プレスリリース 発行No.1580 令和8年2月10日
数学における「ブロカール-ラマヌジャン問題」の多項式類似を完全解決
~ 問題が提起されてから150年目の成果 ~
~ 問題が提起されてから150年目の成果 ~
東邦大学理学部の武田渉講師は、未解決であるブロカール-ラマヌジャン問題の多項式類似を完全に解決しました。
この研究成果は、雑誌「Finite Fields and Their Applications」にて2025年9月30日にオンライン先行公開、2026年2月に本公開されました。
この研究成果は、雑誌「Finite Fields and Their Applications」にて2025年9月30日にオンライン先行公開、2026年2月に本公開されました。
発表者名
武田 渉(東邦大学理学部数学教室 講師)
発表のポイント
- 1876年にフランスの数学者アンリ・ブロカールによって提起された「ブロカール-ラマヌジャン問題」について、多項式類似(注1)を完全に解決しました。
- 一方で元の「ブロカール-ラマヌジャン問題」(注2)はまだ解けていないため、今回の問題の解決が元の問題を解く鍵になることが期待されます。
発表概要
ブロカール-ラマヌジャン問題とは、以下の方程式
の解をすべて求める問題です。簡単な計算で以下の3つの組が見つかります。
その一方で、他の組があるのか、ある場合はその組は有限個であるかどうかという問題については、ブロカールによって問題が提起されてから150年となる現在も、いまだに解決のめどが立っていません。
本研究では、ブロカール-ラマヌジャン問題の多項式類似について、すべての場合における解を特定しました。特に係数体の要素数(位数)が4以上の2のべき乗であるとき、またそのときに限り解が無限個存在することを示しました。また、多項式類似における階乗がある関係式を満たすことを示し、位数が奇数のとき、解が存在しにくいことを発見し、解を特定しました。元のブロカール-ラマヌジャン問題は未だ解決されていないため、その研究に貢献をすることが期待されます。
本研究では、ブロカール-ラマヌジャン問題の多項式類似について、すべての場合における解を特定しました。特に係数体の要素数(位数)が4以上の2のべき乗であるとき、またそのときに限り解が無限個存在することを示しました。また、多項式類似における階乗がある関係式を満たすことを示し、位数が奇数のとき、解が存在しにくいことを発見し、解を特定しました。元のブロカール-ラマヌジャン問題は未だ解決されていないため、その研究に貢献をすることが期待されます。
発表内容
整数解を求めるディオファントス方程式の研究は、古代ギリシャの数学者ディオファントスに始まり、数千年にわたって数学の重要なテーマの一つとして研究されてきました。フェルマーの最終定理に代表されるように、式の形は非常に単純であっても、その解の構造を完全に理解することは極めて困難です。また、統一的な解法がないため、その問題に合わせた研究手法が必要となっています。
ブロカール–ラマヌジャン問題もそのような問題の一つで、以下の方程式を考えます。
ブロカール–ラマヌジャン問題もそのような問題の一つで、以下の方程式を考えます。
平方数(注3)から1を引いた数が階乗(注4)になるような場合をすべて求めるという問いです。この問題は1876年にブロカールによって提起されて以来、150年近く未解決のままです。現在までに知られている解は以下の3つしかなく、それ以外の解が存在するかどうかは分かっていません。
一方で、整数の集合と多項式の集合は、構造的に多くの共通点を持つことが知られています。この類似性を利用して、整数での未解決問題を多項式の世界に移して研究することがあります。実際、ディオファントス方程式の有名な未解決問題であったフェルマーの最終定理については、多項式類似版の方が先に解決されており、元の問題とよく似た結論が得られています。
本研究では、ブロカール–ラマヌジャン問題についても同様に多項式類似を考察しました。その際、係数を有限体と呼ばれる有限個の要素からなる集合において考えます。有限体の要素数(位数)は素数のべき乗、つまり、2,4,8,16,…,3,9,27,…5,25,…,7,…といった整数に限られるものの、位数ごとに無限個の異なる問題を考える必要があります。また、階乗に対応する類似の概念としては、カーリッツ階乗と呼ばれる多項式版の階乗が用いられ、考える方程式は以下の形となります。
本研究では、ブロカール–ラマヌジャン問題についても同様に多項式類似を考察しました。その際、係数を有限体と呼ばれる有限個の要素からなる集合において考えます。有限体の要素数(位数)は素数のべき乗、つまり、2,4,8,16,…,3,9,27,…5,25,…,7,…といった整数に限られるものの、位数ごとに無限個の異なる問題を考える必要があります。また、階乗に対応する類似の概念としては、カーリッツ階乗と呼ばれる多項式版の階乗が用いられ、考える方程式は以下の形となります。
本研究の主な成果は、すべての有限体について、多項式におけるブロカール–ラマヌジャン問題の解の構造を明らかにした点にあります。具体的には、位数が4以上の2のべき乗の場合には解が無限個存在することを示し、さらにそれらをすべて具体的に構成しました。一方、それ以外の場合には、解は本質的に1つしか存在しないか、まったく存在しないことを証明しました。
証明の鍵となったのは、多項式では形式的な微分が可能であるという性質です。特に、カーリッツ階乗を微分すると、その元の構造に関する多くの情報が保持されることに着目しました。この性質により、1つの方程式であったにもかかわらず、もう1つの独立した方程式を得ることになり、方程式の解は連立方程式の解になるという非常に強い制約を受けることが分かります。その結果として有限体の位数が奇数の場合と偶数の場合で、問題の性質が本質的に異なることが明らかになりました。
奇数の場合には、この制約を満たす解は多くとも本質的に1つしか存在しないことが分かり、さらに詳しい解析によって、解が存在する場合と存在しない場合を完全に分類することができました。一方、偶数の場合にはこの制約がなくなり、特に位数が4以上の2のべき乗のときには解が無限個存在することが分かります。これは方程式が平方を含む形であることと、有限体の位数が偶数であることが重なった、非常に特殊な状況によるものです。実際、もし考えている問題が3乗であれば9以上の3のべき乗のときは解が無限個存在するといったことも証明することができます。
