コンピュータグラフィックスの医学応用(1/2)
コンピュータグラフィックス(CG)はコンピュータで画像や映像を創る技術で、ゲームや映画などでおなじみです。しかし、それだけではありません。CGはエンターテイメントだけではなく、医学など様々な分野での応用が期待されています。東邦大学は理学部・医学部・薬学部を擁する総合理科大学なので、このような学祭的な研究・教育を行うには絶好の環境です。2007年度には「メディア生命科学コース」も新設されました。
そこで今回は、情報科学科が医学部形成外科教室と共同で研究しているCGの医学応用の一例として「3次元頭蓋顎顔面骨データベースの構築」を紹介します。
そこで今回は、情報科学科が医学部形成外科教室と共同で研究しているCGの医学応用の一例として「3次元頭蓋顎顔面骨データベースの構築」を紹介します。
3次元頭蓋顎顔面骨データベースの構築
「頭蓋顎顔面骨」とは難しい言葉ですが、頭、顔、顎の骨の総称で、いわゆる頭蓋骨のことです。データベースとはデータを使い易いように加工して整理したものです。心臓、肝臓や脚の骨などの3次元データベースは研究例があります。しかし、頭蓋骨は目や鼻の孔があるなど形状が複雑で、これまで研究されてきませんでした。そこで我々がチャレンジすることになりました。
(1)何の役に立つか?
このデータベースができると次のように様々なことに使えます。
統計分析: 目や鼻の平均的な大きさや、様々な部位の間の相関などが求められ、解剖学的な知見が得られます。
手術の計画: 例えば、事故などで顔の骨が砕けたとき、形成外科では骨を繋ぎ合せて、元と同じような顔に戻るように手術をします。しかし、事故前の骨の形は分かりません。現在は、医師が経験に基づいて元の骨の形を推定して、手術の計画を立てています。このデータベースが出来上がれば、統計結果を用いて、客観的に元の形状を推定し、手術計画を立てることができるようになります。
術後の評価: 手術が成功したかどうか、推定した元の形状と比較して評価できるようになります。
(2)どのようにやるのか?
CT装置で撮影すれば、比較的簡単に頭蓋骨の形状が抽出できます。しかし、これだけでは、どこが目でどこが鼻か分かりません。そこで、我々は、標準的な頭蓋骨の3次元CGモデル(テンプレートと呼びます)を変形させて、CTから抽出した頭蓋骨と同じような形にすることにしました。テンプレートはポリゴンで作られており、例えば、どの頂点が目のどの位置にあるかということが分かっているので、統計分析などが簡単に行えます。
変形は自動的にできれば言うことはないのですが、形状が複雑なのでとても困難です。そこで、解剖学的に重要な点を数10点選び、この点を手動で指定するようにしました。システムは指定された点を手がかりに、テンプレートを変形します(図1)。指定にかかる時間は15分くらいで、撮影などの時間と同じくらいなので、十分実用的です。
変形は自動的にできれば言うことはないのですが、形状が複雑なのでとても困難です。そこで、解剖学的に重要な点を数10点選び、この点を手動で指定するようにしました。システムは指定された点を手がかりに、テンプレートを変形します(図1)。指定にかかる時間は15分くらいで、撮影などの時間と同じくらいなので、十分実用的です。
図1.
左:CTデータ(変形前)、右:テンプレート(変形前)
変形後