理学部生物学科

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長谷川雅美教授 日本生態学会大島賞を受賞

 1983年10月3日。伊豆諸島の三宅島でオカダトカゲという固有種の生態調査を行っていた私は、火山の噴火に遭遇しました。その後も、伊豆諸島にこだわり続け、爬虫類をはじめに、昆虫や陸産貝類、植物、鳥類へと研究対象範囲を広げ、今年2017年に40年目を迎えました。
 この節目の年に、大変光栄なことに、「日本生態学会大島賞」をいただきました。大島賞は,野外における生態学的データの収集を長期間継続しておこなうことなどにより生態学の発展に寄与している本学会の中堅会員を主な対象とした賞です。すでに中堅の域とは言えない年齢ですが、伊豆諸島を中心に島嶼生態系の長期動態を観測して、貴重な生態学的情報を集積し、その成果を博士課程の学位研究指導などの後進の指導に生かしてきたことなどが評価され、受賞につながったと聞いています。

 1977年は私が東邦大学生物学科に入学した年です。長期の野外研究を続けることができたのも、母校である東邦大学理学部生物学科の教員となることができ、同僚の先生方のご理解があってことです。あらためて、今もお世話になりっぱなしの多くの方々に心からの感謝を申しあげます。

長期研究だからこそ捉えられるもの

 長い地球の歴史の中で、たった一日の噴火が森林生態系を大規模に改変してしまうことや、たった一回の外来種の導入がその後の島嶼生態系を大きく変えてしまうことがあります。同じ地域で長期の研究を継続することで、私はこうした事件の目撃者となり、自然の変容を記録し続けてきました。この間、生態や行動、形態の地理的変異に注目し、島集団間の進化的変化が、他の生物との関係の在り方の地理的な違いに帰着することを明らかにしてきました。
 様々な生物の相互作用が、生態系の変化を駆動し、それが生態系を構成する種の性質に影響を与える進化的選択圧になります。この生物の進化が生態系を変化させるというプロセスそのものに強い関心を抱いており、長期野外研究を続けてきた動機付けにもなっています。生物の世界を生態的、進化的に変化させる原理を具体的に明らかにしつつ、ある地域の生態系を包括的に理解するのが目標です。
 今後も、伊豆諸島の島々の記録者として野外研究を続け、学術的成果を生み出す宝島としての価値を高め、自然生態系の保全と再生に成果をあげていくつもりです。

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