卒業生からのメッセージ
石井 真由子 さん
理学研究科生物学専攻生体調節学研究室を卒業した石井真由子さんが、小説「さようなら、お母さん」(講談社)を発表し、第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞しました。胚培養師として働きつつ、小説家というユニークな経歴を持つ石井さんにインタビューを行いました。
【略歴】
・2001年度 東邦大学理学研究科生物学専攻修了
・病院で勤務し、出産を機に退職
・子育てをしながら勉強し、大学卒業後10年目に臨床検査技師の資格を取得
・これまでに得た経験や知識を生かし小説を執筆し、新人賞受賞にいたる
・現在は胚培養師として病院で勤務
新人賞受賞作品が生まれた経緯
-小説は「毒」が重要な要素となっている医療ミステリーですが、大学時代の臨床検査技師課程の授業で学んだ知識がもとになっているのですか?
(石井さん)実は毒は自分の興味で、独学で学んだことなのです。ですが、大学時代の授業や実習、特に病院実習が仕事に生きましたし、そして本のベースとして生きています。
-毒がご自分の興味?なんともユニークですね。臨床検査技師になることを目指していたのですか?
(石井さん)臨床検査技師の国家資格を得たのは、大学卒業後10年目です。大学卒業後、胚培養士として働いていましたが、出産を機に退職しました。ですが復帰することを考えていたので、現場の勘を忘れないよう、その機会に臨床検査技師の勉強をやりなおしたのです。私が携わっている生殖医学は医療の進歩も早いですし、状況により適した対処を迅速に行うことが求められます。ですので勉強し続ける必要がありました。そして卒業後10年目にして国家試験に合格しました。
-子育てしながら、臨床検査技師の勉強とはバイタリティがありますね。本を書こうと思ったきっかけは何ですか?
(石井さん)国家資格を取り、職場復帰を考えていたところ二人目を身ごもり復帰が先となりました。そこで執筆を始めました。私は妄想にふけることが好きだったこともあり、その特技と医療の知識を生かした本を書こうと思いました。
-本の内容は医療ミステリーですが、「島の生態学」の知識も生かされていますね。生物学科のカリキュラムは、遺伝子というミクロから生態系というマクロまで幅広い生物学を学べることが特色なので、まさにその知識を生かした内容だと思いました。
(石井さん)やはり生物学科ならではですが、野外に行くのが好きな友達がいました。一緒に遊びに行ったことがある伊豆諸島の神津島が、本に出てくる島のモデルです。もちろん本に書いてあることは私の創造ですが。
大学時代は興味を満たす機会
(石井さん)とにかく小さいころから生物が好きでした。小さいころから生き物を飼っていたことが原因かもしれません。犬、鳥、ウサギ色々な生き物を飼いましたが、最初に飼ったのが小学2年生のときのアカハライモリです。母に連れていかれたペットショップで「アカハライモリじゃないと嫌。」と言って、犬や猫を想定していた母を困惑させたのを覚えています。
生物学科では遺伝子から生態系まで幅広く学べるのが魅力です。小さいころから生物学の色々な現象に興味があったので、入学時に分野をしぼりたくありませんでした。
-最初のペットにイモリを選ぶあたり石井さんのユニークさが出ていますね。生物の様々な分野に興味を持たれていたとのことですが、大学の授業に求めるものは何ですか?
(石井さん)教科書をトレースするのではなく知的好奇心を満たしてくれる授業を求めます。在学時代、心に残る授業をして下さる先生がいました。1回の授業が一つのストーリーとなっていて、最後まで聞くと「なるほど」と納得できました。内容は大変難しかったのですが、一生懸命勉強し、その難しい試験で満点を取って褒めて頂いたことを、今でも誇りに感じています。
-生物学科では大学3年生の後期から研究室に配属されますが、研究生活はどうでしたか?
(石井さん)ホルモンに興味があり、生体調節学研究室に入りました。新しく入った学部生には担当大学院生がついて研究を指導する体制があり、結束感の強い研究室でした。夜9~10時まで研究していることが日常で、研究室メンバーとは一緒にいる時間も長く、ときにケンカをすることもありました。
当時、一生懸命に取り組んだことで、研究をやり遂げたという自信に繋がっています。
-最後に後輩へのメッセージをお願いします。
(石井さん)皆さん少なからず何かに興味があり、大学に進学したと思います。自分の興味ある真理の探究は大学時代にしかできません。興味あることを掘り下げ、その興味を満たすために出来ることは何かを突き詰め、大学生活を楽しんでください。