プレスリリース 発行No.1613 令和8年6月2日
ニホンウナギで新種の心臓ホルモン受容体遺伝子を発見!
~ 大昔の遺伝子倍増が生んだ「ホルモンと受容体」の巧みな役割分担と進化の原点を解明 ~
~ 大昔の遺伝子倍増が生んだ「ホルモンと受容体」の巧みな役割分担と進化の原点を解明 ~
東邦大学、東京大学、および宮崎大学の研究グループは、ニホンウナギにおいて、血圧や体液のバランスを保つ心臓ホルモン(ナトリウム利尿ペプチド(注1))の新しい受容体(注2)遺伝子「npr1a」を発見しました。さらに、魚類の祖先が大昔に経験した「第3回全ゲノム重複(注3)」によって2つに増えた受容体が、それぞれ異なる心臓ホルモンに応答し、ニホンウナギの体内で独自の役割分担(棲み分け)を持つように進化してきたことを明らかにしました。本研究は、脊椎動物が進化の過程で、「ホルモン—ホルモン受容体」の関係をどのように最適化させてきたのかを紐解く、重要な鍵となる成果です。
本研究成果は、2026年5月13日に国際学術誌「General and Comparative Endocrinology」に掲載されました。
本研究は、東邦大学理学部の沖西凌(研究当時、大学院生)、渡邊大起大学院生、和泉知輝(研究当時、大学院生)、塚田岳大教授、同医学部の恒岡洋右准教授、東京大学大気海洋研究所の黄國成助教、ならびに宮崎大学の井田隆徳教授らによる共同研究グループによって行われました。
本研究成果は、2026年5月13日に国際学術誌「General and Comparative Endocrinology」に掲載されました。
本研究は、東邦大学理学部の沖西凌(研究当時、大学院生)、渡邊大起大学院生、和泉知輝(研究当時、大学院生)、塚田岳大教授、同医学部の恒岡洋右准教授、東京大学大気海洋研究所の黄國成助教、ならびに宮崎大学の井田隆徳教授らによる共同研究グループによって行われました。
発表者名
沖西 凌(研究当時:東邦大学大学院理学研究科生物分子科学専攻 博士前期課程2年)
渡邊 大起(東邦大学大学院理学研究科生物分子科学専攻 博士前期課程2年)
和泉 知輝(研究当時:東邦大学大学院理学研究科生物分子科学専攻 博士前期課程2年)
塚田 岳大(東邦大学理学部生物分子科学科 教授)
恒岡 洋右(東邦大学医学部解剖学講座微細形態学分野 准教授)
黄 國成(東京大学大気海洋研究所 助教)
井田 隆徳(宮崎大学農学部獣医学部門獣医学領域 教授)
渡邊 大起(東邦大学大学院理学研究科生物分子科学専攻 博士前期課程2年)
和泉 知輝(研究当時:東邦大学大学院理学研究科生物分子科学専攻 博士前期課程2年)
塚田 岳大(東邦大学理学部生物分子科学科 教授)
恒岡 洋右(東邦大学医学部解剖学講座微細形態学分野 准教授)
黄 國成(東京大学大気海洋研究所 助教)
井田 隆徳(宮崎大学農学部獣医学部門獣医学領域 教授)
発表のポイント
- 第3回全ゲノム重複に由来する、新たな心臓ホルモン受容体遺伝子「npr1a」をニホンウナギで発見しました。
- 2つの受容体(Npr1aとNpr1b)が、異なるホルモンを感知して機能的に「役割分担」していることを証明しました。
- 脊椎動物の進化に伴う「ホルモン—ホルモン受容体」の変遷と、システムの最適化プロセスを解明しました。
発表概要
東邦大学などの研究グループは、ニホンウナギの体内で、血圧や水分のバランスを保つために欠かせない心臓ホルモン「ナトリウム利尿ペプチド」の新規受容体遺伝子「npr1a」を発見しました。そして、この発見をもとに、生き物の進化の過程でホルモンとホルモン受容体がどのように形を変え、機能を進化させてきたか、その一端を明らかにしました。
ヒトなどの哺乳類では、心臓から分泌される2種類のナトリウム利尿ペプチド(ANPとBNP)を、1種類の受容体(NPR1)だけでまとめて受け止めています。これに対して、魚類の祖先は遠い昔に、遺伝子のセットが丸ごと倍になるという全ゲノム重複を経験しています。今回の研究によって、ニホンウナギには第3回全ゲノム重複後の共進化(注4)によって生まれた2種類の受容体遺伝子(npr1aとnpr1b)が今も残っていることが分かりました。
研究グループがウナギ特有の心室性ナトリウム利尿ペプチド(VNP)に注目して詳しく調べたところ、従来知られていた受容体(Npr1b)は、3種類の心臓ホルモン(ANP、BNP、VNP)すべてに広く反応するのに対し、新しく見つかった受容体(Npr1a)は、このVNPだけに狙いを絞って反応するという、独自の進化を遂げていたことが判明しました。さらに、ウナギより後に進化したメダカなどの魚では、このVNPホルモン遺伝子自体が失われ、受容体の役割も変わっていることが分かりました(図1)。
今回の発見は、生き物が進化する過程で、ホルモンとホルモン受容体がどのようにペアを組み替え、生きるために不可欠な血圧と水分の調節をそれぞれの動物種で発展させてきたかを分かりやすく示す貴重な成果です。
