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プレスリリース 発行No.1629 令和8年7月28日

ピロロキノリンキノン(PQQ)とその誘導体イミダゾピロロキノリン(IPQ)の
アンチエイジング作用を発見
~ 健康寿命延伸、見た目の老化速度低下、筋機能回復、脂肪蓄積低下 ~

 東邦大学の大寺恵子助教、髙橋良哉名誉教授、三菱ガス化学株式会社の研究グループは、ピロロキノリンキノン(以下、PQQ)(注1、図1左)とその誘導体であるイミダゾピロロキノリン(以下、IPQ)(注2、図1右)が、若年から中年期にかけての死亡リスクを低下させたこと、および中年期にかけての見た目の老化速度や筋機能の低下速度を減速させたことを、マウスを用いて初めて明らかにしました(図2、実験1)。また、PQQとIPQは、加齢に伴い衰えた中年マウスの筋機能を改善すること、さらにIPQは内臓脂肪、皮下脂肪を減少させ、脂肪肝の発症を抑制することを発見しました(図2、実験2)。
 PQQおよびIPQの適切な摂取が高齢化社会における健康寿命延伸につながることが期待されます。

 本研究成果は「Food & Function」誌に2026年5月11日にオンライン先行公開、7月20日に本公開されるとともに、掲載号(17巻14号)の表紙カバーイラストに選出されました(図3)。

発表者名

大寺 恵子(東邦大学薬学部生化学教室 助教)
田中 ゆか(東邦大学薬学部 非常勤講師)
池本 一人(三菱ガス化学株式会社 研究統括部新潟研究所 主席研究員)
玉腰 優典(三菱ガス化学株式会社 グリーン・エネルギー&ケミカル事業部門 ライフサイエンス部 主査)
髙橋 良哉(東邦大学名誉教授、研究当時:東邦大学薬学部生化学教室 教授)

発表のポイント

  • PQQ摂取とIPQ摂取は、中年期の死亡リスクを軽減し、「見た目の老化」を遅延させることを初めて明らかにしました。
  • PQQ摂取とIPQ摂取は、加齢に伴う神経筋機能の低下を抑制し、さらに加齢で衰えた神経筋機能を改善します。
  • PQQやIPQの摂取は、中高齢期の虚弱(フレイル)を抑え、生活の質(QOL)を高め、健康寿命延伸に寄与することが期待されます。

発表概要

 PQQとその誘導体のIPQは、細胞増殖促進、神経保護、ミトコンドリア新生促進などの様々な生理作用を示すビタミン様化合物ですが、哺乳類の「寿命」や「老化」に対する影響は知られていません。東邦大学の研究グループは、老化促進モデルマウス(SAM)(注3)を用いて、PQQとIPQの生涯にわたる摂取(図2、実験1)と中年期からの摂取(図2、実験2)が様々な老性変化に与える影響を調べました。

 【実験1:生涯摂取】では、PQQ、IPQは、中年期において死亡率を低下させ、見た目の老化(被毛老化)の進行を抑え、さらに、加齢に伴う筋機能低下を抑制することを見出しました。

 【実験2:中年期摂取】では、ヒトの約50歳に相当する中年マウスにPQQとIPQを摂取させた結果、加齢で衰えた筋機能を高めることを見出し、IPQは中年マウスの皮下脂肪、内臓脂肪への脂肪蓄積を抑制し、肝臓への脂肪蓄積(脂肪肝)を抑制することを発見しました。PQQやIPQがヒトの高齢期の生活の質(QOL)を高め、健康寿命を延ばすことが期待されます。

発表内容

 研究グループは、機能性表示食品対応の食品素材であるPQQ(BioPQQ®、三菱ガス化学株式会社)およびその誘導体のIPQの抗老化作用について、老化促進モデルマウス(SAM)P8系統を用い、以下の手順で調べました。

【実験1:生涯摂取】
 雄の老化促進モデルマウス(SAM)のP8系統にPQQとIPQがそれぞれ0.02%(w/w)となるように飼料(AIN-93M)に混合し、離乳後から生涯にわたり給餌しました。

1-1 寿命に与える影響
 成熟期以降の死亡開始は、コントロール群で6.1ヶ月齢なのに対し、PQQ群とIPQ群では、それぞれ9.1ヶ月齢と10.6ヶ月齢と遅延が認められました。また、75パーセンタイルの生存日数はPQQ群で73.2%、IPQ群で36.1%と、それぞれ統計学的に有意に延伸していました。これらの結果は、PQQおよびIPQの摂取、特にPQQの摂取により、中年期の死亡率が低下することを示しています(図4)。

1-2 見た目の老化速度に与える影響
 加齢に伴うマウスの見た目(被毛)の変化を、光沢、粗さ、脱毛、および皮膚潰瘍について、それぞれ5段階(グレード0:変化なし、グレード4:最も重度の変化)で評価し、すべてのスコアの合計を見た目の老化度としました。
 その結果、若齢から中年期にかけてのマウスの見た目(被毛)は、全群において加齢とともに徐々に悪化し、特に、光沢と粗さは顕著な変化を示す中で、PQQ群とIPQ群では、見た目の老化度スコアの上昇がコントロール群よりも有意に遅延していました(図5)。

