理学部生物学科

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♪そっと覗いてみてごらん

生物屋さんは覗くのがお好き?

 えっ? 覗き?? 迷惑行為??・・・いえいえ、そうではありません。「のぞき」と言っても障子に穴をあけて向こう側を「覗く」悪戯のようなものから、碁の世界の「ノゾキ」まで、多岐にわたります。小見出しの「のぞき」はもちろん迷惑行為でも碁でもなく、レンズを覗く行為のことです。統計をとったことがないので正確なところはわかりませんが、なんとなく、生物屋さんはカメラ好きの人が多いような気がします。堤中納言物語の「虫愛づる(めづる)姫君」ではありませんが、筆者の研究室にも虫を見つけると喜んで携帯で撮影していた女子学生がいました。生物学科の教員の中にも、カメラ好きは多いです。勝手な想像ですが、生物屋さんは顕微鏡を覗くことが多いため、レンズを通して世界を眺めるのが好きなのかもしれません。

手軽にミクロな世界を覗くには?

 ミクロな世界を覗きたいという願望は昔から人々の中にあったようで、17世紀になると顕微鏡が登場します。この顕微鏡、確かにミクロな世界を覗くにはもってこいですが、デジカメと違ってその辺の店で売っていませんし、なにより高価です。また、幸い購入できたとしても、野外では取り回しがよくありません。最近のコンパクトデジカメはなかなか優れたマクロ撮影ができるようですが、もっとミクロな世界を覗きたい場合はどうしたらよいでしょう?

一眼カメラのアクセサリー達

 ここで紹介したいのが、一眼カメラを使う方法です。「え?マクロレンズなら知ってるよ。」という声も出てきそうですが、マクロレンズは35mm判換算で通常は等倍撮影が限界です。某社からは5倍までの拡大撮影が可能なレンズが販売されていますが、定価は十数万円と高価ですし、マクロ撮影以外に使い回しがききません。また、他社からはこのようなレンズは販売されていません。手持ちのレンズ資産を生かしつつ、なるべく安価にすませる方法はないか、というと、実はそのような美味しい方法があるのです。一眼カメラにはアクセサリーが豊富にありますので、それらを使うのです。以下、代表的なものを4つ紹介しましょう。

クローズアップフィルター

 名前の通り、クローズアップ撮影するためのフィルターです(図1)。通常のレンズ保護フィルター同様に、レンズ先端部のフィルター枠にねじ込むだけですので、4つの中で最も手軽です。ただし、マクロレンズへの装着を目的としたものではなく、焦点距離50 mm前後の(非マクロ)標準レンズに装着して、簡易マクロレンズとして使うのが主たる目的と考えた方がよいでしょう。
クローズアップフィルター
図1 クローズアップフィルター。これをレンズのフィルター枠に装着して使う。

エクステンションチューブ(中間リング/接写リング)

 一眼カメラの最大の特徴は、レンズを交換できることです。「エクステンションチューブ」(図2)は、別名「中間リング」と呼ばれるように、カメラとレンズの間に挟んで使います。単なる筒でレンズも何も入っていませんが、これを挟むだけで嬉しいことに撮影倍率が上がるのです。様々な長さの筒を単独、もしくは複数個組み合わせて使うことで、撮影倍率を変更します。挿入する筒が長いほど高倍率になります。
エクステンションチューブ(中間リング/接写リング)
図2 エクステンションチューブ。これをカメラとレンズの間に挟んで使う。

