「気候温暖化と高山生態系」 【2008年9月号】
近年、人間活動による大気中のCO2濃度増加のために地球規模の温暖化が進行し、その影響があいついで報告されている。例えば氷河の後退、北極海の海氷の大規模な融解、南の地方に生息する昆虫の北進、北海道で米の生育が良好になってきたことなど多数の事例がある。
日本では、北アルプスなどの高い山々の標高約2500m以上は、夏でも雪が残る高山帯と呼ばれる植生となっている。そこでは森林は成立できないが、ハイマツ群落が広がり、ライチョウが生息する美しい生態系が形成されている(写真1)。夏にはお花畑が満開になり、多くの登山者の心をひきつけている(写真2)。
日本では、北アルプスなどの高い山々の標高約2500m以上は、夏でも雪が残る高山帯と呼ばれる植生となっている。そこでは森林は成立できないが、ハイマツ群落が広がり、ライチョウが生息する美しい生態系が形成されている(写真1)。夏にはお花畑が満開になり、多くの登山者の心をひきつけている(写真2)。
ライチョウは現在でも個体数が減少しているといわれ、高山帯へ多くの登山者が入ることによる病原菌の影響なども心配されている。ライチョウは高緯度地方の厳しい冬にも耐えることができるような体の特徴をもっている。羽毛は厚く、足にも密生した毛が生えており体温保持の能力が優れている。これは越冬するには適応的な特徴であるが、逆に夏の暑さには弱い。実際に高山帯でライチョウの1日の行動を追ってみると、朝の涼しい時間にはエサをついばんでいるが、日中に日差しが強くなって気温が上がると、あえいで口から熱を逃そうとする行動をとる。さらに暑くなるとハイマツなどの群落の中に隠れてしまう(写真3)。
さらに温暖化が進んで高山帯の気温が上昇すれば、ライチョウの生息自体が難しくなると懸念される。このように高山帯の生物たちは危機的な状況におかれていることを知って、私たちは氷河時代の生き残りの生態系を守っていく努力をしなければならない。
(植物生態学研究室 丸田恵美子)