プレスリリース 発行No.1569 令和7年12月11日
ブルネイでヤモリの新種を発見
栗田隆気 千葉県立中央博物館研究員、児島庸介 東邦大学理学部講師、西川完途 京都大学大学院地球環境学堂教授(兼・人間・環境学研究科教授)、T. Ulmar Grafe ブルネイ・ダルサラーム大学理学部教授らの研究グループは、東南アジアで多様化しているマルメスベユビヤモリ(Cnemaspis)の仲間の新種をブルネイ・ダルサラーム国から報告しました。
研究の成果は2025年12月4日に国際学術誌「Zootaxa」で公開されました。
研究の成果は2025年12月4日に国際学術誌「Zootaxa」で公開されました。
研究概要
東南アジア熱帯地域は非常に高い生物多様性を擁しながらも、人間の活動により破壊の危機に晒されている生物多様性ホットスポットです。西川教授を中心とする研究グループは、本地域の両生爬虫類の種多様性の評価・解明を目指した研究の一環として、マレーシア、インドネシア、ブルネイ・ダルサラーム国からなるボルネオ島で、各国の共同研究者と連携し調査を行っています。
ブルネイと日本の研究チームは2025年3月にブルネイの広域で調査を行いました。本調査で捕獲されたヤモリ類について外部形態と遺伝情報を詳細に調べたところ、このヤモリはこれまでブルネイからは知られていなかったマルメスベユビヤモリの仲間であることがわかりました。さらに、ボルネオ島を含む東南アジアに生息する既知のマルメスベユビヤモリの種と比較したところ、それらとは異なる形態的・遺伝的特徴を持つことが明らかになったため、ホシマルメスベユビヤモリ(Cnemaspis gituen)と命名・新種記載しました。また、この研究ではボルネオ島でのマルメスベユビヤモリ類の分布と生息環境についても考察し、このグループの種多様性がほとんどわかっていないボルネオ島中部から北部にかけての地域での今後の調査の重要性を指摘しました。
ブルネイと日本の研究チームは2025年3月にブルネイの広域で調査を行いました。本調査で捕獲されたヤモリ類について外部形態と遺伝情報を詳細に調べたところ、このヤモリはこれまでブルネイからは知られていなかったマルメスベユビヤモリの仲間であることがわかりました。さらに、ボルネオ島を含む東南アジアに生息する既知のマルメスベユビヤモリの種と比較したところ、それらとは異なる形態的・遺伝的特徴を持つことが明らかになったため、ホシマルメスベユビヤモリ(Cnemaspis gituen)と命名・新種記載しました。また、この研究ではボルネオ島でのマルメスベユビヤモリ類の分布と生息環境についても考察し、このグループの種多様性がほとんどわかっていないボルネオ島中部から北部にかけての地域での今後の調査の重要性を指摘しました。
発表者名
栗田隆気 (千葉県立中央博物館 研究員)
児島庸介 (東邦大学理学部生物学科 講師)
西川完途 (京都大学大学院地球環境学堂 教授 兼 人間・環境学研究科 教授)
T. Ulmar Grafe (ブルネイ・ダルサラーム大学理学部 教授)
児島庸介 (東邦大学理学部生物学科 講師)
西川完途 (京都大学大学院地球環境学堂 教授 兼 人間・環境学研究科 教授)
T. Ulmar Grafe (ブルネイ・ダルサラーム大学理学部 教授)
研究背景
マルメスベユビヤモリ属(Cnemaspis)は東南アジアからインド・スリランカにかけて約230種が知られる、脊椎動物全体で見てもきわめて多数の種を含むヤモリの仲間です。本グループの種多様性についてはマレー半島やインドで盛んに研究が進められている一方で、ボルネオ島では2016年時点で4種が知られるのみでした。その後の10年間でマレーシア・サラワク州から新たに5種が記載され、本地域でも分類学的研究の進展がありましたが、ボルネオ島における本グループの生息地や種多様性に関する知見は島西部の一部の地域に偏っており、種多様性の全容解明のためにさらなる研究が必要です。栗田隆気研究員と西川完途教授も2017年と2024年に本地域からマルメスベユビヤモリの新種を発表しており(*)、現在も本グループの分類学的研究を継続しています。
ブルネイではこれまでマルメスベヤモリは記録されていませんでしたが、隣接するマレーシア・サラワク州北東部では生息が知られていました。そこで、代表的な生息環境である岩石地帯(露頭)があればブルネイからも発見されるのではないかと考え、そのような環境の探索と両生爬虫類相の調査を行ったところ、マルメスベユビヤモリの仲間を発見し、分類学的研究を行いました。
ブルネイではこれまでマルメスベヤモリは記録されていませんでしたが、隣接するマレーシア・サラワク州北東部では生息が知られていました。そこで、代表的な生息環境である岩石地帯(露頭)があればブルネイからも発見されるのではないかと考え、そのような環境の探索と両生爬虫類相の調査を行ったところ、マルメスベユビヤモリの仲間を発見し、分類学的研究を行いました。
*
Kurita, T., Nishikawa, K., Matsui, M. & Hikida, T. (2017). A new species of rock gecko genus Cnemaspis (Squamata: Gekkonidae) from western Sarawak. Zootaxa, 4256(6), 525–538.