リバースリング

 これは前述の2つと違い、ちょっとトリッキーです。通常はどのレンズを装着する際でも、必ずレンズの「お尻(マウント側)」がカメラと接するように装着し、レンズキャップをつける「顔」側が撮影対象物側を向きます。これを逆(=リバース)向きに装着するためのものが「リバースリング」(図3)です。リングの片側がレンズの「お尻」と同じくカメラにねじ込める構造で、反対側にはレンズのフィルター枠にねじ込めるネジ山が彫られています。ただし、どのレンズをリバース接続しても拡大撮影できる訳ではありません。使うレンズは広角レンズである必要があります。そして、焦点距離が短ければ短いほど(広角であるほど)倍率が上がります。 では、なぜ広角レンズをリバース接続すると拡大撮影ができるのでしょうか。広角レンズを通常の向きで装着した場合、広角(ワイド)な撮影対象(例えば風景)の像はレンズを通ってギュッと縮小され、僅か数cm2の撮影素子上に結像します。このような光学系のレンズをリバース接続すると、今度はレンズの「お尻」側から光が進んでくるので、「お尻」側の微小な対象物がレンズを通って拡大されて撮影素子に結像します。通常の向きにレンズを接続した場合、撮影素子側から光を逆方向にたどっていくと、撮影素子上に結像している小さな風景像が拡大されて実物大の風景となりますよね。それと同じです。 リバースリングとレンズがかみ合う部分はフィルター枠の部分だけです。従って、カメラとレンズのメーカーが同じである必要はありません。また、リバースリングとレンズのフィルター径が一致しなくても、ステップアップ/ステップダウンリングを介して径を変換してやれば、接続できます。
リバースリング
図3 リバースリング。左がカメラと接する側、右がレンズと接する側の写真。

ベローズ

 最後にご紹介するのが「ベローズ」(図4)で、片側にカメラ、反対側にレンズを装着します。カメラ/レンズ間の距離をかせいで倍率を上げるという点では、前述のエクステンションチューブと同じです。しかし、エクステンションチューブはそれぞれ固有の長さでしか距離を調節できませんが、ベローズは蛇腹部分を伸縮させることで、距離を任意に調節できます。従って、倍率も任意に設定できます。レンズの装着方向は通常の向きでも構いませんが、リバース接続にする方が解像度が優れます(図5)。
ベローズ_01
図4 ベローズ 。写真では左奥にカメラを、右手前にレンズを装着する。
ベローズ_02
図5 「諭吉さん」の目。左がAPS-Cサイズのカメラに等倍マクロレンズをつけ、最大近接撮影(1.5倍)したもの。右が焦点距離20 mmの広角レンズを同じカメラにリバース接続し、ベローズを10 cm繰り出して撮影したもの。いずれも写真にあるのが撮影された全範囲で、縦横ともに約1/11に縮小して表示してある。リバース・ベローズ撮影では、インクの盛り上がりすら観察できる。

気をつけてほしいこと

(1)ベローズは販売中止になっているメーカーが多いですし、リバースリングも今後どうなるかわかりません。新品での購入を考えている人は、早めに入手しておいた方がよいでしょう。

(2)拡大倍率があがれば上がるほど、撮影は難しくなります。ピントの合う奥ゆきが狭く(被写界深度が浅く)なり、かつ、視野自体が暗くなるためです。また、普段の撮影では問題にならないような些細な振動でも拾って、ピンぼけの原因となります。従って、可能であればライブビュー機能をもったカメラできっちりとピントを合わせ、レリースやタイマー機能(とミラーアップ機能があるとなおよい)を使って撮影時の振動を防ぐと、少しでもよい写真が撮れると思います。そう、「♪そっと覗いてみてごらん」、なのです。もちろん、三脚は必須です。

(3)最近のレンズは絞り環がないものが多いですが、リバース撮影でも、ベローズ撮影でも、使用するレンズは絞り環がついているものがよいです。絞り環がないレンズをリバース、もしくはベローズ撮影に使うと、絞りが最大もしくは最小固定になってしまい、使い勝手が非常に悪くなります。ただし、絞り環付きのマウントアダプタも出ていますので、これを利用すれば絞り環なしのレンズでも任意の絞りで撮影できます。そのかわり、リバース撮影時にはアダプタ分だけ撮影対象物との距離が短くなりますので、広角レンズの度合いによってはピントが合わなくなる可能性もあります。

もっと気をつけてほしいこと

 筆者が好きなHPの1つ、Red Book Nikkor に、「見なくていいものを見ないで済むという幸せもあるが、見なくてはいけないものを見ないで済ませる不幸もある。」という言葉があります。どうでしょう? 名言だと思いませんか? このあと私が続けるとしたら「ただし、見なくてはいけないものを見るがために、沼にはまる不幸もある(笑)。」でしょうか。レンズ沼とアダプタ沼にはくれぐれも用心した上で、ミクロの世界を「♪そっと覗いてみてごらん」。意外なまでに美しい世界が、そこには待っています。

植物生理学研究室
高橋秀典

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