理学部物理学科

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コラム 『ガリレオの部屋』

 このページには、物理学科の教員が主に高校生向けにいろいろなお話を載せることにしました。物理学科の教員がどんなことを考えているのか、物理学の魅力は何なのか、文章の裏側にあるそんなメッセージを受け取っていただけたら幸いです。

第7回  磁石と磁区のはなし その2

第7回 磁石と磁区のはなし その2-01

 針やゼムピンを買ってきたときは、磁区ができており、表面から磁力線が出ていかない状態になっているということを前回の最後に言いました。この磁区のために、他の針やゼムピンを引き寄せません。では、磁石でこするとどうなるでしょう?実は、磁石から磁場を受けて、磁区の分布が変わるのです。磁場のN極の方に磁区のS極側が、あるいは磁場のS極の方に磁区のN極側が向いている磁区は安定になり、それと逆の磁区は不安定になるので、磁壁が移動して、安定な磁区を増やそうとします。この様子が、上の図の真ん中と右側です。左側の図は前回の最後の図と同じです。強い磁石でこすると(あるいは近づけると)一番右図のように、単独の磁区だけになってしまいます。 この状態から磁石を取り除くと、また磁壁が現れ、磁区に分かれるようになりますが、多くの場合、不純物や格子の欠陥によって磁壁は途中でひっかかり最初のように対称的な磁区の状態に戻ることはありません。たとえば、図の真ん中の状態になってしまいます。こうして、磁石を取り除いたあとの針やゼムピンでは、表面に磁極が残るため磁力線が出た状態になり、他の針などを引き付けるようになるのです。

第7回 磁石と磁区のはなし その2-02

 正確な表現ではないかもしれませんが、コンピューターのハードディスクや切符の裏、クレジットカードの帯などには強磁性体が塗布してあり、情報を人工的な磁区として記録しているのです。2種類の磁化の向きを持った磁区を2進法の1と0に対応させれば情報となります。 これを実際に見ることができます。右の図には定期券の裏に書かれた磁区の模様の様子を示しています。細かいバーコードのような模様は人工的に記録された磁区模様(実際には磁壁の模様)に対応しています。丸い形のビューワーは磁区を見るために、容器内に強磁性体の細かい粒子を液体とともに封じ込めたものです。コロイド状の強磁性体の粒子は、磁壁から漏れる磁力線に引き寄せられ、このような模様を描くのです。

第7回 磁石と磁区のはなし その2-03

 最後に、透明な強磁性体(説明は省略しますが、正確にはフェリ磁性体)で知られている磁性ガーネット(宝石のガーネットと同じ結晶構造を持ち、鉄の原子が入っている)の磁区模様を、特別な方法で観測した結果をお見せしましょう。 この図は試料の薄膜の面に垂直な方向に、偏光した光を入射し、偏光板を通して顕微鏡で見たものです。黒色の部分と茶色の部分で、磁化が面に垂直で反対方向を向いた磁区になっています。このように、異なる方向を向いた磁区に直線偏光した光を入れると、偏光面が異なる方向に回転して明暗の縞として磁区が観測されます。これをファラデー効果と呼んでいます。最近では、これと似たカー効果を使用して、ミニディスクや光磁気ディスクの記録(人工的な磁区)の読み出しがなされていました。
 これからは、ますます高密度な情報の記録が必要とされています。磁性体を利用した高密度な新しい磁気記録方式や、読み出しの方式が盛んに研究されています。これについては、またの機会にご紹介したいと思います。

(磁気物性学教室 齊藤敏明)

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