1-3 筋機能に与える影響
 筋機能は、四肢懸垂試験、二肢懸垂試験、および四肢握力試験により定期的に評価しました。PQQ群の四肢懸垂試験および二肢懸垂試験の成績は、生後3ヶ月時点で、すでにコントロール群よりも高く、その後、コントロール群とほぼ同じ速度で加齢とともに低下しました。IPQ群で、生後3ヶ月時点ではコントロール群と成績に大きな差はありませんでしたが、加齢に伴う低下速度は緩やかでした。四肢握力試験では、3群すべてにおいて加齢に伴い成績が低下しましたが、群間差は認められませんでした(図6)。
【実験2:中年期摂取】
 中年(ヒト50歳相当)の7.6ヶ月齢のSAMP8マウスに、PQQ とIPQがそれぞれ0.02%(w/w)となるように飼料(AIN-93M)に混合し、16週間給餌しました。

2-1 加齢で衰えた筋機能に与える影響
 若齢期より筋機能が約30%低下した中年マウスの四肢懸垂試験および二肢懸垂試験による筋機能成績は、PQQまたはIPQの6週間の摂取により、若齢期と同程度まで回復しました(図7)。しかし、PQQとIPQは、各種の筋肉(大腿四頭筋、腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋、前脛骨筋)の重量と質(速筋型と遅筋型ミオシン重鎖比)、さらに、筋ミトコンドリア量には影響しませんでした。
 懸垂試験は、筋力、協調性、持久力を総合的に評価するものであり、げっ歯類の神経系と筋肉の協調的な活動を示す神経筋機能の評価に有用です。これらの結果は、PQQとIPQが加齢で衰えた「神経筋機能の改善」に有効である可能性を示唆しています。

2-2 脂肪組織に与える影響
 皮下脂肪および内臓脂肪(腸管膜脂肪、精巣上体周囲脂肪、後腹膜脂肪など)の平均重量は、PQQ群ではコントロール群よりもわずかに高く、逆にIPQ群では低い傾向が見られました。脂肪細胞サイズを皮下脂肪と精巣上体周囲脂肪について分析したところ、IPQ群で小型細胞の割合が高いことが観察されました(図8、上段)。

2-3 肝臓の脂肪滴蓄積(脂肪肝)に与える影響
 肝臓の組織切片を用いて脂肪滴量の分析を行いました。脂肪滴量は、IPQ群で有意に減少していました(図8、下段)。脂肪滴の分解にかかわるミトコンドリア数、β酸化活性には影響が認められませんでした。


 PQQの寿命や老化に対する長期介入実験は、これまでは線虫を用いた実験のみでしたが、本研究で、PQQの寿命延長効果がヒトと同じ哺乳類であるマウスにおいて明らかになったことは極めて重要です。
 
 PQQ(BioPQQ®、三菱ガス化学株式会社)は、健康食品素材として、2008年に米国FDA(食品医薬品局)に新規健康食品素材NDIとして使用が認められ、国内外で多くの食品素材として使用されています。2018年に欧州食品安全機関EFSAではEU内で食品素材として流通を認められ、Novel Food(新規食品)の指定を受けています。本研究成果が、今後の臨床研究の実施につながることに期待が持たれます。

発表雑誌

雑誌名
「Food & Function」Vol. 17, No.14, 6343–6358(2026)
(オンライン先行公開:2026年5月11日、本公開:2026年7月20日)

論文タイトル
Pyrroloquinoline quinone and imidazopyrroloquinoline intake diminish mortality risk during midlife and improve muscular dysfunctions with age in mice

著者
Keiko Odera, Yuka Tanaka, Kazuto Ikemoto, Masanori Tamakoshi,Ryoya Takahashi

DOI番号
10.1039/D6FO00788K

論文URL
https://doi.org/10.1039/d6fo00788k

解説論文(日本語)
大寺恵子、田中ゆか、池本一人、玉腰優典、髙橋良哉
「ピロロキノリンキノン(PQQ)およびイミダゾピロロキノリン(IPQ)の抗老化作用(1)
- 成長、寿命、外観老化および筋機能に対する影響 -、
New Food Industry, Vol.68, No.8, 583-589, 2026.(8月1日発行予定)
(PDF版):https://nfi-llc.securesite.jp/nfi/2026-8/2026-8.pdf
(スマートフォン、iPhone、iPad等タブレット版):https://nfi-llc.securesite.jp/nfi/2026-8/2026-8.epub

大寺恵子、田中ゆか、池本一人、玉腰優典、髙橋良哉
「ピロロキノリンキノン(PQQ)およびイミダゾピロロキノリン(IPQ)の抗老化作用(2)
- 中年期の筋機能、脂肪蓄積に与える影響 - 、
New Food Industry, Vol.68, No.9, 2026, in press.(9月1日発行予定)

