無機化学教室
研究室紹介
遷移金属元素やランタノイド元素を含む複合金属化合物(酸化物、硫化物、複合アニオン化合物)の合成とその性質研究を行っています。これらの金属元素は不完全に電子で満たされた3d~5d軌道・4f 軌道を持つため不対電子が存在し、強磁性、反強磁性、電気・イオン伝導、超伝導など多種多様な電気・磁気的性質を示すことから注目を集めています。これらの物質群が織り成す多種多様な物性について解明し、さらに、新たな興味深い物性を示す物質群を探索することを目的として、周期表全体を視野に入れた新物質合成と様々な手法を用いた物性測定・解析を行っています。(土井)
グラフェンに代表される2次元物質はバルクとは違った特異な性質を示します。当研究室では遷移金属ダイカルコゲナイドと呼ばれる2次元物質を化学気相蒸着法により合成し、さらにドーピングと呼ばれる手法を用いることで電子物性を制御する研究を行っています。また、ナフタレンフラックス法と呼んでいる新規な結晶化法により高密度π共役分子の単結晶を育成し、その電子物性を評価することも行っています。無機・有機に括らず広い意味で新規固体材料の創出を目指しています。(桺瀨)
グラフェンに代表される2次元物質はバルクとは違った特異な性質を示します。当研究室では遷移金属ダイカルコゲナイドと呼ばれる2次元物質を化学気相蒸着法により合成し、さらにドーピングと呼ばれる手法を用いることで電子物性を制御する研究を行っています。また、ナフタレンフラックス法と呼んでいる新規な結晶化法により高密度π共役分子の単結晶を育成し、その電子物性を評価することも行っています。無機・有機に括らず広い意味で新規固体材料の創出を目指しています。(桺瀨)
研究内容
◎面白い物性を示す無機化合物を探す(土井)
- d-f 電子系ペロブスカイト: ペロブスカイト型構造は化学組成の自由度が極めて高く、様々な元素の導入が可能という特徴を持ちます。これを利用し、強い磁気的相互作用を持つd電子系の遷移金属と、相互作用は弱いが個性的な振る舞いを示す4f 電子系のランタノイドの両方を含む物質を合成しています。組成を変えると様々な秩序配列を持った構造が現れ、あまり知られていないd-f 電子間の磁気的相互作用による磁気転移や、特徴的なダイマー磁性など興味深い磁性を示します。
- 特徴的な磁性イオン配列を持つ化合物: 不対電子を持つイオンが物質中でどう並ぶかに注目し、新物質の合成を試みています。例えば、正三角形からなる並び方では、隣り合うイオンのスピンが逆向きを向くことを好む場合、3つイオンのスピンをすべて満足させることは不可能です。これは磁気的なフラストレーションと呼ばれ、普通では起こらないような変わった性質を示すことがあり注目されています。
- 複合アニオン化合物: 無機物質では、その構造や性質を変えるためにカチオン(金属イオン)を別のイオンで置き換える(置換)、複数のイオンを混ぜる(固溶)という方法がよく用いられます。一方、アニオンの置換・固溶は困難ですが、比較的低温(100~400℃)で反応性の高い試薬と反応させるトポケミカル反応などにより合成できる場合があります。アニオンを変えると金属イオンの酸化状態、結合性、相互作用などに強く影響を及ぼすため、その関係性を理解するために新たな複合アニオン化合物を合成し、研究しています。
- 遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC):TMDCは一般式がMX2であらわされる層状物質群で、遷移金属とカルコゲンの組み合わせによる化学組成の自由度が高く、物性制御が可能であるという特徴を持ちます。さらに、1単位層がおよそ6.5Åと極薄であるため、究極の薄膜デバイス(原子層デバイス)への応用が期待されています。本研究室では化学気相蒸着法を用いることにより大面積かつ高品質なTMDC単層膜の作製、ドーピングによる電気伝導率制御およびヘテロ接合(異種材料接合)作製に取り組んでいます。
- アルキル側鎖を持たないπ共役分子の単結晶育成:ペンタセンやルブレンなどのπ共役分子は分子性電子材料として知られています。より高性能な分子性電子材料を開発するためにはπ共役を拡張していくことが1つの指針ですが、π共役を拡張していくと溶解度が急激に低下するため、溶解度を向上させるためにアルキル側鎖などの導入が必須でした。しかし、アルキル側鎖の導入は電子物性の観点からは好ましいものではありません。当研究室では共同開発したナフタレンフラックス法を用いて難溶性であるπ共役分子の単結晶育成とその電子物性について研究しています。
所属教員
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土井 貴弘/准教授
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桺瀨 隆/講師