理学部生命圏環境科学科

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特定外来生物ウシガエルの寄生虫の
日本への定着プロセスを解明しました!

 東邦大学理学部の安齋 榮里子(研究当時、大学院生)、脇 司准教授、児島 庸介講師の研究グループは、特定外来生物ウシガエルにつく北米原産の外来寄生虫「ウシガエル斜睾吸虫(学名Glypthelmins quieta)」の日本における生活史を調査し、本虫が北米原産の外来種しか利用できない可能性が高いことを以下のように明らかにしました。本件は、東邦大学よりプレスリリースされています。
ウシガエルは北米原産の特定外来生物です。日本に定着したウシガエルには北米原産の外来寄生虫「ウシガエル斜睾吸虫(学名Glypthelmins quieta)」の成虫が寄生します。この寄生虫の幼虫は、原産地の北米では淡水貝の一種に寄生し、それがウシガエルに感染して成虫になります。一方、日本でこの
寄生虫の感染経路が調べられたことはなく、その生活史は不明でした。
研究グループは、日本に定着したウシガエルに寄生した本虫からDNAを読み取り、これを基に日本に生息する淡水貝を調べました。その結果、北米原産外来種のサカマキガイからのみ、本虫の幼虫が検出されました。このことから、この寄生虫は成虫も幼虫も、北米原産の宿主を利用する可能性が高いことが分かりました。
詳細な文献調査により、この寄生虫は、1970年代から2000年代の間に日本に侵入したと考えられました。この時、北米原産の外来宿主2種(ウシガエルとサカマキガイ)が日本で野生個体群を既に確立していたので、この寄生虫は日本に定着できたものと考えられました。
図1. 北米原産の外来寄生虫「ウシガエル斜睾吸虫」の日本における生活史
ウシガエルに寄生した成虫は産卵し、虫卵が宿主の糞とともに外にでる。虫卵が淡水貝のサカマキガイに感染し、その体内でスポロシスト幼虫になる。スポロシスト幼虫の内部では多数のセルカリア幼虫ができ、貝の外にでる。セルカリア幼虫は水中を遊泳し、ウシガエルの表皮に感染してメタセルカリアとなる。ウシガエルは脱皮時に自分の皮を食べて経口感染する。イラスト:脇 司。
図2. 北米原産の外来寄生虫「ウシガエル斜睾吸虫」の、本研究で推定された日本への導入経緯
1918年に、ウシガエルが北米から導入された。1950年ごろ、サカマキガイが定着し始めたと考えられる。サカマキガイは水草の輸入に付随して繰り返し日本国内に侵入していたので、1970年代以降に感染サカマキガイが侵入。野外のウシガエルとサカマキガイを利用して日本に定着した。イラスト:脇 司
◆ 発表者名
安齋 榮里子(東邦大学大学院理学研究科環境科学専攻 博士前期課程 2023年度修了)
児島 庸介 (東邦大学理学部生物学科 講師)
脇 司   (東邦大学理学部生命圏環境科学科 准教授)
新田 理人 (広島大学生物圏科学研究科、
現:水産研究・教育機構水産技術研究所 研究員)
齊藤 匠  (チェコ マサリク大学 研究員、
現:オランダアムステルダム自由大学 研究員)

◆ 発表雑誌
雑誌名:「Diseases of Aquatic Organisms」(2024年7月11日)
論文タイトル: The first intermediate host of the invasive frog trematode Glypthelmins quieta in Japan
著者: Eriko Ansai・Masato Nitta・Takumi Saito・Yosuke Kojima・Tsukasa Waki
DOI番号:10.3354/dao03799


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