第21回 生物分子科学賞の授賞式と講演会が行われました
はじめに渡辺学科主任から生物分子科学賞と本年度受賞者の紹介があり、続いて古田学部長から賞状授与が行われました。また、基金の設立に関られた岡田名誉教授からもご挨拶いただきました。
続いて、受賞者のお二人に受賞講演を行っていただきました。
まず、庄田恵子さんから「テクニカルスタッフとして最新研究に携われる幸運」というタイトルでご講演を頂きました。まず、葉の形態形成に関する研究、小児てんかんに関わる遺伝子の研究、高速超解像共焦点顕微鏡SCLIMを用いた植物のゴルジ体に関する研究、蛍光タンパク質を用いたバイオイメージングの技術開発など、これまでに携わってこられた多数の研究のご紹介がありました。また、最新の研究成果の中から、細胞内で急速に結晶が成長するXpa、細胞周期を可視化するFucciなども詳しく紹介していただきました。講演のスライドでは、生命現象を可視化する技術で得られたたくさんの美しい写真や動画を見せていただきました。百聞は一見に如かず、とはこのことだと実感しました。庄田さんのような確かな技術を持ったテクニカルスタッフの支えがあって、最先端の研究が成り立っているのだということがわかりました。
続いて、齊藤貴士さんから「ソフトな相互作用によるタンパク質間複合体の構造生物学的解析」というタイトルでご講演を頂きました。これまで、様々な波長の光を活用した分光学を用いて生体分子に関する研究を進めてきたそうです。複数の研究室で研究を行う中で、有機合成、酵素反応学、NMR、ESR、X線結晶構造解析、表面プラズモン共鳴(SPR)など、たくさんの技術を身につけてきたことをお話しいただきました。相互作用が弱いために解析が難しいタンパク質複合体の動的認識メカニズムについて、これらの技術を駆使して取り組まれていることが分かりました。また、これらの成果から、病態解明や新規薬物治療を目指した研究を進めているとのことでした。お話に出てきた分光学的なテクニックは、どれ一つとして簡単なものはなく、これらを数多く使いこなすことは並大抵ではありません。ソフトなタンパク質間相互作用の研究を通して、今後、新しい薬などを含む様々な研究成果が発信されることだろうと思いました。
受賞されたお二人とも、生物分子科学科で幅広い分野を学んだことが、その後の研究を進める上でとても役に立ったと話されていたのは嬉しいことでした。ご講演を聞いていて、それぞれのお立場で研究を楽しんでいることが伝わってきて、自然と話に引き込まれました。今後の研究のご発展が楽しみです。