理学部生命圏環境科学科

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ヘビにつく外来の寄生虫を発見!

東邦大学理学部の瀬尾 栄滋(研究当時、学部生)、安齋 榮里子(研究当時、大学院生)、佐瀬 哲也(研究当時、学部生)脇 司准教授、児島 庸介講師らの研究グループは、関東地方に生息する日本在来のヘビ3種の口腔などから、北米原産で日本初報告となる新たな寄生虫「ヘビクチグロ吸虫(きゅうちゅう)Ochetosoma elongatum」を発見しました(図1)。野外における感染経路を調査するとともに、詳細な文献調査により国外から日本への導入経緯を検討しました。本件は、東邦大学よりプレスリリースされています。
図1. A. シマヘビの口腔に寄生したヘビクチグロ吸虫。B. 感染源となるサカマキガイ(殻長7 mm程度)C. ヘビクチグロ吸虫の顕微鏡写真(右)
写真:安齋榮里子・瀬尾栄滋

関東地方の日本在来のヘビ3種の口腔などから、北米原産の新たな寄生虫「ヘビクチグロ吸虫(学名:Ochetosoma elongatum)」の成虫を日本で初めて発見しました。西日本では、既に同属の別の北米産寄生虫(学名:Ochetosoma kansense)の存在が先行研究で報告されており、西日本と関東地方でそれぞれ別の北米産寄生虫が日本在来のヘビに感染していることとなりました。本寄生虫の幼虫は、日本に定着している北米原産外来種サカマキガイから検出されています。この寄生虫グループの北米での生態と併せて考えると、日本ではサカマキガイからカエルに感染し、そのカエルを食べた日本在来のヘビが感染していると考えられました(図2)。
図2. 北米原産の外来寄生虫「ヘビクチグロ吸虫」の日本における生活史
ヘビに寄生した成虫が産卵し、虫卵が淡水貝のサカマキガイに食べられて感染し、その体内でスポロシスト幼虫になる。スポロシスト幼虫の内部では多数のセルカリア幼虫ができ、貝の外にでる。セルカリア幼虫は水中を遊泳し、カエルに感染してメタセルカリア幼虫となる。カエルが食べられて、再びヘビに寄生する。現時点で、日本で宿主となるカエルは特定されていない。イラスト:脇 司

鑑賞魚やエキゾチックペットの需要増加に伴い、北米原産の感染サカマキガイあるいは北米産の感染ヘビが日本に輸入されたことが、この寄生虫が日本に入ったきっかけだったと考えられます(図3)。この寄生虫の宿主となるヘビ、カエル、サカマキガイは行動範囲が狭く、人の手で野生個体を別の地域まで運んで放流しない限り、日本の中で速やかに広がることは無いと想定されます。一方で、幼虫の宿主となるサカマキガイは既に日本全国で個体群を形成し、カエルやヘビも日本に広く分布しているころから、ひとたび感染個体が人の手でリリースされれば、新たな場所にこの寄生虫が定着する可能性は高いと考えられます。感染リスクのある野生の宿主個体(サカマキガイ、カエル、ヘビ)を捕まえて、別の場所に放すことは(たとえそれが日本在来のカエルやヘビであっても)絶対に止めるべきです。
図3. 本研究で推定された、ヘビクチグロ吸虫の日本への2通りの侵入経路
この寄生虫は、1950年ごろ、生活史に必要な北米原産貝類サカマキガイが導入されたことで日本に定着可能になった。本研究内で、以下2通りの侵入経路が考察された。
①1990年代以降の観賞魚ブームの際に水草が沢山輸入され、それに付いてサカマキガイが繰り返し日本に来た。やがて感染サカマキガイが輸入され、その感染貝が野外に出たり、あるいは貝から遊出したセルカリア幼虫が野外に出ることで、この寄生虫が野外に定着した。
②2000年代に北米からのヘビの輸入量が増えていたので、この時期に北米産の野生のヘビが繰り返し輸入され、やがて感染ヘビが日本に来た。飼育個体の死体や、糞や飼育資材など、寄生虫の虫卵のついたものが野外に捨てられたことで、虫卵が外に出た。その虫卵によって、寄生虫が野外に定着した。イラスト:脇 司


発表者名
瀬尾 栄滋 (東邦大学理学部生命圏環境科学科 2023年度卒)
安齋 榮里子(東邦大学大学院理学研究科環境科学専攻 博士前期課程 2023年度修了)
佐瀬 哲也 (東邦大学理学部生命圏環境科学科 2019年度卒)
児島 庸介 (東邦大学理学部生物学科 講師)
脇 司   (東邦大学理学部生命圏環境科学科 准教授)
齊藤 匠  (チェコ マサリク大学 研究員、現:オランダアムステルダム自由大学 研究員)
髙野 剛史 (目黒寄生虫館 研究員)

発表雑誌
雑誌名:「Parasitology International」(2024年8月24日)
論文タイトル: Introduction of a snake trematode of the genus Ochetosoma in
eastern Japan
著者: Harushige Seo, Eriko Ansai, Tetsuya Sase, Takumi Saito, Tsuyoshi Takano, Yosuke Kojima, Tsukasa Waki*
DOI:https://doi.org/10.1016/j.parint.2024.102947
アブストラクトURL:
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1383576924000989

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