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プレスリリース 発行No.1576 令和8年1月20日

日本近海のマンボウ類の寄生虫を調査
得られた10種のうち4種が新種と判明

 東邦大学などの研究グループは、日本近海産のマンボウとヤリマンボウの寄生虫調査を実施し、合計10種の吸虫(扁形動物の寄生虫の一群)を見出しました。さらに、そのうち4種が新種であることを明らかにしました。
本研究により、日本近海のマンボウ類の寄生虫相が大幅にアップデートされました。

 研究成果は、「Systematic Parasitology」に2026年1月17日に掲載されました。

発表者名

脇 司(東邦大学理学部生命圏環境科学科 准教授)
中野 光(京都府立海洋高等学校 教諭)
大河 俊之(高知県水産振興部水産政策課)
石川 孝典(日本大学生物資源科学部 客員研究員)

発表のポイント

  • マンボウ類は、世界的に分布する大型魚です。この仲間には多くの寄生虫が寄生することが知られてきましたが、実際の寄生状況が調べられた例は多くありません。
  • 研究グループは日本近海産のマンボウとヤリマンボウ2種(合計8個体)を対象に、寄生虫調査を実施しました。その結果、これらの宿主魚から合計497虫体の吸虫(扁形動物の寄生虫の一群)が得られました。
  • 得られた吸虫を形態・DNA解析をもとに調査したところ、吸虫は10種にのぼり、さらにそのうち4種が未記載種(新種)であることが明らかになりました。本研究では既知種6種の詳細な形態情報とともに、それら4種の新種記載を行いました。なお、これらの寄生虫の人への感染報告はありません。

発表内容

 世界的に分布する海産の大型魚で、のんびりとした風貌から水族館でも人気の生き物となっているマンボウは(図1)、生態学的な情報が少ない中で、「寄生虫が多い魚」と言われています。実際にマンボウ類を解剖すると多数の寄生虫が出てきますが、どのような種の寄生虫がどのくらい寄生しているのか、といった情報が少ないのが現状です。さらに近年、マンボウ類の分類が更新されており、かつて日本近海で「マンボウ」とされてきたものには、形態の類似したマンボウとウシマンボウの2種が含まれると考えられています。日本では過去に「マンボウ」から得られた寄生虫の記録がありますが、当時調べられた宿主魚がどちらの種だったのかは今となっては分かりません。そのため、マンボウ類の寄生虫相を明らかにするためには、現在の基準で宿主を種同定してその寄生虫を記録していく必要があります。

 研究グループは、マンボウ類の寄生虫の自然史学的研究を進め、今回、日本近海産のマンボウとヤリマンボウを対象とし、マンボウ類の寄生虫として有名なAccacoeliidae科の吸虫を調査しました。宿主はいずれも形態とDNA解析で種同定しました。
 調査の結果、ヤリマンボウ4個体から341虫体(平均85虫体/宿主)が、マンボウ4個体からは156虫体(平均39虫体/宿主)がそれぞれ得られました(合計497虫体)(図2)。得られた吸虫を形態とDNA解析を用いて詳細に調べたところ、日本近海で既に報告されていたAccacladium serpentulumなどに加えて吸虫は5属10種にのぼり、さらにそのうち4種が未記載種(新種)であることを突き止めました。本論文内ではそれらに新たな種の学名をつけています。同時に、現在の基準で種同定された宿主マンボウの吸虫相が本研究で明らかになりました。

 本研究で報告された吸虫と宿主情報は以下の通りです(本研究で記載された種には「新種」と記述。既知種には「既知種」と記述)。和名はいずれも本研究で提唱され、また、いずれも人への感染報告はありません。
  • マンボウナギナタキュウチュウ(既知種)Accacladium serpentulum Odhner, 1928
  • 宿主:マンボウ、ヤリマンボウ。
    腸に寄生。虫体はとても細長く、体長は個体によるが2~4 cm程度に達する。

  • マンボウリュウグウキュウチュウ(既知種)Accacoelium contortum(Rudolphi, 1819)
  • 宿主:マンボウ、ヤリマンボウ。
    今回の吸虫の中で唯一、鰓に寄生する。体長1 cm程度。一属一種。

  • クモガクレマンボウキュウチュウ(新種)Accacladocoelium latens Waki, 2026
  • 宿主:ヤリマンボウ。
    腸に寄生。5mm程度の小型種で、ヤリマンボウの大きな腸では消化管内容物に隠れるので見つけにくい。

