理学部生物学科

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血液が固まるということ

 ヒトの血液は流動性を保って血管内を循環し、組織に栄養や酸素を運搬します。このことは生命の維持にたいへん重要なことです。血液が外傷などにより多量に出血すると生命にかかわる危険な状態になります。この出血を防ぐために、生体には血を止める機構(止血機構)が備わっています。今回はこの止血機構について紹介します。この止血機構には大きく分けて2種類があります。一つは血小板が主役となるもの、もう一つは血しょうのなかに止血に関わる複数の物質(血液凝固因子)があり、これらの血液凝固因子が主役となるものです。

血小板が主役の止血

 血液は血管の中を通って体内を循環していますが、流れている血管の中では血小板は赤血球や白血球に比較して血管の中央ではなく、血管内皮細胞の傍を流れています。このことは血小板にとって都合のいいことです。ケガ等で血管が傷ついたときに、傷ついた血管の傍にある血小板はすぐに対応できるからです。血管が傷ついて血管内皮細胞がはがれると、その下に存在するコラーゲン線維と血小板は結合(粘着)します。この結合はフォン・ウィルブランド因子というタンパク質を介して、コラーゲン線維と血小板が結合することとなります。すると血小板は活性化され、円盤状から蛇足を出した形に変わります。活性化された血小板は細胞質から他の血小板を集める物質を放出して多くの血小板を集め、血小板同士が結合(凝集)して、傷口をふさぎます。このことを一次止血といいます。

血液凝固因子により止血

 血液凝固因子は複数のタンパク質やカルシウムがあり、皆さんが知っているプロトロンビンやフィブリノーゲンも含まれています。これらの血液凝固因子がつぎつぎに活性され、最終的にフィブリノーゲンがフィブリンに転換されて血液はゲル化します。このフィブリンは電子顕微鏡で観察すると網目(ネット)状になっています。このネットで血小板やその他の細胞をからめて傷口をふさぎます。これが二次止血です。この血液凝固因子により止血の反応が始まる方法には2種類があります。一つは血管が損傷すると、その損傷部に存在する組織因子(TF)と血液凝固因子のVII因子が複合体を形成することにより始まる外因系凝固反応と、血管が損傷するとコラーゲン線維が露呈しますが、このコラーゲン線維に血液凝固因子の第XII因子が接触することにより、始まる内因系凝固反応があります。これら2つの反応が行われて、最終的にフィブリンを形成して、血液のゲル化が行われます。

血管内で血液が凝固する?

  これまで説明してきた止血は外傷を受けた時には血液の流出を防ぐ重要な反応ですが、時々血管内で血液が凝固してしまうことがあります。血管の内側を覆っている血管内皮細胞には血液が凝固することを抑制する物質が多く存在し、血液が凝固することを妨げています。ですから、血液は血管内で流動性を保って、流れているうちは凝固しずらいです。しかし、血液が停滞してしまった時には、血液は血管内で凝固して血管を詰まれせてしまうことがあります。すなわち、心臓はポンプの作用により血液を押し出して体内を循環させています。この心臓のポンプの作用を助けているのが筋肉です。筋肉は収縮したり、弛緩したりすることにより、静脈血の流れを促進して血液を心臓に戻す手助けをしています。ですから、長い時間、筋肉を動かさない状況では静脈の血液の循環が悪くなり、血液が固まりやすくなります。

エコノミークラス症候群

 この疾患は飛行機(特に、エコノミークラス)で長い時間、同じの姿勢で座っていると、足の静脈の血液が心臓に戻りづらくなり、血液が足に停滞しやすくなります。そして足の静脈に血栓(深部静脈血栓)ができてしまいます。その後、飛行機が目的地に到着すると、急に体を動かすために静脈にできた血栓が血管壁から離れて血液中を流れ出します。この流れている血栓は、例えば肺に至る血管が細くなったところにつまってしまいます(肺塞栓症)。その結果、最悪な場合には死亡する場合もあります。しかし、名前がエコノミークラス症候群といっても、必ずしもエコノミークラスに乗った人だけがなるのではないです。エコノミークラスの座席が比較的狭いことはありますが、ビジネスクラスに乗った人でも、足の筋肉を動かさない状態を長く続けていると血栓が形成しやすくなります。問題は飛行機に乗ることではなく、足の筋肉をあまり使わないことが原因です。ですから、飛行機だけでなく、震災等の被災者が狭い避難所や車の中での長期の避難生活でも深部静脈血栓症は起こりやすいです。また水分を十分に取れないことも要因となります。
 受験生の皆さんも、長い時間椅子に座って勉強すると思いますが、時々休憩をして軽い運動をするといいと思います。

血液生物学研究室:丹羽和紀

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