理学部生命圏環境科学科

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国際ワークショップで発表してきました ~ドイツ ベルリン~

湖沼生態学研究室の野崎大貴さん(大学院環境科学専攻修士課程2年)は、今年の7月、国際ワークショップへの参加、およびドイツの研究所(IGB-Berlin)との共同研究のため、2週間ほどドイツにわたりました。今回の経験についてお話をうかがいました。

◆今回のドイツへの渡航の目的は?

ワークショップ参加者との記念撮影

 指導教員である鏡味先生と筑波大学の大学院生(瀬戸さん)とともにドイツ ベルリンへ渡りました。主な目的としては、現在行っている研究を国際ワークショップ(Plankton Chytridiomycosis Workshop)で発表することでした。また、研究のヒントを得るため、鏡味先生と共同研究を行っているHans-Peter Grossart先生の所属研究所 IGB(Leibniz-Institut für Gewässerökologie und Binnenfischerei)へ行くことでした。

◆参加した国際ワークショップとはどのようなものだったのでしょう?

 世界各国のツボカビ研究〔※〕の第一人者たちが集まり、それぞれの最新の研究報告を行い、また興味のあるトピックについて意見交換をすることによってお互いに有用な情報を得る会議です。ドイツ・オランダ・イギリス・フランス・スペイン・ポルトガル・オーストリア・アイスランド・ノルウェー・イスラエル・日本の11ヶ国の研究者が参加していました。
〔※〕鞭毛を持った胞子(遊走子)をつくる菌類。胞子嚢が壷のような形状をしていることからツボカビと呼ばれる。近年、ツボカビの存在を考慮に入れた生態系の解明に注目が集まっている。鏡味准教授は、食物網に組み込まれていないと考えられていた大型の植物プランクトンが、ツボカビに寄生されていることを発見し、ツボカビを介した物質経路(菌類連鎖 Mycoloop)があることを解明した。
〔写真左〕ワークショップが開催された建物 〔写真中央〕会場の様子(開始前)
〔写真右〕鏡味先生のかつて上司であるEllen Van Donk先生(オランダ生態学研究所:中央)と

◆ワークショップに参加してみていかがでしたか?

 学生での参加は私と瀬戸さんだけで、論文で名前しか知らなかった研究者の方々が、目の前にたくさん居られたので、これらの方々とお話しできるのかとワクワクするとともに緊張していました。
 僕は、この会議で自分の研究内容について発表しました。これまで国内の学会でも口頭発表を経験しておらず、その上、英語での発表となるので準備を入念に行いました。ドイツに着いてからも会議が行われる日まで内容の確認、言葉の確認、発表練習と…鏡味先生、瀬戸さんに付き合ってもらい最後までアドバイスをもらいました。

 発表は、Diversity and functions of parasitic chytrids infecting phytoplankton in lakes.(湖における植物プランクトン寄生性ツボカビの多様性と機能)というタイトルで行いました。ものすごく緊張しましたが、質問に対してもなんとか対応することもでき、発表を終えることができました。

 他の方の発表を聞いているときは、とにかく英語を聞き取ることに集中していました。しかし聞き取れなかったことや、理解できなかったことも多くあったので、理解できていればもっと自分の研究に活かせることがあったのかも…と英語ができないということは、大変もったいないことなのだと実感しました。そのような中でも、自分が知っている研究の紹介や、自分の研究テーマに近い発表は理解することができ、自分の中ですごく盛り上がっていました。

 国際ワークショップという、学生のうちからなかなか参加することができない場所で、発表することができたという経験、また、そこで著名な研究者の方々から、興味深いプレゼンだったというコメントを頂けたり、逆に様々なこと質問できたこと、これらの経験により自分自身成長することができたと思います。

◆IGBでは、どのようなことを行ったのですか?