ヒトなどの哺乳類では、心臓から分泌される2種類のナトリウム利尿ペプチド(ANPとBNP)を、1種類の受容体(NPR1)だけでまとめて受け止めています。これに対して、魚類の祖先は遠い昔に、遺伝子のセットが丸ごと倍になるという全ゲノム重複を経験しています。今回の研究によって、ニホンウナギには第3回全ゲノム重複後の共進化(注4)によって生まれた2種類の受容体遺伝子(npr1aとnpr1b)が今も残っていることが分かりました。
研究グループがウナギ特有の心室性ナトリウム利尿ペプチド(VNP)に注目して詳しく調べたところ、従来知られていた受容体(Npr1b)は、3種類の心臓ホルモン(ANP、BNP、VNP)すべてに広く反応するのに対し、新しく見つかった受容体(Npr1a)は、このVNPだけに狙いを絞って反応するという、独自の進化を遂げていたことが判明しました。さらに、ウナギより後に進化したメダカなどの魚では、このVNPホルモン遺伝子自体が失われ、受容体の役割も変わっていることが分かりました(図1)。
今回の発見は、生き物が進化する過程で、ホルモンとホルモン受容体がどのようにペアを組み替え、生きるために不可欠な血圧と水分の調節をそれぞれの動物種で発展させてきたかを分かりやすく示す貴重な成果です。
発表内容
大昔の遺伝子の倍増が生んだ2つの「受容体」
私たちヒトなどの哺乳類は、心臓から出るホルモンを1種類の「受容体」でキャッチしています。しかし、魚類の祖先は大昔に、遺伝子のセットが丸ごと2倍に増えるという劇的な進化(第3回全ゲノム重複)を経験しました。今回の研究で、ニホンウナギの遺伝子を詳しく調べたところ、この大昔のイベントとその後の共進化によって生まれた、これまで知られていなかった新しい受容体遺伝子「npr1a」を発見しました。これにより、ウナギには性質の異なる2つの鍵穴(Npr1aとNpr1b)が備わっていることが証明されました。
ホルモンと鍵穴の、巧みな「役割分担」
新しく見つかった受容体が体内でどう働いているかを実験で調べたところ、2つの鍵穴はホルモンに対する反応の仕方が全く異なっていました。これまでの鍵穴(Npr1b)は、心臓から出るホルモンなら何でも広く受け止めることができます。一方で、新発見の鍵穴(Npr1a)は、ウナギなどが持つ特別な心臓ホルモン「VNP」だけを狙い澄ましたように効率よくキャッチすることが分かりました。似たような鍵穴がただ2つあるのではなく、特定のメッセージを正確に受け取るために、見事な役割分担(棲み分け)をしていることが突き止められました。
魚の進化から見えてくる、ホルモンと受容体のつながり
今回の発見は、生き物が進化するにつれて、ホルモンとホルモン受容体がどのように共進化してきたかという仕組みを美しく描き出しています(図1)。進化の歴史が古いウナギは、複数のホルモンと2つの鍵穴をフルに活用して、川や海などの激しい環境の変化に対応しています。しかし、ウナギより後に現れたメダカなどの魚ではこのVNPホルモン遺伝子自体が失われ、ヒトに至ってはシステムがよりシンプルに整理されています。ウナギが持つ豊かなホルモンの仕組みは、生き物の体が持つコントロール機能の「原点」を教えてくれています。
私たちヒトなどの哺乳類は、心臓から出るホルモンを1種類の「受容体」でキャッチしています。しかし、魚類の祖先は大昔に、遺伝子のセットが丸ごと2倍に増えるという劇的な進化(第3回全ゲノム重複)を経験しました。今回の研究で、ニホンウナギの遺伝子を詳しく調べたところ、この大昔のイベントとその後の共進化によって生まれた、これまで知られていなかった新しい受容体遺伝子「npr1a」を発見しました。これにより、ウナギには性質の異なる2つの鍵穴(Npr1aとNpr1b)が備わっていることが証明されました。
ホルモンと鍵穴の、巧みな「役割分担」
新しく見つかった受容体が体内でどう働いているかを実験で調べたところ、2つの鍵穴はホルモンに対する反応の仕方が全く異なっていました。これまでの鍵穴(Npr1b)は、心臓から出るホルモンなら何でも広く受け止めることができます。一方で、新発見の鍵穴(Npr1a)は、ウナギなどが持つ特別な心臓ホルモン「VNP」だけを狙い澄ましたように効率よくキャッチすることが分かりました。似たような鍵穴がただ2つあるのではなく、特定のメッセージを正確に受け取るために、見事な役割分担(棲み分け)をしていることが突き止められました。
魚の進化から見えてくる、ホルモンと受容体のつながり
今回の発見は、生き物が進化するにつれて、ホルモンとホルモン受容体がどのように共進化してきたかという仕組みを美しく描き出しています(図1)。進化の歴史が古いウナギは、複数のホルモンと2つの鍵穴をフルに活用して、川や海などの激しい環境の変化に対応しています。しかし、ウナギより後に現れたメダカなどの魚ではこのVNPホルモン遺伝子自体が失われ、ヒトに至ってはシステムがよりシンプルに整理されています。ウナギが持つ豊かなホルモンの仕組みは、生き物の体が持つコントロール機能の「原点」を教えてくれています。
