プレスリリース 発行No.1626 令和8年7月13日
ジンチョウゲ科薬用植物フジモドキに含まれるダフナン型ジテルペノイドを解明
東邦大学薬学部生薬学教室の大月興春講師、李巍教授らの研究グループは、高速液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS)(注1)を用いた分析によりジンチョウゲ科薬用植物フジモドキ(Daphne genkwa)に多様な化学構造を有するダフナン型ジテルペノイド(注2)が含まれることを明らかにしました。ダフナン型ジテルペノイドは抗がんや抗HIV、鎮痛作用を有することが報告されており、今後フジモドキが新たな創薬植物資源となることが期待されます。
この研究成果は、2026年6月22日に学術論文誌「Journal of Natural Medicines」にて公開されました。
この研究成果は、2026年6月22日に学術論文誌「Journal of Natural Medicines」にて公開されました。
発表者名
大月 興春(東邦大学薬学部生薬学教室 講師)
張 米(研究当時:東邦大学薬学部生薬学教室 博士研究員)
廣瀬 翔(東邦大学薬学部 2025年度卒)
菊地 崇(東邦大学薬学部生薬学教室 准教授)
李 巍(東邦大学薬学部生薬学教室 教授)
張 米(研究当時:東邦大学薬学部生薬学教室 博士研究員)
廣瀬 翔(東邦大学薬学部 2025年度卒)
菊地 崇(東邦大学薬学部生薬学教室 准教授)
李 巍(東邦大学薬学部生薬学教室 教授)
発表のポイント
- ジンチョウゲ科薬用植物フジモドキの花についてLC-MSを用いた成分分析を行ったところ、これまでに植物からの単離が報告されていない9種の化合物を含む計37種のダフナン型ジテルペノイドを推定しました。
- MS/MSスペクトル(注3)における断片化パターンと保持時間の関係を詳細に解析することで、これまで質量分析だけでは識別が困難であった複雑な構造異性体を、高い信頼性で同定する新たな解析基準を確立しました。
- 今後ダフナン型ジテルペノイドの生物活性のさらなる解明により、フジモドキが新たな創薬植物資源となることが期待されます。
発表内容
ジンチョウゲ科植物は53属800種以上が寒帯や砂漠を除く全世界に広く分布しており、特徴的に含まれるダフナン型ジテルペノイドは、5/7/6-炭素縮合三環系構造に加え、高度に酸化された官能基を持つ複雑な化学構造を有しています。これらジテルペノイドは抗がん、抗HIV、鎮痛作用など多彩な生物活性を示すことから、天然物創薬において魅力的なターゲットとして注目されています。フジモドキ(Daphne genkwa Sieb. et Zucc)はジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑低木で、別名チョウジザクラ(丁字桜)とも呼ばれています。主に中国の福建、浙江、湖北、湖南、四川、山東、陜西などの地域に分布し、日本には自生せず、観賞用として栽培されています。フジモドキの乾燥させた花蕾は、中国伝統医学において「芫花(げんか)」として、体内の水分を追い出す作用があり、水腫やリンパ節炎、痔ろう、食中毒などを治すために薬用されてきました。また、芫花は「東大寺献物帳」のなかの一巻である「種々薬帳」に収載されており、奈良時代に奈良の正倉院に献納された薬物としても知られています。これまでの成分研究では、ジテルペノイド、クマリン、フラボノイド、リグナンおよびセスキテルペノイドの単離が報告されています。本研究はジンチョウゲ科植物由来の生物活性ジテルペノイドの探索研究の一環として、LC-MSを用いてフジモドキ花に含まれるジテルペノイド成分の解析を行いました。
本研究では東邦大学薬学部付属薬用植物園にて採取したフジモドキの花を使用し、メタノールを用いて成分を抽出しました。得られたメタノール抽出物は水と酢酸エチルで分配操作を行い、酢酸エチル可溶画分はさらにSep-Pak C18固相抽出カートリッジで前処理後、Q Exactive四重極-Orbitrapハイブリッド質量分析計を用いて分析しました。得られた質量分析データについて、当教室が開発した構造解析支援プログラム「CNPs-MFSA」を用いたダフナン型ジテルペノイド由来ピークの抽出および自動構造推定とMS/MSフラグメンテーションの解析による手動確認を行い、計37種のダフナン型ジテルペノイドを推定しました。同定したダフナン型ジテルペノイドのうち、9種はこれまでに植物からの単離が報告されていない化合物でした。さらに、フジモドキ花より単離した構造異性体関係にあるダフナン型ジテルペノイドの構造情報に基づき、マススペクトル、プロダクトイオンスペクトルおよび保持時間での違いを明らかにし、これまでLC-MS分析だけでは区別が難しかったダフナン型ジテルペノイドの構造異性体を高い信頼性で区別できる方法を明らかにしました。
今回の研究により、LC-MSを用いた植物の分析が、ダフナン型ジテルペノイドの迅速な構造推定に有用であることが示されました。今後ダフナン型ジテルペノイドの生物活性のさらなる解明により、フジモドキが新たな創薬植物資源となることが期待されます。
本研究では東邦大学薬学部付属薬用植物園にて採取したフジモドキの花を使用し、メタノールを用いて成分を抽出しました。得られたメタノール抽出物は水と酢酸エチルで分配操作を行い、酢酸エチル可溶画分はさらにSep-Pak C18固相抽出カートリッジで前処理後、Q Exactive四重極-Orbitrapハイブリッド質量分析計を用いて分析しました。得られた質量分析データについて、当教室が開発した構造解析支援プログラム「CNPs-MFSA」を用いたダフナン型ジテルペノイド由来ピークの抽出および自動構造推定とMS/MSフラグメンテーションの解析による手動確認を行い、計37種のダフナン型ジテルペノイドを推定しました。同定したダフナン型ジテルペノイドのうち、9種はこれまでに植物からの単離が報告されていない化合物でした。さらに、フジモドキ花より単離した構造異性体関係にあるダフナン型ジテルペノイドの構造情報に基づき、マススペクトル、プロダクトイオンスペクトルおよび保持時間での違いを明らかにし、これまでLC-MS分析だけでは区別が難しかったダフナン型ジテルペノイドの構造異性体を高い信頼性で区別できる方法を明らかにしました。
