理学部情報科学科

メニュー

コンピュータが音楽を聴く(5)

このような場合に手がかりとして使える情報は,基本周波数と各倍音の構成比です.楽器の音色にはそれぞれ違っていますが,その大きな要因の1つは各倍音の大きさの割合の違いにあります.倍音のピークの位置が同じでも,それぞれのピークの大きさが異なっていると違った楽器の音として聞こえるのです.例えば,基本周波数よりも倍音の周波数ピークの方が小さい倍音構成比を持つ楽器音であれば,1オクターブ違いの音が同時に鳴った場合の周波数ピークは,低い音の基本周波数よりも2倍音の周波数成分の方が大きくなるため,単音ではないということが分かります. このように,楽器の種類とその楽器の倍音構成比が分かっている場合は,周波数分析により得られたそれぞれの周波数ピークが,ある音の基本周波数だけなのか,あるいはある音の基本周波数に他の音の倍音の周波数が重なったものなのか,または1つ以上の倍音の周波数が重なったものなのかを推定することが可能です.
しかし,同じ楽器でも倍音成分の構成比は音高により異なっていたり,音の大きさや発音後の時間経過などにより変化したりと,実はとても不安定です.また,楽器の種類があらかじめ分かっていなければ,倍音成分の構成比の情報自体を使うことは出来ません.さらに,1つの楽器だけではなく,いくつもの楽器による合奏では状況は一層複雑になり,現在の技術では同時に鳴っている音の高さ,数,楽器の種類を正確に認識することは非常に困難です.
それに比べ,多くの楽器による合奏でも,何の楽器が鳴っていて,どの高さの音を出しているのか人は聞き分けることができます.このように,人間には簡単に出来る仕事でも,コンピュータにはとても難しい作業はまだまだ沢山あるのです.(終)

お問い合わせ先

東邦大学 理学部

〒274-8510
千葉県船橋市三山2-2-1
習志野学事部

【入試広報課】
TEL:047-472-0666

【学事課(教務)】
TEL:047-472-7208

【キャリアセンター(就職)】
TEL:047-472-1823

【学部長室】
TEL:047-472-7110

お問い合わせフォーム