).

他学部、他学科の教員、学生のみなさんの聴講も大歓迎です。

お問い合わせ先は物理学科コロキウム係:大江純一郎 junichirou.ohe(atmark)sci.toho-u.ac.jp   (atmark)は@です。

お問い合わせ先

東邦大学 理学部

〒274-8510
千葉県船橋市三山2-2-1
習志野学事部

【入試広報課】
TEL:047-472-0666

【学事課(教務)】
TEL:047-472-7208

【キャリアセンター(就職)】
TEL:047-472-1823

【学部長室】
TEL:047-472-7110

お問い合わせフォーム