発表雑誌
雑誌名
「General and Comparative Endocrinology」(2026年5月13日)
論文タイトル
Functional divergence of NPR1 paralog in the Japanese eel: Identification and neuroanatomical characterization
著者
Ryo Okinishi, Taiki Watanabe, Takanori Ida, Marty Kwok-Shing Wong, Tomoki Izumi, Yousuke Tsuneoka, and Takehiro Tsukada
DOI番号
10.1016/j.ygcen.2026.114948
論文URL
https://doi.org/10.1016/j.ygcen.2026.114948
「General and Comparative Endocrinology」(2026年5月13日)
論文タイトル
Functional divergence of NPR1 paralog in the Japanese eel: Identification and neuroanatomical characterization
著者
Ryo Okinishi, Taiki Watanabe, Takanori Ida, Marty Kwok-Shing Wong, Tomoki Izumi, Yousuke Tsuneoka, and Takehiro Tsukada
DOI番号
10.1016/j.ygcen.2026.114948
論文URL
https://doi.org/10.1016/j.ygcen.2026.114948
用語解説
(注1)ナトリウム利尿ペプチド
主に心臓から分泌され、血管を広げて血圧を下げたり、尿量を増やして体内の余分な水分や塩分を排出させたりするホルモンの仲間です。
(注2)受容体
細胞の表面などにある、特定のホルモンや化学物質(メッセージ)を正確に受け取るための「鍵穴」のような分子です。
(注3)第3回全ゲノム重複
魚類の祖先が約3億年以上前に経験した、遺伝子の全セット(ゲノム)が丸ごと2倍に倍増する進化上の大イベントのことです。
(注4)共進化
2つ以上の異なる要素が、互いに影響を与え合いながら連動して進化していく現象のことです。
主に心臓から分泌され、血管を広げて血圧を下げたり、尿量を増やして体内の余分な水分や塩分を排出させたりするホルモンの仲間です。
(注2)受容体
細胞の表面などにある、特定のホルモンや化学物質(メッセージ)を正確に受け取るための「鍵穴」のような分子です。
(注3)第3回全ゲノム重複
魚類の祖先が約3億年以上前に経験した、遺伝子の全セット(ゲノム)が丸ごと2倍に倍増する進化上の大イベントのことです。
(注4)共進化
2つ以上の異なる要素が、互いに影響を与え合いながら連動して進化していく現象のことです。
添付資料
心臓から出るホルモン(ANP、BNP、VNP)と、それを受け止める受容体(鍵穴:Npr1a、Npr1b)の進化の歴史を表した模式図。
ニホンウナギ(左):大昔の遺伝子倍増によって生まれた2つの鍵穴を持っています。新発見の「Npr1a」は、魚類特有のホルモン「VNP」だけを狙い澄ましてキャッチするという、見事な「役割分担(機能の棲み分け)」を行っていることが初めて分かりました。
メダカ(中央):ウナギより後に現れた魚の仲間では、進化の過程でホルモン「VNP」自体が失われ、それに伴って鍵穴の仕組みも変化していきました。
ヒト(右):さらに進化した哺乳類ではシステムがシンプルに整理され、1つの鍵穴(NPR1)が2つのホルモン(ANPとBNP)をまとめて受け止める仕組みへと最適化されています。
1R, 2R, 3R:脊椎動物の進化で起こったとされる全ゲノム重複。
以上
お問い合わせ先
【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学理学部生物分子科学科
教授 塚田 岳大
〒274-8510 船橋市三山2-2-1
TEL: 047-472-1714
E-mail: takehirotsukada[@]sci.toho-u.ac.jp
URL: https://www.lab.toho-u.ac.jp/sci/biomol/tsukada/index.html
【本ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
〒143-8540 大田区大森西5-21-16
TEL: 03-5763-6583 FAX: 03-3768-0660
E-mail: press[@]toho-u.ac.jp
URL: www.toho-u.ac.jp
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