夕暮れ時のStechlin湖

 IGBは、日本語でいうと「淡水域生態学・内陸性魚類研究所」、淡水域の研究を行っている国立の研究所です。2013年に1ヶ月間 湖沼生態学研究室に滞在されていたHans-Peter Grossart教授が所属している研究所で、ベルリンから車で1時間半ほど北上した、Stechlinという場所にあります。このあたりは大小様々な湖沼が点在しており、非常に景観がよく、静かで落着いたところでした。研究所はStechlin湖の畔にあって、主にStechlin湖の環境の調査・研究をしています。

 Stechlin湖は貧栄養であるため、透明度が高く水草や魚を観察することが出来ました。
IGB 外観

 ここには、1週間滞在したのですが、これまでの研究に関する議論やこれから始めようとしている培養実験の準備・検討などを行いました。こちらで行われている実験方法が印旛沼での研究に応用が出来るのか、実際にStechlin湖に採水しにいき、それを材料に新しい実験方法を試したりしていました。

〔写真左〕研究所の目の前が湖で、いつでも調査ができるという素晴らしい環境です。ボートを漕いでいるのがHans-Peter教授。
〔写真右〕湖上にも研究室(Lake Lab)があり、室内ではできない大がかりな実験を可能にする施設です。将来の環境を予測するための実験などが行われています。ウェブサイトで動画を見ることができます。http://www.lake-lab.de/index.php/concept.html
〔写真左〕Stechlin湖での採水 〔写真中央〕新しい方法での培養実験の準備 〔写真右〕サンプルを顕微鏡で観察

◆研究文化の違いなどは感じましたか?

〔写真左〕左よりHans-Peter教授・Silke Van den Wyngaard博士・野崎さん・瀬戸さん

 こちらの研究所では、仕事が「朝早く夜遅くない」。大抵、8時(もっと早い人も多くいる)から作業していて、17時にすっぱり終わらせて帰る、というような感じでした。

 また、コーヒーブレイクが多くあり、部屋や机だけにこもることがないですね。単にみんなで休憩しているのではなくて、「研究はどう?」というような気楽な感じで、議論が始まります。このように研究に関する議論が日常的にあり、楽しく毎日毎日研究の進歩が感じられました。これらの議論も含め、皆さん楽しんで活動されているようでした。研究所に貼ってあった張り紙(写真)が象徴的で印象に残ったことの1つです。

◆ドイツでの生活を写真で紹介してもらいました。

〔写真左〕業務後の一幕。ここでも気楽な議論が行われている。
〔写真右〕研究所にあった張り紙。相対性理論の数式 …よく見てみると“Energy” “milk” “coffee”

 ドイツは初めてだったので、その国民性や気候、料理をはじめとした文化などを感じられればと思っていました。ビールは特に楽しみにして…。

 ドイツでは、晴れた日には街中の公園の芝生や河川敷で寝転がり、ビールを飲みながらのんびりと過ごしていたり、子どもたちは公園の遊具や砂場で夕暮れまで遊んでいたり、街と人にゆとりが感じられました。

〔写真左〕ベルリン市内の様子。黄色い乗り物はトラムと呼ばれる路面電車です。
〔写真右〕ドイツ伝統料理の有名な老舗らしい。これが、アイスバイン!
ベルリンの自然史博物館にも行ってきました。とんでもない数の生物標本が展示されていました。
滞在中は、Hans-Peter教授をはじめとするIGBの皆様には、研究以外にも大変お世話になりました。バーベキューや食事会、リクリエーションを企画してくださり、大変楽しく過ごすことができました。〔写真右〕ドイツ式ボーリング?レーンが細くボールも小さいのが特徴。簡単なようで以外と難しい。
Stechlinの気候はベルリンと比較すると気温が低く、肌寒いので、真夏でも長袖があった方が安心できます。私たちが滞在していた時期は不安定で、雹が降った日〔写真左〕もありました(例年はもうすこし暖かく、天気も安定しているとのこと。たまたま運が悪かった!?)。Stechlin湖は避暑地として知られているそうで、湖水浴を楽しむ家族連れが多く訪れていました〔写真右〕。
湖岸にはStechlin湖で採れた魚を使用したレストランがありました。ウナギを丸々一匹燻製にした料理が置かれていて〔写真左〕、日本人としてはもったいないなと感じてしまいました。ドイツの食事は1プレートで提供され、メイン+ポテト料理+ザワークラウトといった組み合わせが基本となっているようです〔写真右〕。どのメニューも美味しく、特に食べる前に残念に思っていたウナギの燻製は、ビールと大変良く合い、フォークが止まりませんでした。
Stechlinの小さな集落の中にも、ビジターセンターのような所があり、地域全体が自然環境に関心が高いことが感じられました。子どもも楽しみながら自然全体の仕組みを学べる工夫が多くされていました。

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