理学部生物学科

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見たことありますか? 豚の饅頭の種

はじめに

 饅頭の種? そもそも豚の饅頭って何?「豚まん」のこと?・・・当たり前ですが、饅頭に種はできません。また、豚の饅頭と言っても、大阪名物として有名な「豚まん」ではありません。今回皆様にお届けするのは、シクラメンの話です。
 シクラメンといえば、冬の花。クリスマスシーズンに街角の花屋さんで見かけることが多いかと思います(図1)。それが豚や饅頭と何の関係があるのでしょうか。また、冬の花をなぜ夏に向かっているこの時期の話題に?と思われる方も多いかと思いますが、まあそう言わず、しばらくお付き合いください。
図1

豚の饅頭

 冬のリビングを彩っていたシクラメン。どの地方で育てるかにもよりますが、筆者の住んでいる関東ですと6月頃には花も終わり、夏前には葉も黄色くなって枯れてしまいます。(注:葉が残ったまま夏越しする場合もあります。)この頃になると、それまでは葉に隠れていた塊茎(球根の一種)が姿を現すようになります(図2)。初めて目にする人は、「シクラメンって塊茎から生えていたんだ。」となることでしょう。
 この塊茎を豚が食べてしまうようで、英語ではシクラメンのことを“sow bread”(雌豚のパン)とも呼びます。これを日本語訳する時に、「豚の饅頭」となったようです。ちなみに、花の部分は花弁(花びら)が反り返ってちょうど篝(かがり)火のように見えることから、シクラメンには「カガリビバナ」という別の和名もあります。
図2

シクラメンの種

 さて、塊茎で生きているシクラメンですが、じつは種をつけることもあります(図3)。花弁が落ちた、あるいは落ちなくても黄ばんできた後、花柄(花を支えている柄の部分)もしおれてきた場合には諦めざるを得ませんが、花柄が元気なままである場合は、種が採れる確率が高いです。さらに日数が経過して花柄がカールしてきたら、これは種が採れる前兆です。全ての品種で受精後の花柄が螺旋状に巻くわけではありませんが、ギリシア語で円を表す“Kuklos”が、シクラメンの属名“Cyclamen”の由来となっています。筆者の家でも何回か種が採れていますが、5、6月に採れることが多いです。そのため、冬の花であるシクラメンの話を、ちょうど種が採れるこの時期に取り上げたわけです。
図3

シクラメンの種まき

 シクラメンの種は茶色~こげ茶色で、米粒より小さめのいびつな形をしています(図4)。多くの野生植物の種子が発芽に光を必要とする光発芽種子である1)のに対し、シクラメンの種子は光によって発芽が抑制される暗発芽種子です。種まきをしたら、発芽するまで覆いをして暗くしてあげましょう。また、種まきをしてから芽が出てくるまでに通常1~2ヶ月かかりますので、途中で失敗したと勘違いせず、干からびないように時々水やりをして気長に待ちましょう。
図4

双子葉植物なのに子葉が1枚?

 シクラメンは分類学上、サクラソウ科シクラメン属に属する双子葉植物です。双子葉植物だから芽生え(実生;みしょう)の子葉は2枚・・・と思いきや、じつは1枚なのです(図5)。双子葉植物は子葉が2枚の植物、と思っている人がいるかもしれませんが、双子葉植物の中にはシクラメン同様、子葉が1枚の植物もあります。ヤブレガサ、セツブンソウ、ニリンソウ、コマクサなどがその例です。
図5

最後に

 運よく種が採れて発芽させることができたとしても、そこにつく花は必ずしも親と同じになるとは限りません。どのような花がつくかは、実際に咲くまでわかりません。せっかく気に入って買った株なのに、それと同じ花にならないなんてつまらない・・・と思うかもしれませんが、考えようによってはどのような花がつくかワクワクしませんか? 筆者もそのタイプで、これが自分で種を採って育てる楽しみでもあります。
 ある雑誌には、「春の終わりまで長く咲かせることができれば60点、無事に夏越しして秋に植え替えまでできれば80点、2年目の花を咲かせられれば100点」とありました2)。以下は筆者の勝手な追記ですが、「さらに種が採れたら120点、種から花を咲かせることができたら200点!」ということで、皆さんも種が採れたら、種から育てることにチャレンジしてみませんか?

引用文献

  1. 東京化学同人 生物学辞典
  2. NHKテキスト 趣味の園芸2016年12月号、p21

植物生理学研究室 高橋秀典

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