実は多様なヘビの捕食行動②
はじめに
以前の記事でも紹介したように、ヘビは基本的に餌となる動物を丸呑みすることに特化した捕食者です。顎や頭部が柔軟なため、ヘビは自分の頭よりも大きな餌を呑み込むことができます。このような能力は、ヘビの大きな特徴であり、彼らを他の脊椎動物から際立たせる要素のひとつです。しかし、4000種を超えるヘビの中には、「丸呑み」という常識から外れた、ユニークな食べ方をする種もいます。今回は、近年報告された3つの例を紹介します。
カニを分解して食べるサワヘビ
東南アジアや中国などに分布するサワヘビ(Opisthotropis 属)は、渓流域に生息し、カニを食べることが知られています。タイにおける研究(文献1)は、サワヘビの1種における変わった食べ方を明らかにしました。観察によると、サワヘビは渓流中の岩の間を泳ぎ回り、硬い殻をもつカニは避けて、脱皮後でまだ体が柔らかいカニを探します。柔らかいカニを見つけると、ヘビはカニに巻きついて圧迫し、カニの体の中に自分の頭を入れて内部を食べました。その後、ヘビは体で輪を作ってその中でカニを引っぱり、分離した脚や胴体を食べました。このような行動は、カニの体を分解してから食べるという点で、以前の記事でも紹介したミズヘビの仲間の行動と似ています。しかし、ミズヘビとサワヘビは系統的にまったく別のグループです。つまり、餌を分解してから食べるという行動は、カニを餌とする2つの系統において独立に進化したと考えられます。
カエルの内臓を食べるククリヘビ
次に紹介するククリヘビ(Oligodon 属)は、名前の由来にもなったククリナイフのように、鋭く湾曲した歯をもっています。このような鋭い歯は、彼らの主な餌の一つである爬虫類の卵の殻を切り開くのに使われることが知られています。しかし、近年の研究(文献2–4)により、鋭い歯が大きなカエルを食べる際にも役立つことが明らかになりました。観察によると、3種のククリヘビヘビが、鋭い歯でカエルの腹を切り開き、体腔内に頭部を差し込んで内臓を食べました。このような行動により、丸呑みできないほど大きなカエルも餌として利用できるようになります。また、毒をもつヒキガエルも食べられていたことから、このような食べ方には、皮膚にある毒腺を避けるという機能もあるかもしれないと著者らは推測しています。
顎をナイフとフォークのように使うエダセダカヘビ
最後に紹介するエダセダカヘビ(Aplopeltura boa)は、東南アジアなどに分布するセダカヘビの1種です。セダカヘビの仲間の多くは、カタツムリを餌としています。彼らは、カタツムリの殻に下顎を差し込み、軟体部を抜き出して食べます。このような食べ方を可能にしているのは、よく動く下顎です。ヘビの顎は右側と左側の骨が分離しており、左右の顎が別々に動きますが、セダカヘビの仲間では、上顎と下顎の骨も分離しています(図1)。それによって、左右の下顎がそれぞれ独立に、前後に大きく動くのです。
私たちは、エダセダカヘビの捕食行動を観察し、彼らが餌のタニシから体の一部分(蓋)を切り落としてから食べることを明らかにしました(文献5)。エダセダカヘビは、タニシの体に咬みつくと、下顎を殻の中に差し込んでタニシの体を殻から抜き出しました。そして、上顎と片側の下顎でタニシの体をくわえながら、もう一方の側の下顎を前後に動かして、タニシの体から蓋を切り落としました。つまり、左右の下顎をそれぞれナイフとフォークのように使って、餌の一部分を切り落としたのです。その後、ヘビはタニシの殻と蓋を残して、軟体部だけを呑み込みました。このような行動は、下顎が左右別々に前後方向に動くことで可能となっており、他のほとんどの脊椎動物には構造的に不可能なものでした。セダカヘビがもつ可動性の高い下顎は、もともとは巻貝を殻から取り出すための適応であると考えられています。形態の特殊化によって顎の動きの自由度が増した結果、新たな行動が進化して、顎の機能が多様化したと推測されます。
私たちは、エダセダカヘビの捕食行動を観察し、彼らが餌のタニシから体の一部分(蓋)を切り落としてから食べることを明らかにしました(文献5)。エダセダカヘビは、タニシの体に咬みつくと、下顎を殻の中に差し込んでタニシの体を殻から抜き出しました。そして、上顎と片側の下顎でタニシの体をくわえながら、もう一方の側の下顎を前後に動かして、タニシの体から蓋を切り落としました。つまり、左右の下顎をそれぞれナイフとフォークのように使って、餌の一部分を切り落としたのです。その後、ヘビはタニシの殻と蓋を残して、軟体部だけを呑み込みました。このような行動は、下顎が左右別々に前後方向に動くことで可能となっており、他のほとんどの脊椎動物には構造的に不可能なものでした。セダカヘビがもつ可動性の高い下顎は、もともとは巻貝を殻から取り出すための適応であると考えられています。形態の特殊化によって顎の動きの自由度が増した結果、新たな行動が進化して、顎の機能が多様化したと推測されます。
図1.セダカヘビの1種の頭骨.
おわりに
かつてはヘビの餌の食べ方は丸呑みだけであると考えられていましたが、以前に掲載した記事や今回の記事で紹介したように、近年、それに当てはまらない例がいくつも報告されています。このような発見により、ヘビの捕食行動はかつて考えられていたように画一的ではなく、むしろ形態や食性と関連して柔軟に進化してきたことがわかってきました。今後の研究が進めば、さらに変わった食べ方が見つかるかもしれません。
参考文献
- Noonloy, T., Kunya, K., Chanhome, L., Sumontha, M., Chomngam, N., & Pauwels, O. S. (2018). Crab-ripping: An unusual feeding behavior newly recorded in freshwater snakes. Bulletin of the Chicago Herpetological Society, 53(3), 53-56.
- Bringsøe, H., Suthanthangjai, M., Suthanthangjai, W., & Nimnuam, K. (2020). Eviscerated alive: Novel and macabre feeding strategy in Oligodon fasciolatus (Günther, 1864) eating organs of Duttaphrynus melanostictus (Schneider, 1799) in Thailand. Herpetozoa, 33, 157-163.
- Bringsøe, H., Suthanthangjai, M., Suthanthangjai, W., Lodder, J., & Komanasin, N. (2021). Gruesome twosome kukri rippers: Oligodon formosanus (Günther, 1872) and O. fasciolatus (Günther, 1864) eat Kaloula pulchra Gray, 1831 either by eviscerating or swallowing whole. Herpetozoa, 34, 49-55.
- Bringsøe, H., & Holden, J. (2021). Yet another kukri snake piercing an anuran abdomen: Oligodon ocellatus (Morice, 1875) eats Duttaphrynus melanostictus (Schneider, 1799) in Vietnam. Herpetozoa, 34, 57-59.
- Kojima, Y., Fukuyama, I., Kurita, T., Hossman, M. Y. B., & Nishikawa, K. (2020). Mandibular sawing in a snail-eating snake. Scientific Reports, 10(1), 12670.
児島 庸介(動物生態学研究室)



