理学部物理学科

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コラム 『ガリレオの部屋』

 このページには、物理学科の教員が主に高校生向けにいろいろなお話を載せることにしました。物理学科の教員がどんなことを考えているのか、物理学の魅力は何なのか、文章の裏側にあるそんなメッセージを受け取っていただけたら幸いです。

第3回  「月はなぜ落ちてこないのか?」

第3回 「月はなぜ落ちてこないのか?」01

 このコラムは、ガリレオの話で始まりましたが、ガリレオが亡くなった1642年に生まれたのがニュートンです。ニュートンは「りんごが落ちるのを見て万有引力を発見した」と言われていますが、、、、、本当でしょうか?。「りんごは落ちるのに、月はなぜ落ちてこないのか?」を考えたのだという話を聞いたこともあります。どうせ、あとで作ったエピソードなのでしょうからどちらでもかまいませんが、身の回りのすべてのものは落ちるのだから、それを当然の真理として受け取っていたと考えると、「月はなぜ落ちないのか」を考えたという方が自然です。さて、皆さんは、この疑問に答えられますか?
 このネタは、私が時々出張講義でもやるお話なのですが、答えを告げるとみんな大抵すごく驚いてくれるので、『物理学は?と!』が信条の私としてはその反応に大いに満足できる話の一つなんです。ただし、他の物理の話と同じで、数学を使わずに説明すると、わかりやすいような気もするかわりに誤解も生みやすいのでいやなのですが、コラムですから式をあまり使わない説明に挑戦してみましょう。

この疑問の答えをびっくりさせるように告げると、「実は月は落ち続けている。」です。
第3回 「月はなぜ落ちてこないのか?」02

 ちゃんと説明しましょう。高校で物理学を学んだ人は水平投射を勉強しましたね。やっていない人は想像してみてください。あなたが水平にボールを投げたとします。ボールは手から離れると放物線を描きながら地面に落ちますね。次に、もう少し思い切って勢いよく投げてみましょう。少し遠くまでボールが届きましたね。じゃぁものすごく速いスピードで水平に投げたらどうなるでしょうか? もっと遠くまで飛びますね。(こういう思考実験は物理学でもっとも大事なものの一つです。) つまり落ちてしまうまでに長い距離を飛ぶわけです。
 さて、地球は丸いんです。カーブを描いていますね。地面は水平に見えますが、実は曲がっているので長い距離になるとその効果が現れて、ちょうど地面が少し低くなったようになりますね。もし、ボールをすごい速さで水平に投げることができたとすると、それが水平面からちょっと落ちても、その分地面が曲がってしまっていて少し低くなっていればボールと地面の距離が変わらなくなります。どこまで行ってもボールと地面の距離は変わらず、やがて地球は丸いものだから一周して元へ戻ってきます。
 これが地球を回る月なのです。このような運動を円運動といいます。ですから円運動でする物体には常に円の中心(この問題の例では地球の中心)方向に力を受けています。地球の例ではこれが重力です。ですから、月は地球の重力に引っ張られて落ち続けながら地球の周りを回り続けています。

 月は円運動をしているので、その遠心力が重力と釣り合っているというのを答えだと思っていた人も多いのではないでしょうか。この考え方も正解といえます。ただし見方は違います。月にあなたが立っているとすれば、地球による重力と遠心力がつりあっていると言えるわけです。遠心力のような力は慣性力と呼ばれています。詳しくは大学の1年生できっちり学びます。さぁ、こんな素朴な疑問にも答える、最先端の宇宙論や素粒子についての謎を解く、最先端テクノロジーのキーを握る物理学。どうです? 楽しくありませんか? 世の中のいろいろな『?』に挑んで『!』する。それが楽しくて私は物理学を研究しています。
(原子過程科学教室 酒井康弘)

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