プレスリリース 発行No.1620 令和8年7月1日
東邦大学メディカルレポート
無心体双胎におけるレーザー焼灼術について
無心体双胎におけるレーザー焼灼術について
東邦大学医療センター大森病院 産婦人科(大田区大森西6-11-1、診療部長:中田雅彦教授)では、「総合周産期母子医療センター」として、母体・胎児集中治療管理室を含む産科病棟および新生児集中治療管理室を備え、母体・新生児搬送の常時受け入れ、母体の救命救急への対応、ハイリスク妊娠に対する医療、高度な新生児医療などを担うとともに、様々な知見の蓄積に努めています。
記
無心体双胎とは
無心体双胎(Twin-Reversed Arterial Perfusion sequence:TRAP sequence)(注1)は、一絨毛膜双胎(注2)において一方の双胎に機能的な心臓が存在せず、もう一方の健康な双胎(以下、ポンプ児)が両者に血液を供給する状態です。この疾患は一卵性双胎に特有の合併症であり、二絨毛膜双胎(注3)では原則として発生しません。
本疾患の発生頻度は一絨毛膜双胎の約1%、全妊婦の約1/35,000で、妊娠初期(10~14週)の超音波検査で一方の双胎に心臓活動が見られない場合や、四肢・頭部の欠損が疑われる場合に罹患が疑われ、カラードプラ法によって、通常は胎児から胎盤方向に流れる臍帯動脈血流がポンプ児から無心体方向へ逆行していることが確認されることで診断が確定します。
本疾患の発生頻度は一絨毛膜双胎の約1%、全妊婦の約1/35,000で、妊娠初期(10~14週)の超音波検査で一方の双胎に心臓活動が見られない場合や、四肢・頭部の欠損が疑われる場合に罹患が疑われ、カラードプラ法によって、通常は胎児から胎盤方向に流れる臍帯動脈血流がポンプ児から無心体方向へ逆行していることが確認されることで診断が確定します。
病態の進行
この疾患の中心は一絨毛膜胎盤上の動脈-動脈吻合(以下、AA吻合)で、以下の機序で病態が進行します(図)。
- ポンプ児の心臓がAA吻合を通じて無心体の臍帯動脈へ逆行性に血液を送り込む。
- この脱酸素化した血液は無心体の内腸骨動脈から末梢へ分配される。
- 酸素分圧の低い血液しか供給されないため、無心体では上半身・心臓の発育が障害される。
ポンプ児のリスク
ポンプ児は本疾患により大きな影響を受け、無心体が大きいほど容量負荷が増大し、以下の合併症リスクが高まります。
- 心臓が無心体にも血液を送り続けることによる慢性過負荷による高拍出性心不全
- 高拍出性心不全に伴い腎血流が過度に増加し、尿量が多くなることによる羊水過多
- 心不全の終末像である胎児水腫
- 羊水過多から誘発される早産
未治療の場合、高拍出性心不全によりポンプ児の死亡率は50〜75%に達します。
治療方針
治療の原則は無心体への血流を遮断しポンプ児の心負荷を軽減することです。
血流を遮断する方法と、治療に適した時期によって異なる治療方法があります。
報告では、従来妊娠16週ぐらいまで治療を待機する間に、約30%のポンプ児が胎児死亡となることが課題とされてきました。
血流を遮断する方法と、治療に適した時期によって異なる治療方法があります。
報告では、従来妊娠16週ぐらいまで治療を待機する間に、約30%のポンプ児が胎児死亡となることが課題とされてきました。
治療方針
① ラジオ波焼灼術(Radiofrequency Ablation:RFA)
日本の医療機関で従来から一般的に採用されてきた治療法
妊娠15~16週以降に行える治療法で、ポンプ児の生存率は82〜88%
② 胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(Fetoscopic Laser Photocoagulation:FLP)
妊娠16週以降に行える治療法で、ポンプ児の生存率は約90%
③ 超音波ガイド下無心体内レーザー焼灼術(Intrafetal Laser Ablation:IFL)
