2重の鍵で細胞を見分ける遺伝子指向性ケージド化合物の研究が論文誌のBack Coverに採用されました
古田研究室の鈴木商信研究員, 坂野太一君(2016年度修了),佐々木紘那さん(2020年度修了),綿引玲さん(2020年度修了)の研究をまとめた論文が英国王立化学会の論文誌Chemical CommunicationsのBack Coverを飾りました。
古田研究室では,光ではたらくスイッチ付き分子(ケージド化合物)を設計して,細胞の生理機能を自在に制御する技術を開発してきました(過去の研究紹介)。この過程で明らかになった欠点を克服したのが,今回報告した遺伝子指向性ケージド化合物(gene-directed caged compounds)です。薬剤の機能を人工的に制御するスイッチ付き分子はこれまでにもありましたが,目的としない細胞でも鍵が開いてスイッチが入る欠点がありました(オフターゲット効果)。今回新たに開発した遺伝子指向性ケージド化合物は,薬剤を閉じ込めるかご(ケージ)の鍵を2重にすることで,この欠点の克服に成功した分子です。遺伝子工学と有機化学の技術を融合することで初めて可能になりました。目的の組織だけで薬剤のはたらきを制御する光薬理学への展開が期待されます。
この研究の一部は,文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究「高速分子動画」の助成を受けています。
Design and synthesis of gene-directed caged cyclic nucleotides exhibiting cell type selectivity
Akinobu Z. Suzuki, Taichi Sakano, Hirona Sasaki, Rei Watahiki, Masaki Sone, Kazuki Horikawa and Toshiaki Furuta
Chemical Communications, 2021, 57, 5630 - 5633.
doi.org/10.1039/D1CC01405F