  • ベンガラマンボウキュウチュウ(新種)Accacladocoelium mayosenase Waki, 2026
  • 宿主:マンボウ、ヤリマンボウ。
    腸に寄生。体長1 cm程度。個体差はあるものの虫体の一部または全体が茶色に近い「弁柄色」を呈する。

  • オトヒメマンボウキュウチュウ(新種)Accacladocoelium mica Waki, 2026
  • 宿主:ヤリマンボウ。
    腸に寄生。体長7 mm。体が小型で細く、宿主の大きな腸内から見つけることが難しい。

  • ダイオウマンボウキュウチュウ(既知種)Accacladocoelium nigroflavum(Rudolphi, 1819)
  • 宿主:マンボウ。
    腸に寄生。体長1.5~1.7 cmに達する大型種。本論文では、形態とDNA解析に基づきAccacladocoelium alveolatum Robinson, 1934が本種の異名となった。

  • ハラビロマンボウキュウチュウ(既知種)Accacladocoelium petasiporum Odhner, 1928
  • 宿主:マンボウ,ヤリマンボウ。
    腸に寄生。体長1 cm程度。腹吸盤という体の中ほどにある固着器官がとても幅広いのが特徴。

  • オドネルマンボウキュウチュウ(既知種)Odhnerium calyptrocotyle(Monticelli, 1893)
  • 宿主:マンボウ,ヤリマンボウ。
    腸に寄生。体長1.5 cm程度。腹吸盤が大きく出っ張るため他属の吸虫と区別しやすい。一属一種。

  • トンガリマンボウキュウチュウ(既知種)Rhynchopharynx paradoxa Odhner, 1928
  • 宿主:マンボウ。
    腸に寄生。体長3 cm程度。前端部が小さく、虫体前方がとがって見える。腹吸盤の基部が長く突出する。

  • トンガリマンボウキュウチュウモドキ(新種)Rhynchopharynx yarimanbou Waki, 2026
  • 宿主:ヤリマンボウ。
    腸に寄生。体長1.5 cm程度。トンガリマンボウキュウチュウ同様に前端部が小さく虫体がとがって見えるが、本種は腹吸盤の基部がとても短いため判別できる。
 以上のように、日本近海のマンボウ類の寄生虫相が大幅に更新されました。宿主魚のマンボウは、ICUNのレッドリストでVU(危急)とされています。マンボウ1種が減少することで、マンボウに寄生する上記の吸虫もその住場を失うことになります。

 今回の調査は2種8個体のマンボウ類に限られましたが、今後、さらに多くの種、個体数、さらに海外を含めた海域での宿主を調べることで、マンボウ類の寄生虫相がより明らかにされることが期待されます。

発表雑誌

雑誌名
「Systematic Parasitology」(2026年1月17日)

論文タイトル
Accacoeliid trematodes in two sunfish species, Masturus lanceolatus and Mola mola, in Japanese waters

著者
Tsukasa Waki , Hikaru Nakano , Toshiyuki Okawa , Takanori Ishikawa

DOI番号
10.1007/s11230-025-10259-3

アブストラクトURL
https://doi.org/10.1007/s11230-025-10259-3

添付資料

マンボウ
図1. マンボウMola mola



マンボウ類から見出された様々な吸虫
図2.マンボウ類から見出された様々な吸虫
A:マンボウリュウグウキュウチュウ(既知種)Accacoelium contortum(Rudolphi, 1819)。
B:ダイオウマンボウキュウチュウ(既知種、染色した標本)Accacladocoelium nigroflavum(Rudolphi, 1819)。
C(左2虫体): オドネルマンボウキュウチュウ(既知種)Odhnerium calyptrocotyle(Monticelli, 1893)。
C(右)とD:ベンガラマンボウキュウチュウ(新種)Accacladocoelium mayosenase Waki, 2026。
撮影:脇 司
以上

お問い合わせ先

【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学理学部生命圏環境科学科
准教授 脇 司

〒274-8510 船橋市三山2-2-1
TEL: 047-472-1653 
E-mail: tsukasa.waki[@]sci.toho-u.ac.jp
URL: https://www.lab.toho-u.ac.jp/sci/env/synecology/index.html

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