現在、ブロカール-ラマヌジャン問題の解は上記の3つのみであることが予想されています。今回の研究成果により、多項式類似の場合も特殊な状況を除くと0個、1個のいずれかということが明らかとなり、ブロカール-ラマヌジャン問題の予想が正しいことを多項式類似の立場から強く支持するものです。今回の結果が元のブロカール-ラマヌジャン問題を解く鍵になることが期待されます。
証明の鍵となったのは、多項式では形式的な微分が可能であるという性質です。特に、カーリッツ階乗を微分すると、その元の構造に関する多くの情報が保持されることに着目しました。この性質により、1つの方程式であったにもかかわらず、もう1つの独立した方程式を得ることになり、方程式の解は連立方程式の解になるという非常に強い制約を受けることが分かります。その結果として有限体の位数が奇数の場合と偶数の場合で、問題の性質が本質的に異なることが明らかになりました。
奇数の場合には、この制約を満たす解は多くとも本質的に1つしか存在しないことが分かり、さらに詳しい解析によって、解が存在する場合と存在しない場合を完全に分類することができました。一方、偶数の場合にはこの制約がなくなり、特に位数が4以上の2のべき乗のときには解が無限個存在することが分かります。これは方程式が平方を含む形であることと、有限体の位数が偶数であることが重なった、非常に特殊な状況によるものです。実際、もし考えている問題が3乗であれば9以上の3のべき乗のときは解が無限個存在するといったことも証明することができます。
現在、ブロカール-ラマヌジャン問題の解は上記の3つのみであることが予想されています。今回の研究成果により、多項式類似の場合も特殊な状況を除くと0個、1個のいずれかということが明らかとなり、ブロカール-ラマヌジャン問題の予想が正しいことを多項式類似の立場から強く支持するものです。今回の結果が元のブロカール-ラマヌジャン問題を解く鍵になることが期待されます。
発表雑誌
雑誌名
「Finite Fields and Their Applications」
Volume 110, February 2026, 102731(オンライン先行公開:2025年9月30日)
論文タイトル
Brocard-Ramanujan problem for polynomials over finite fields
著者
Wataru Takeda*
DOI番号
10.1016/j.ffa.2025.102731
論文URL
https://doi.org/10.1016/j.ffa.2025.102731
「Finite Fields and Their Applications」
Volume 110, February 2026, 102731(オンライン先行公開:2025年9月30日)
論文タイトル
Brocard-Ramanujan problem for polynomials over finite fields
著者
Wataru Takeda*
DOI番号
10.1016/j.ffa.2025.102731
論文URL
https://doi.org/10.1016/j.ffa.2025.102731
用語解説
(注1)多項式類似
整数1,2,3,4,5,…はたし算・かけ算をしても整数であるように、多項式もたし算・かけ算をしても多項式になっています。これ以外にも様々な類似点があるため、整数の問題を多項式の問題に書き換えて考えることがよくあります。正確には有限体係数多項式類似と呼ばれます。
(注2)ブロカール–ラマヌジャン問題
ブロカール-ラマヌジャン問題とは、以下の方程式
整数1,2,3,4,5,…はたし算・かけ算をしても整数であるように、多項式もたし算・かけ算をしても多項式になっています。これ以外にも様々な類似点があるため、整数の問題を多項式の問題に書き換えて考えることがよくあります。正確には有限体係数多項式類似と呼ばれます。
(注2)ブロカール–ラマヌジャン問題
ブロカール-ラマヌジャン問題とは、以下の方程式
の解をすべて求める問題です。簡単な計算で見つかる解以外にも解があるかどうかは解決しておりません。
(注3)平方数
整数の2乗、つまり自分自身とかけ合わせて得られる整数1,4,9,16,25,…を平方数といいます。
言いかえると正方形の面積が平方数であり、英語で書くとどちらもsquareです。
(注4)階乗
整数を自身から1になるまで繰り返しかけたものを階乗といいます。
例えば、5!=5×4×3×2×1=120となります。階乗は並び替えの個数としてもよく日常生活に現れます。
(注3)平方数
整数の2乗、つまり自分自身とかけ合わせて得られる整数1,4,9,16,25,…を平方数といいます。
言いかえると正方形の面積が平方数であり、英語で書くとどちらもsquareです。
(注4)階乗
整数を自身から1になるまで繰り返しかけたものを階乗といいます。
例えば、5!=5×4×3×2×1=120となります。階乗は並び替えの個数としてもよく日常生活に現れます。
以上
お問い合わせ先
【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学理学部数学教室
講師 武田 渉
〒274-8510 船橋市三山2-2-1
TEL: 047-472-3566
E-mail: wataru.takeda[@]sci.toho-u.ac.jp
URL: https://sites.google.com/site/watarutakedamath
【本ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
〒143-8540 大田区大森西5-21-16
TEL: 03-5763-6583 FAX: 03-3768-0660
E-mail: press[@]toho-u.ac.jp
URL:www.toho-u.ac.jp
※E-mailはアドレスの[@]を@に替えてお送り下さい。
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