南アフリカ国際多毛類学会報告(3)

*多毛類:環形動物に分類され、世界中の干潟底質や岩礁等に生息しています。身近では、釣り餌として使用されています。
7月6日 学会4日目~ポスター発表




7月8日 帰路


今回初めて国際学会に参加し、国内学会では経験できない、海外の多毛類研究を知ることができ、とても勉強になりました。また、ランチやディナーの時間にした研究者同士のディスカッションでは、自身の研究の強みと今後の課題について考えることができ、とても有意義な時間となりました。
国際多毛類学会では「養老川河口干潟環境中におけるイワムシ類(Marphysa sp.)の糞中の多環芳香族炭化水素の濃度とその起源(英タイトル:Concentrations and Sources of Polycyclic Aromatic Hydrocarbons in Fecal Pellets of a Marphysa Species in the Yoro Tidal Flat, Japan)」というテーマで発表をしました。多環芳香族炭化水素(PAHs)は難分解性有機汚染物質で、これまで我々はイワムシ(Marphysa sp. E)の糞中に高濃度に存在することを報告しています(Onozato et al., 2008, 2010)。糞中のPAHsの起源は不明でしたが、今回の研究で干潟の底質(還元有機泥)が起源であり、イワムシが還元有機泥を選択的に摂取していることを明らかにしました(Osaka et al., 2023, Zoological science)。
発表の多くは分類学や生態学の分野であり、このような化学分析をテーマとした研究は少ない印象でした。それでも、多くの方に興味を持っていただき、「イワムシがなぜ還元有機泥を取り込むのか」、「どうのようにして干潟環境中へPAHsが移行するのか」など沢山の質問をいただきました。
今後さらに研究を進め、2026年にフランクフルトで開催される第15回国際多毛類学会で新たな報告ができるよう邁進して参ります。最後に、このような貴重な経験をさせていただきましたことに、厚く御礼申し上げます。