地震の揺れの予測の話 ~地震動予測地図とは~
上原 真一 (准教授 / 地球環境科学部門・地殻力学・地下水理学研究室)
ニュースなどで、「ある地域に30年以内に○○パーセントの確率で震度6以上の地震が起こる」などという話を耳にしたことがあると思います。この“○○パーセント”という数字がどのように導き出されているのかご存知ですか?ここでは、地震による揺れの中期・長期的な予測の方法について簡単に解説いたします。
そもそも地震とは?
揺れの大きさは何で決まるか?
まとめますと、ある地震による揺れの大きさは、地震自体の規模、震源断層からの距離、地盤の揺れやすさで主に決まります(図1)。
いつ地震が起こりそうなのか?
一般的な考え方として、地震を起こす断層はほぼ一定の間隔で活動を繰り返すとされています。この考え方にのっとると、ある断層が次にいつ活動するかを推定するには、(1) その断層はどれくらいの間隔で活動するか、(2)最後に活動したのはいつか、を調べることが重要です。例えば約5000年に一度活動する断層が1000年前に活動していれば、その断層が30年以内に活動する可能性はとても低いと考えられます。一方で、約150年に1度活動してきた断層が160年くらい活動していない場合は、30年以内に活動する可能性は比較的高い、ということになります。
それでは、ある断層について、30年以内に活動する確率の推定方法について具体的に説明します。まず、断層について調べた過去の活動履歴から、発生間隔とそのばらつきを求めます。その結果にもとづいて、図2(a)のように、最後に活動した時期からの時間(横軸)と、地震の起こりやすさ(確率密度、縦軸)の関係を求めます。このような地震発生の確率は、Brownian Passage Time分布という確率分布でうまく説明できると考えられており、その考えに基づいて図2(a)の確率分布は作成されます。ここで、現在から30年以内に地震が発生する確率は、(図2(a)の水色部分の面積)/ (水色の面積+黄色の面積)で求められます。
また、断層によっては、最後に活動した時期が不明な場合もあります。その場合は、地震の発生が「ポアソン過程」に従うと仮定して確率を計算します。ポアソン過程とは、ランダムに発生するが、その間隔の平均値は一定であることがわかっている現象を表す数学的モデルで、例えばバス停に乗客がぽつりぽつりやってくる様子やコールセンターに電話がかかってくる様子をモデル化できると考えられています。この仮定にもとづいて先ほどと同じように過去の活動履歴から確率分布を求め(図2(b))、30年以内の発生確率を求めます((図2(b)の水色部分の面積)/ (水色の面積+黄色の面積))。
以上、ある断層についての地震の発生確率について簡単に述べました。詳細は地震動予測地図の「解説編」をご参照ください(予測地図のウェブサイトは本稿の最後にあります)。
「30年以内に震度6以上の地震が起こる確率」の求め方
こういった手順で全国各地の「確率」をまとめた図を「確率的地震動予測地図」と言います(「地震動」とは、地震による揺れのこと)。この地図は、地震調査研究推進本部という国の機関によって作成されたものです。
使用上の注意
”○○パーセント”という数字が独り歩きして、過剰に安心したり、逆に警戒しすぎたりというのは時に危険です。ここで述べた手順で求めたものでいろいろと不確定な要素が含まれているということを踏まえたうえで、この「地震動予測地図」を防災などに利用するのが大事であると思います。
参考ウェブサイト
・地震調査研究推進本部ウェブサイト
地震動予測地図を作製している機関のサイトです。
http://www.jishin.go.jp/main/index.html
・全国地震動予測地図 2010年版
「地図編」のほか、「手引編」、「解説編」は地図の見方や予測のやり方が詳細に書かれております。
http://www.jishin.go.jp/main/chousa/10_yosokuchizu/index.htm
・地震ハザードステーション ウェブサイト
ここで書いたことについてのより詳細な説明や、地震動予測地図のオンライン版が見られます。
http://www.j-shis.bosai.go.jp/tag/shm