理学部生命圏環境科学科

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“右利きのヘビ” から新種の寄生虫を発見!

 東邦大学理学部の脇 司准教授と生命圏環境科学科の学生・瀬尾栄滋(2023年度卒業)さんの研究グループは、沖縄固有でカタツムリを専食する珍しいヘビ「イワサキセダカヘビ」から新種の寄生虫を発見し、「セダカヘビ槍形吸虫(学名:Paradistomum dextra)」と命名しました。宿主のイワサキセダカヘビがカタツムリを専食することから、感染源がカタツムリである可能性が高いと考えられました。本研究成果は科学論文として発表され、また、本大学からプレスリリースが発表されました。
宿主のイワサキセダカヘビ(左)と新種の寄生虫「セダカヘビ槍形吸虫」。この吸虫の体長は4 mm程度。 (写真:細将貴、脇司)

 

今回、研究の対象となったイワサキセダカヘビは、沖縄の石垣島と西表島の固有種です。イワサキセダカヘビは、IUCNレッドリストで準絶滅危惧 (NT)に、環境省レッドリストの準絶滅危惧種(NT)になっています。このヘビはカタツムリを専食することが知られていますが、顎が左右非対称になっており、特に右巻きの殻をもつカタツムリを食べやすいようになっています。このことから、このヘビは”右利きのヘビ”と呼ばれてきました。
脇准教授らの研究グループは、西表島で採集されたイワサキセダカヘビの寄生虫を調べたところ、胆嚢から大きさ4 mmほどの吸虫(扁形動物の寄生虫の一種)を見出しました(図1)。この吸虫は、シマヘビやマムシなどの一般的なヘビに広く寄生する「ヘビ槍型吸虫(学名:Paradistomum megareceptaculum)」に形がそっくりでした。しかし、詳細な形態観察とDNAの分析の結果、イワサキセダカヘビから得られた吸虫は、「ヘビ槍型吸虫」をはじめとした既知の吸虫種とは全く異なる別種であることが明らかになりました。そこで脇准教授らは、イワサキセダカヘビから得られた吸虫を新種とし、「セダカヘビ槍形吸虫(学名:Paradistomum dextra)」と名づけました。この学名の種小名は、イワサキセダカヘビが”右利き”であることにちなんで「dextraデクストラ (=右の)」となりました。

一般的に、吸虫はその生涯で3つの宿主(成虫の寄生する終宿主、幼虫が1つ目に寄生する第一中間宿主、2つ目に寄生する第二中間宿主)を利用します。イワサキセダカヘビはカタツムリを専食することから、「セダカヘビ槍形吸虫」の第二中間宿主はカタツムリと考えられます。したがって、今回見つかった新種の寄生虫が生きるためには、宿主となるイワサキセダカヘビとカタツムリが十分に生息する、健全な沖縄の自然が必要となります。

一方で、第二中間宿主の候補になるイッシキマイマイ(イワサキセダカヘビの主要な餌のひとつ)は、環境省レッドリストで準絶滅危惧種(NT)、沖縄県のレッドリストで絶滅危惧II類(VU)です。これだけではなく、西表島と石垣島では、さまざまなカタツムリが、温暖化や開発による環境変化により個体数が大きく減少することが心配されています。生態系は、様々な生物種が絶妙なバランスを取り合って成り立っています。このため、生物1種の絶滅が、連鎖的に思わぬ事態を引き起こすことがあり、寄生虫だからといって消滅してよいものではありません。宿主となるヘビ、カタツムリ、そして寄生虫を包括的に守ることが、沖縄の生態系と生物多様性を守ることにつながるのです。

◆ 発表者名
 脇 司(東邦大学理学部生命圏環境科学科 准教授)
 瀬尾 栄滋(東邦大学理学部生命圏環境科学科 2023年度卒)
 細 将貴(早稲田大学 教育学部 准教授)
 新田 理人(JSPS特別研究員 SPD 現:水産研究・教育機構水産技術研究所 研究員)
 浦部 美佐子(滋賀県立大学 環境科学部 教授)

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