理学部化学科

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反応速度論
Chemical Kinetics

担当教員 菅井 俊樹
選択 | 2単位 | 3年春学期

授業目的

これまで物理化学I,IIで学習した、「化学現象や反応を数理的」取り扱ってきたものは、エネルギーや平衡など「無限の時間がかかっても最終的に」どのぐらいのエネルギーや濃度などになるかという「速度や時間」を無視したものであった。実際の化学現象には、腐敗や岩石化などの場合によっては天文学的長時間のものや、爆発反応のように極めて短時間のものもあり、この「速度や時間」を無視するわけにはいかない。特に化学現象を実際に役立てようとした場合、「触媒」など反応速度を促進させることは極めて重要である。この講義では、化学現象の「速度や時間」を直接取り扱うために必要な基礎として、分子同士の衝突、存在確率、反応機構を中心に講義を行う。化学現象を、分子や原子の衝突に伴う、変化としてとらえ直し、速度や時間の見積もりが出来るようになることが目標である。

授業内容

気体の分子運動論、分子速度分布、衝突論を柱とする分子同士の衝突頻度の見積もりを通して、化学反応は分子や原子の衝突に支配されていることを紹介する。さらに統計力学的なエネルギーや温度の紹介を行い、なぜ高温だと反応が促進されるのか、を示す。これらの考え方から、最終的な反応速度がどの程度になるかを見積もる手法と手段を提供する。さらに具体的な反応は、多分子の衝突や、固体表面や液相間、など特殊な環境で進むものもある。これらの反応機構を紹介した上で、速度の見積もりや触媒反応、そして同位体効果など卒業研究や社会で実際に活用されたり、利用されたりするような反応の解説を行う。
No.1 イントロダクション。反応速度の理解が化学において重要な理由。
物理化学I,IIで行ってきた熱力学的平衡だけでは、化学反応を理解できない理由。
No.2 衝突論1:化学反応速度を支配する主要な要因である、原子・分子の衝突過程を運動方程式を用いて理解する。
理想気体のボイルシャルル則を気体の分子運動論で計算する。
No.3 衝突論2:衝突論1では原子分子の速度の平均値しか計算しなかったが、実際には速い分子と遅い分子など様々な速度を持って分布する。これらの分布をマックスウェルの速度分布式を導出して計算する。
No.4 衝突論3:化学反応速度を決定する原子分子の衝突頻度を衝突断面積と平均自由行程という値から計算する。
No.5 統計力学1:衝突論で取り扱ったマックスウェルの速度分布を発展させ、エネルギー分布として把握する。化学反応において、分子原子の速度だけではなく振動・回転・電子状態など様々な状態に関し、統一してどのような分布をするのか、統計力学を導入して理解する。
No.6 統計力学2:統計力学を理解する上で重要となるアンサンブルについて学び、物理化学I,IIで化学反応を支配するエントロピーがどのように統計力学では取り扱われているのかを学ぶ。
No.7 化学反応速度論1一次反応:分子同士の衝突がなくても進行する一次反応を微分方程式を用いて計算し、放射壊変などで反応速度をよく表す半減期について理解する。
No.8 化学反応速度論2二次反応:分子同士の衝突が必須である二次反応を微分方程式を用いて計算し、濃度依存性がどのように全体の反応速度に影響を与えるかを理解する。
No.9 化学反応速度論3多段反応:現実におきている化学反応は、No7,8で取り上げた一次や二次反応のような簡単な反応ではなく、それらが組み合わさった多段反応である場合が多い。これらを記述する微分反応方程式を学と同時に、特定の場合は、定常状態法や律速段階という考え方で、複雑な反応を簡単に取り扱えることを学ぶ。
No.10 律速段階と活性化エネルギー:これまで学んだ反応では、衝突頻度とそれらを外部パラメーターとして支配する濃度によってのみ反応が変化するように反応を理解してきた。実際の反応は反応温度に強く依存する。この温度依存がどのように生じるのかを律速段階と関連して活性化エネルギーという観点で学ぶ。
No.11 活性錯合体理論:No10で取り上げた、活性化エネルギーには不安定で短時間しか存在せず、性質などは良くわかっていない場合が多いが、具体的な物質が関与し、これらを活性錯体と呼ぶ。この性質や構造などを学ぶ。
No.12 反応場と反応機構:活性錯体は反応する環境が、気相なのか液相なのか、それとも固体表面なのかで様々に変化する。この結果として反応機構そのものも変化する。これらについて学ぶ。
No.13 触媒反応:反応場や反応機構を変化させることで、極めて温和な条件や高い選択性を実現することが出来る。具体的には、アンモニア合成などでは、高い圧力と触媒を用いることで、実現前は不可能と考えられてきた窒素分子を分解し、アンモニアを生成することができる。これらについて学ぶ。
No.14 実際の観測例および実験手法
No.15 学習到達度の確認

関連科目

予め学んでおくとよい科目:数学A1 数学A2 数学B1(2021年度開講せず) 数学B1 数学B2(2021年度開講せず) 数学B2 物理学Ⅰ 物理学Ⅱ 物理学実験 物理化学Ⅰ(再履修クラス) 物理化学Ⅰ 物理化学Ⅱ 物理化学Ⅱ(再履修クラス) 物理化学Ⅲ 物理化学Ⅲ(再履修クラス)

この科目に続く内容の科目:該当しない

教科書・参考書

【教科書】
  • 教科書は使用しない。毎回参考資料を配布。電卓必須。
【参考書】
  • 「アトキンス 物理化学(上下)」(P.W. アトキンス(著)、千原英昭、中村亘男(翻訳)、東京化学同人)
  • 「物理化学—分子論的アプローチ(上下)」(D.A. マッカーリ、J.D. サイモン(著)、千原 秀昭、斎藤 一弥、江口 太郎 (翻訳)、東京化学同人)

評価方法

理解の把握と学習の定着のため毎回簡単な演習問題をおこなう。毎回の演習問題50%、および期末定期試験50%の割合により評価する。

オフィスアワー

月~金の12:15~12:50

その他

毎回の授業で演習を行うので電卓を持参のこと。
電磁気や統計力学など、化学科としては特に授業科目として存在していないものも紹介する。完全な理解を求めているわけではないが、化学の専門家としてこれらの理解は必要不可欠である。是非物理学科の授業やさまざまな教科書に触れて、理解を深めてほしい。これらのトピックについては本講義の中では最低限の紹介にとどまる。

お問い合わせ先

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