理学部生物学科

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クリスマスの頃に赤くなるもの

はじめに

 今回の記事、ギリギリ間に合った人もいれば時機を逸してしまった人もいるかと思いますが、クリスマス関係のお話を。
 「クリスマスの頃に赤くなるものは何ですか?」と聞かれた時、最初に思い浮かべるのはトナカイの鼻でしょうか。「♪真っ赤なお鼻のトナカイさんは・・・」。もちろん、現実の世界でトナカイの鼻が赤くなることはないですけど、まあ、正解。では、クリスマスの頃に本当に赤くなるもの、何か思い浮かびますか? ヒントは、毎年12月頃になるとよく見かける、あの植物。そう、ポインセチアです。花言葉は、「祝福する」「聖夜」「幸運を祈る」「私の心は燃えている」などです1)。ポインセチアの特徴は何といっても、人の目を引くその鮮やかな赤2)。クリスマスの頃に鉢植えを買ったことがある人も多いのではないでしょうか。

そもそも赤い部分は何?

 ポインセチアで赤くなる部分は、トナカイと同じく「はな」と思っている人はいませんか? もちろん「鼻」ではありませんけど、「花」でもありません。実は、「苞(ほう)」あるいは「苞葉(ほうよう)」と呼ばれる、葉の一種なのです。では、花はどこにあるのかというと、赤い苞に囲まれた中央にある、小さな丸が集まった部分です。植物全体が赤くなるのではなく一部だけきれいな赤になるので、一見、花と勘違いしてしまいますよね。

どのような仕組みで赤くなるの?

 「ちゃんと赤いポインセチアを買ってきたのに、翌年は赤くならかった」という人はいませんか? 実は、単に育てるだけでは赤くならないのです。きれいに赤くするには、その前にまず、どのような仕組みで赤くなるかを知る必要があります。
 ポインセチアが赤くなるのはどの季節でしょうか。冬ですよね。では、冬はどのような季節でしょうか。寒い季節?・・・もちろんそうですが、日の長さは冬にどうなるでしょう? 冬は日が短いですよね。これが鍵になってくるのです。
 植物にとって日の長さ(「日長」)はとても重要で、花が咲くかどうかも、日が長いか短いかで決まります3)。例えば、春の訪れを告げる菜の花(アブラナ)。ちょうど、東邦大学がある千葉県の「県の花」ですね。菜の花は冬が終わって日が長くなってくると花が咲くので、「長日植物」と呼ばれます。逆に、日が短くなると花が咲くのは「短日植物」と呼ばれ、菊などがあります。思い出してください。菊祭りや菊の展覧会は春ではなく、日が短くなってくる秋ですよね。ポインセチアの赤い部分は前述のように花でなく一種の葉ですが、これが赤くなるのにも日の長さが関係しているのです。もう少し言えば、日が短くならないとポインセチアは赤くならないのです。

では、どうしたら赤くできるの?

 「冬になって日が短くなっても赤くならなかった」という人は、育てている環境をよく思い浮かべてみてください。普通に家の中で育てていませんか? もちろん、家の中で育てるのが悪いということではありません。家の中で育てていると、ポインセチアにも蛍光灯の光が当たります。太陽光でなくても、こうした蛍光灯の光も植物は「日の長さ」として感知してしまうのです。
 ここまでくれば、ポインセチア赤くするコツは明白でしょう。さすがに蛍光灯なしで暮らすのは難しいので、蛍光灯はつけるけれども、ポインセチアに段ボール箱などを被せて暗くしてやればよいのです(「短日処理」)。秋口から毎日13~15時間ほど暗くしてやれば、12月頃にはきれいに色づくはずです。夕方から段ボールを被せ、朝起きたら段ボールを外してやればよいでしょう。ただ注意して欲しいのは、楽だからといってずっと段ポールを被せっぱなしにしてしまうと、さすがにポインセチアも植物ですから、光合成ができずに元気がなくなってしまいます。愛情を持って、毎日根気よく短日処理を続けてあげてください。

最後に

 今年初めてポインセチアを買ってきた人も、過去にポインセチアが赤くならずに捨ててしまった苦い記憶がある人も、とにかく今お家でポインセチアと暮らしている人は、ぜひ今回の記事を参考にして、来年もポインセチアを真っ赤にしてあげてください。素敵なポインセチアに育ってくれることを祈っています。

引用文献など

  • 株式会社 日比谷花壇 ホームページ
  • 赤だけでなく、白、ピンク、黄色、斑(ふ)入り、などの品種もあります。
  • 正確には、日の長さではなく連続した暗期の長さが影響します。また、「日の長さ」に関係なく花を咲かせる植物もあります。
高橋秀典(植物生理学研究室)

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