理学部生命圏環境科学科

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地域の課題は誰が解決する?

竹内 彩乃/生命圏環境科学科 講師

市民討議会を活用した協働のまちづくり

 2019年8月24日(土)、25日(日)に多治見市で開催された市民討議会に参加してまいりました。今回のテーマは、“明日の交通インフラ~さあ!みんなで考えよう”でした。「新しい道路をつくってほしい!」「交通渋滞を解決して!」など、市民から要望が多く出がちなため、これまで避けていたテーマ。一体どのような話し合いになったのでしょうか!?

市民討議会とは?

 市民討議会とは、無作為抽出で選ばれた市民が地域やまちづくりに関わるテーマについて話し合うための手法です。ドイツの計画細胞(プラーヌングスツェレ)をモデルに、別府大学の篠藤先生や日本青年会議所の関係者により開発されました。ポイントは、以下の4つです。①無作為抽出で選ばれた市民が話し合うこと、②専門家からの情報提供を受けること、③いくつかのテーマについて市民が入れ替わりながら話し合うこと、④有償であることです。2005年から徐々に国内に広がり、多治見市では2009年から毎年実施されてきました。今回で12回目、これだけ長期間続いている市民討議会は珍しく、ドイツ人の研究者とともに視察をしてまいりました。
他のグループの提案内容を見て投票している様子

無作為で選ばれた市民はどのような話し合いをするのか?

 2日間で以下の4つのテーマで話し合いが行われました。「1. もし車が使えなくなったら何に困りますか?また、どうしたらその困りごとを解決できますか?」「2. どんなバスだったら乗りたくなりますか?」「3. どんな仕組みがあればあいのりタクシーに乗りたくなりますか?」「4. 渋滞をなくすための仕組みづくりを考えてみましょう」
 例えば、3つ目のテーマについて、ある班では、「そんな仕組み(あいのりタクシー)自体を知らなかった」という話が出され、広報の必要性に関する提案がなされました。行政がいくら便利な仕組みやサービスを考えても、市民に知ってもらえなかったら、使ってもらえませんよね。市民が情報提供を受けた上で話し合うことで、問題点が明らかになり、解決策を提案することが可能になります。
市の職員からあいのりタクシーについて説明を受けている様子

市民討議会は誰が開催しているのか?

 この多治見市での取り組み、興味深いのは、市民討議会の運営母体です。無作為抽出で選ばれた方の一部は、話し合いに参加するだけでなく、次年度から多治見市市民討議会実行委員会のスタッフとして運営に携わっているようです。昨年度、市民として参加し、今年度はスタッフとして参加した大学生に、参加するモチベーションについて聞いたところ、公共的な課題について話し合えるのはここしかないからとのことでした。市の将来を話し合う会議に若者が参加しているのは、大変頼もしいことだと思いました。
 今回の市民討議会の結果は、多治見市市民討議会実行委員会で提言として取りまとめ、参加者に確認していただいた上で、市長に手渡されます。そして市の職員の方は、提言の内容を実行へ移すために動き出します。興味のある方は、多治見市のHPをチェックしてみてください。
実行委員の方々と

環境とはどんな関わりが??

 一緒に視察をしたドイツ人研究者と話していて気づいたこと、それは情報提供や話し合いの中で「気候変動」というキーワードがあまり出てこなかったことです。ドイツであれば、気候変動は生活の様々なテーマと密接に結びついていますが、日本では気候変動といえばエネルギーとの関連で話し合われることがほとんどです。「公共交通機関を使ってもらえるように意識改革を行う!」という話が出ていましたが、キーワードとして気候変動が出てくれば、意識改革と環境配慮行動が関連づけられたのではないかと感じました。環境について学ぶみなさんには、積極的にこのような場に出て行って、生活と密接に関わる環境問題について発言をしていって欲しいなと思います。

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