「芸術学」公開レクチャーコンサートが開催されました

2024年12月13日(金)、理学部教養科目『芸術学』の一環として、若手ピアニストで作曲家の槙和馬さんをお迎えしたコンサートが開催された。通常の履修者に加え、他学部を含む習志野キャンパスの学生や教職員、若干の学外からの来客も訪れて貴重な会となった。
西洋音楽史を軸とする近松博郎先生の講義は、ちょうどロマン派の最盛期に向かう回にあたり、リストやショパンなどのピアノ作品の特徴、それがどのような社会環境で演奏されたかなどをわかりやすく解説してくださった。ロマン派と言うと、ベートーヴェンからヴァーグナー、マーラーへ、規模がひたすら巨大化していく時代と考えていたが、ピアノ曲に関しては必ずしもそうではないというお話を聞き、認識を少し改めた。槙さんのプログラムも、講義に合わせてショパンを中心に、ドビュッシーを含む本格的なもので、演奏前に作品と聴き所の紹介をしてくださった。
クラシック音楽の入門者から上級者まで、それぞれの人がそれぞれの仕方で楽しめる会だったと思う。槙さんに寄せられた質問から察するに、学生の中には音楽や楽器演奏にかなり詳しい人もいたようだが、きっと満足してもらえたに違いない。私にしても、時代背景などはある程度知っていたものの、作品の特徴や作曲法、演奏法上の工夫などは初めて聞く話が多かったし、説明を聞いても十分には理解し尽くせない点もあった。最後に行われた即興演奏は魔術か手品を見るようで、ただ驚くばかりだった。音楽は、知れば知るほど奥深い世界が広がることを実感できる。
槙さんのショパン、ドビュッシーは、明晰さの際立つすばらしい演奏だった。3号館5階の広い講義室は、もっと大きなピアノの方が楽に鳴らせたかもしれないが、静まり返った教室に響くピアニシモが美しく、飛んでくる音を一粒一粒、手のひらでつかまえて吟味できそうな気分になる。自分の話で恐縮だが、四半世紀前のロンドン留学中、ロイヤル・フェスティヴァル・ホール(ピアノ演奏会には大きすぎるが、余計な残響のない清潔な響きでピアニストには好まれる)の上階席で聴いた数々の名演奏を久しぶりに想い出した。
(文:教養科 塩野直之)