東邦大学医療センター大森病院で実施している治療法
妊娠初期(12週)から行える治療法で、ポンプ児の生存率は70〜90%超
※ 上記①②の生存率については妊娠15週までにポンプ児が胎児死亡した数値を除いたもの
日本の医療機関で従来から一般的に採用されてきた治療法
妊娠15~16週以降に行える治療法で、ポンプ児の生存率は82〜88%
② 胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(Fetoscopic Laser Photocoagulation:FLP)
妊娠16週以降に行える治療法で、ポンプ児の生存率は約90%
③ 超音波ガイド下無心体内レーザー焼灼術(Intrafetal Laser Ablation:IFL)
東邦大学医療センター大森病院で実施している治療法
妊娠初期(12週)から行える治療法で、ポンプ児の生存率は70〜90%超
※ 上記①②の生存率については妊娠15週までにポンプ児が胎児死亡した数値を除いたもの
超音波ガイド下無心体内レーザー焼灼術(IFL)治療概要
- 母体の腹壁に局所麻酔を行った後、超音波で胎児および無心体を確認
- 腹部に18Gもしくは19G (約0.9~1mm)の穿刺針を刺して無心体内に挿入
- 穿刺針内部にレーザーファイバーを挿入
- レーザー焼灼を実行
- 無心体への血流が遮断されたことを超音波で確認
- 穿刺針を抜いて終了
<IFLの特長>
- これまで妊娠15週以降にしか行えなかった治療に比べ、妊娠12週から可能です。
- 約1mmの細い針での穿刺のため、母体への侵襲度が低い治療法です。
- 従来の治療が可能な妊娠週数まで待機する間に胎児死亡するリスクを防ぐことができます。
<合併症と副作用> 希に破水、流産、胎児死亡などが起きることがあります。
用語解説
(注1)無心体双胎(Twin-Reversed Arterial Perfusion sequence:TRAP sequence)
一絨毛膜双胎において希にみられ、心臓が欠如するか、ほぼその機能を欠いている形態異常。
胎盤における動脈-動脈吻合(AA吻合)を介して、健常児の血液が逆行性に無心体に循環するため、Twin-Reversed Arterial Perfusion sequenceと称される。
(注2)一絨毛膜双胎
一卵性双胎の一つで、胎児は二人であるが一つの胎盤(絨毛膜の一部)を二人の胎児が共有するため、胎盤に二人の胎児の血流をつなぐ吻合血管が存在する。そのため、双胎間輸血症候群や無心体双胎など、一絨毛膜双胎特有の合併症を伴うことがある。
(注3)二絨毛膜双胎
一卵性の受精卵が受精後早期に分割し子宮内に着床した場合、あるいは二つの受精卵(二卵性)が子宮内に着床した場合の双胎をいう。胎盤は癒合することもあるが、一絨毛膜双胎と異なり、吻合血管は存在せず、それぞれの胎児は独立した胎児胎盤循環で成長する。
一絨毛膜双胎において希にみられ、心臓が欠如するか、ほぼその機能を欠いている形態異常。
胎盤における動脈-動脈吻合(AA吻合)を介して、健常児の血液が逆行性に無心体に循環するため、Twin-Reversed Arterial Perfusion sequenceと称される。
(注2)一絨毛膜双胎
一卵性双胎の一つで、胎児は二人であるが一つの胎盤(絨毛膜の一部)を二人の胎児が共有するため、胎盤に二人の胎児の血流をつなぐ吻合血管が存在する。そのため、双胎間輸血症候群や無心体双胎など、一絨毛膜双胎特有の合併症を伴うことがある。
(注3)二絨毛膜双胎
一卵性の受精卵が受精後早期に分割し子宮内に着床した場合、あるいは二つの受精卵(二卵性)が子宮内に着床した場合の双胎をいう。胎盤は癒合することもあるが、一絨毛膜双胎と異なり、吻合血管は存在せず、それぞれの胎児は独立した胎児胎盤循環で成長する。
以上
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