今回の研究により、LC-MSを用いた植物の分析が、ダフナン型ジテルペノイドの迅速な構造推定に有用であることが示されました。今後ダフナン型ジテルペノイドの生物活性のさらなる解明により、フジモドキが新たな創薬植物資源となることが期待されます。
発表雑誌
雑誌名
「Journal of Natural Medicines」(2026年6月22日)
論文タイトル
Liquid chromatography-mass spectrometry-based automated annotation program-assisted structural characterization of daphnane diterpenoids from Daphne genkwa
著者
Kouharu Otsuki, Mi Zhang, Kakeru Hirose, Takashi Kikuchi, Wei Li
DOI番号
10.1007/s11418-026-02056-z
論文URL
https://doi.org/10.1007/s11418-026-02056-z
「Journal of Natural Medicines」(2026年6月22日)
論文タイトル
Liquid chromatography-mass spectrometry-based automated annotation program-assisted structural characterization of daphnane diterpenoids from Daphne genkwa
著者
Kouharu Otsuki, Mi Zhang, Kakeru Hirose, Takashi Kikuchi, Wei Li
DOI番号
10.1007/s11418-026-02056-z
論文URL
https://doi.org/10.1007/s11418-026-02056-z
用語解説
(注1)高速液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS)
液体中の成分を分離する装置(高速液体クロマトグラフLC)と、成分の質量(重さ)を精密に測定する装置(質量分析計MS)をつなげた機器です。高感度かつ幅広い種類の化合物の分析に対応できるなどの利点から、近年植物成分の分析に広く活用されています。
(注2)ダフナン型ジテルペノイド
ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)を前駆体として生合成される炭素数20(4つのイソプレン単位)のイソプレノイドの一種です。ジテルペン(diterpene)が正式には炭化水素と定義されているため、ヘテロ原子を含む官能基を有するジテルペンをジテルペノイド(diterpenoid)と称します。このうち、「5員環・7員環・6員環」の3つの環が連結し、6員環部分にイソプロぺニル基が結合した炭素骨格を持つタイプがダフナン型です。
(注3)MS/MSスペクトル
質量分析において、特定のイオンを選択して分解し、その断片(フラグメントイオン)の質量を測定することで、分子構造に関する情報を得る分析データです。まず、1段階目の質量分析計で目的とするイオンを選択し、不活性ガスとの衝突によって分解(フラグメンテーション)を起こします。次に、生成したフラグメントイオンの質量を測定し、その分布パターンを解析することで、化合物の構造や結合様式を推定します。本研究で用いたQ Exactive四重極-Orbitrapハイブリッド質量分析計では、前段の四重極で選択したイオンを高エネルギー衝突解離(HCD)セルで分解し、生成したフラグメントを後段のOrbitrapで高分解能かつ高精度に検出しています。
液体中の成分を分離する装置(高速液体クロマトグラフLC)と、成分の質量(重さ)を精密に測定する装置(質量分析計MS)をつなげた機器です。高感度かつ幅広い種類の化合物の分析に対応できるなどの利点から、近年植物成分の分析に広く活用されています。
(注2)ダフナン型ジテルペノイド
ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)を前駆体として生合成される炭素数20(4つのイソプレン単位)のイソプレノイドの一種です。ジテルペン(diterpene)が正式には炭化水素と定義されているため、ヘテロ原子を含む官能基を有するジテルペンをジテルペノイド(diterpenoid)と称します。このうち、「5員環・7員環・6員環」の3つの環が連結し、6員環部分にイソプロぺニル基が結合した炭素骨格を持つタイプがダフナン型です。
(注3)MS/MSスペクトル
質量分析において、特定のイオンを選択して分解し、その断片(フラグメントイオン)の質量を測定することで、分子構造に関する情報を得る分析データです。まず、1段階目の質量分析計で目的とするイオンを選択し、不活性ガスとの衝突によって分解(フラグメンテーション)を起こします。次に、生成したフラグメントイオンの質量を測定し、その分布パターンを解析することで、化合物の構造や結合様式を推定します。本研究で用いたQ Exactive四重極-Orbitrapハイブリッド質量分析計では、前段の四重極で選択したイオンを高エネルギー衝突解離(HCD)セルで分解し、生成したフラグメントを後段のOrbitrapで高分解能かつ高精度に検出しています。
添付資料
以 上
お問い合わせ先
【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学薬学部生薬学教室
教授 李 巍
〒274-8510 船橋市三山2-2-1
TEL: 047-472-1161 FAX: 047-472-1404
E-mail: liwei[@]phar.toho-u.ac.jp
URL: www.lab.toho-u.ac.jp/phar/npcnm/
【本ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
〒143-8540 大田区大森西5-21-16
TEL: 03-5763-6583 FAX: 03-3768-0660
E-mail: press[@]toho-u.ac.jp
URL: www.toho-u.ac.jp
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