用語解説

(注1)ピロロキノリンキノン(PQQ)
PQQは、1979年にメタノール資化性細菌から発見された。ヒトはPQQを合成できないが、組織中にPQQが存在し、それらは食品からの摂取によるものと考えられている。
PQQが含まれている食品には、キウイフルーツ、パパイヤなどの果物、ピーマンやパセリなどの野菜、納豆や豆腐などがある。PQQは構造にキノンを有し、酸化還元作用を有する。さらに、ミトコンドリア新生促進作用、神経保護作用、抗炎症作用などの多様な作用を有する。
本研究で使用されたPQQ(BioPQQ®)は三菱ガス化学株式会社で製造された。
https://biopqq.jp/about/

(注2)イミダゾピロロキノリン(IPQ)
アミノ酸の一種であるグリシンとPQQから合成される化合物である。酸化還元作用はないが、PQQとほぼ同等の生理活性を示すことが知られている。IPQは三菱ガス化学株式会社新潟研究所で合成され提供された。

(注3)老化促進モデルマウス(SAM)
京都大学の竹田俊男氏らが開発した早期に老化兆候を示す老化研究モデルマウスである。SAMP8マウスは学習・記憶障害や筋肉減少症(サルコペニア)を呈することが知られている。SAMP8マウスの平均寿命は、通常のマウスの約半分の13ヶ月である。
https://www.samrc.jp/characteristics/

利益相反(COI)に関する開示

 東邦大学と三菱ガス化学株式会社は受託研究契約を締結しており、本研究は三菱ガス化学株式会社の研究資金提供によって実施されました。共著者の池本一人と玉腰優典は、三菱ガス化学株式会社に所属しています。

添付資料

ピロロキノリンキノン(PQQ)とイミダゾピロロキノリン(IPQ)の化学構造
図1. ピロロキノリンキノン(PQQ)とイミダゾピロロキノリン(IPQ)の化学構造
PQQは、キノン構造(破線赤丸)をもち、還元型はビタミンCより強い抗酸化能を有する。




PQQとIPQのアンチエイジング作用
図2.PQQとIPQのアンチエイジング作用



掲載号(17巻14号)の表紙カバー
図3. 掲載号(17巻14号)の表紙カバー
Food & Function Volume 17, Number 14, 20 July 2026.
URL:https://pubs.rsc.org/fo/article/17/14/6283/1280736/Front-cover

PQQとIPQが寿命に与える影響(生存曲線)
図4. PQQとIPQが寿命に与える影響(生存曲線)
PQQ群とIPQ群で75パーセンタイルの生存日数は、それぞれ73.2%、36.1%、統計学的に有意に延伸していた。
PQQとIPQがマウスの見た目(被毛)の老化速度に与える影響
図5. PQQとIPQがマウスの見た目(被毛)の老化速度に与える影響
PQQ群とIPQ群の見た目(被毛)の老化進行が緩やかであった。
同月齢との比較: * p < 0.05,(Dunnett‘s post-hoc test)、平均 ± SEM.
PQQとIPQが筋機能の加齢変化に与える影響(二肢懸垂試験)
図6. PQQとIPQが筋機能の加齢変化に与える影響(二肢懸垂試験)
PQQは、加齢に伴い二肢懸垂試験による筋機能成績の低下を相対的に高めた。
一方、IPQは、加齢に伴う筋機能低下速度を緩やかにした。平均 ± SEM.
中年期からのPQQおよびIPQ摂取が筋機能に与える影響
図7. 中年期からのPQQおよびIPQ摂取が筋機能に与える影響
PQQ摂取とIPQ摂取は、中年マウスの二肢懸垂試験成績(スコア)を若齢レベルあるいはそれ以上に回復させた。
摂取前との比較: #p < 0.05, ##p < 0.01(paired t-test).
同月齢との比較: * p < 0.05, ** p < 0.01(Dunnett‘s post-hoc test)、平均 ± SEM.
中年期からのPQQおよびIPQ摂取が皮下脂肪と肝臓への脂肪蓄積に与える影響
図8. 中年期からのPQQおよびIPQ摂取が皮下脂肪と肝臓への脂肪蓄積に与える影響
上段: 皮下脂肪細胞。IPQ群で脂肪細胞が顕著に小さくなっていた。写真の下の数値は、1mm2あたりの脂肪細胞数。
下段:肝臓の脂肪滴痕(白色の円形)。
IPQ群で脂肪滴痕の占める割合(%、写真の下の数値)が低下していた。
以上

お問い合わせ先

【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学薬学部生化学教室
助教 大寺 恵子
名誉教授 髙橋 良哉

〒274-8510 船橋市三山2-2-1
TEL: 047-472-1546
E-mail: k-odera[@]phar.toho-u.ac.jp(大寺)
    takahasi[@]phar.toho-u.ac.jp(髙橋)

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