構造有機化学
Structural Organic Chemistry
担当教員 桑原 俊介
選択 | 2単位 | 3年春学期
授業目的
有機化学Ⅰ~Ⅲで学修してきた反応機構は二次元的な描写で理解できるものであったが、実際の反応では分子の立体配座、反応点周辺の立体障害、立体電子効果など、三次元的な要因が反応性や選択性を決定する上で重要な役割を果たしている。本講義では、有機化合物の立体構造が物性、反応性に与える影響を理解し、有機化学の研究を遂行するのに必要な知識を修得することを目的とする。
授業内容
本講義では、実践的な有機化学反応を理解する上で必要不可欠な立体化学について焦点を絞り、命名法、立体構造、物理的および化学的性質について解説する。また不斉合成についても触れ、実際の合成研究に対応できる知識の定着を目指す。
授業方法:主として講義形式で行う。PCを用いて分子の立体構造を確認する演習も行う。
第1週 | 分子の立体構造(1):混成軌道と電子配置 <到達目標>有機化合物において、各原子の電子配置と混成軌道の図を書くことができる。さらに化合物全体の立体構造を予想することができる。 |
第2週 | 分子の立体構造(2):複雑な分子の電子配置と立体構造 <到達目標>特異な立体構造をもつ有機化合物において、各原子における電子配置と混成軌道の図を書くことができる。さらに化合物全体の立体構造を予想することができる。 |
第3週 | 立体配座とエネルギー(1):配座異性体とエネルギー <到達目標>種々の有機化合物の立体配座を説明することができる。平衡定数と自由エネルギー差の関係式から、各異性体の存在比を見積もることができる。 |
第4週 | 立体配座とエネルギー(2):結合の回転、反転エネルギー <到達目標>炭素-炭素結合の結合周りの回転、アミン、硫黄、リンなどの反転の起こりやすさを、エネルギーから予想することができる。 |
第5週 | 立体配置(1):立体配置とキラリティー <到達目標>不斉炭素をもつ化合物の立体構造を理解し、R、S配置の決定ができる。 |
第6週 | 立体配置(2):不斉炭素をもたない化合物の立体配置 <到達目標>軸性、面性キラリティーをもつ化合物の立体構造を理解し、R、S配置の決定ができる。 |
第7週 | 中間試験とまとめ |
第8週 | 立体異性体の同定(1):相対立体配置と絶対立体配置 <到達目標>有機化合物の相対立体配置と絶対立体配置を理解し、説明することができる。 |
第9週 | 立体異性体の同定(2):絶対配置決定法 <到達目標>有機化合物の相対立体配置および絶対立体配置を決定するための方法を理解し、説明することができる。 |
第10週 | 立体異性体の分析:光学純度とエナンチオマー過剰率 <到達目標>光学純度とエナンチオマー過剰率を理解し、キラル化合物の測定データを用いてその値を決定することができる。 |
第11週 | 立体異性体の分離:光学分割法 <到達目標>種々の光学分割法を用いたキラル化合物の合成法を理解し、説明することができる。 |
第12週 | 立体異性体の合成(1):有機反応における立体化学 <到達目標>立体特異的、立体選択的反応を理解し、反応機構を説明することができる。 |
第13週 | 立体異性体の合成(2):不斉補助剤を用いた合成法 <到達目標>不斉補助剤を用いた立体選択的な反応を理解し、反応機構を説明することができる。 |
第14週 | 立体異性体の合成(3):不斉触媒反応 <到達目標>種々の不斉触媒を用いた反応を理解し、反応機構を説明することができる。 |
第15週 | 学習到達度の確認 |
関連科目
予め学んでおくとよい科目:有機化学Ⅰ 有機化学Ⅱ 有機化学Ⅲ 有機化学Ⅳ
この科目に続く内容の科目:有機化学反応機構、生物有機化学
この科目に続く内容の科目:有機化学反応機構、生物有機化学
教科書・参考書
【参考書】
- 大木道則「立体化学」東京化学同人 ISBN:4-8079-0550-3
- S. R. Buxton, S. M. Roberts 著 小倉克之, 川井正雄 訳「基礎有機立体化学」化学同人 ISBN:4-7598-0860-4
- HGS分子構造模型 C型セット(推奨;4,200円)もしくは有機学生用セット(2,100円)丸善
評価方法
期末試験40%+中間試験40%+レポート20%を目安に評価を行う。レポート、中間試験の実施後、授業内で解説を行う。
オフィスアワー
木曜日15:00~16:00(理学部1号館1202A室)
その他
なし