https://doi.org/10.11646/zootaxa.4258.6.2
Kurita, T., Nishikawa, K., Hossman, M.Y., Mizuno, T., Sato, H. & Gumal, M. (2024). Description of a new sandstone-dwelling species of genus Cnemaspis (Sauria: Gekkonidae) from Gunung Santubong National Park, southwestern Sarawak, Malaysia. Zootaxa, 5468(2), 361–378.
https://doi.org/10.11646/zootaxa.5468.2.7
Kurita, T., Nishikawa, K., Matsui, M. & Hikida, T. (2017). A new species of rock gecko genus Cnemaspis (Squamata: Gekkonidae) from western Sarawak. Zootaxa, 4256(6), 525–538.
https://doi.org/10.11646/zootaxa.4258.6.2
Kurita, T., Nishikawa, K., Hossman, M.Y., Mizuno, T., Sato, H. & Gumal, M. (2024). Description of a new sandstone-dwelling species of genus Cnemaspis (Sauria: Gekkonidae) from Gunung Santubong National Park, southwestern Sarawak, Malaysia. Zootaxa, 5468(2), 361–378.
https://doi.org/10.11646/zootaxa.5468.2.7
研究で行ったこと
ブルネイ東部テンブロン地区の丘陵地ブキット・パトイ(標高約310m)の砂岩露頭地帯からマルメスベユビヤモリ類9個体を採集し、外部形態やDNA塩基配列を既知の種と比較しました。また、昼間と夜間に同じ場所で調査を行い、時間帯による環境利用の違いを観察しました。
研究成果
今回ブルネイで発見されたマルメスベユビヤモリ類はサラワク州北東部から知られる種にもっとも近縁でしたが、明確な遺伝的分化が生じていることが明らかになりました。また、オスは胴体の側面に鮮やかな黄色い斑紋を持ち、その部分に他よりも大型で強く隆起した鱗が密集する、オスの尾が山吹色をしている、尾の腹側の正中上に周囲の鱗よりも大きく、稜(キール)が発達した鱗が一列に並ぶなど、他種では見られない外部形態の組み合わせを持っていました。
これらのことから、本研究ではこのヤモリをホシマルメスベユビヤモリ Cnemaspis gituenとして新種記載しました。”gituen”は本地域に居住するルンバワン族の言葉で「星」を意味しており、胴体側面の黄色い斑紋と密集した大型鱗を星に見立てたことと、日中は姿を現さず、夜間に目につきやすい場所に現れる性質を持つことにちなんでいます。
これらのことから、本研究ではこのヤモリをホシマルメスベユビヤモリ Cnemaspis gituenとして新種記載しました。”gituen”は本地域に居住するルンバワン族の言葉で「星」を意味しており、胴体側面の黄色い斑紋と密集した大型鱗を星に見立てたことと、日中は姿を現さず、夜間に目につきやすい場所に現れる性質を持つことにちなんでいます。
今後の課題・展望
ボルネオ島のマルメスベユビヤモリ類の生息環境は、樹木も用いる2種を除けば、石灰岩を利用する種と石灰岩以外の岩石(花崗岩や砂岩)を利用する種に分けることができます。石灰岩地域では、低地に発達したタワーカルストや標高1700mを超えるカルスト山地など、低地と山地のどちらにもマルメスベユビヤモリ類が生息しています。一方、このグループが生息する花崗岩や砂岩の巨岩地帯は、標高800–1500mほどの山地に紐づいた場所のみで知られていました。これは、花崗岩や砂岩の巨岩が大きな山体から供給され集積したためであると考えられます。
ホシマルメスベユビヤモリが発見された丘陵地は標高300m程度と低く、これまで知られていた花崗岩や砂岩を利用する種の生息地とは異なる地理的特徴を持っています。さらに、本種が生息する砂岩露頭はブキット・パトイの頂上付近に発達しており、風化・侵食によって形成された岩石地帯である点で、山体からの転石で形成された巨岩地帯とは成り立ちが異なっていると考えられます。本種の発見は、これまで見落とされていた低地や丘陵地の非カルスト露頭がマルメスベユビヤモリ類の生息環境として機能している可能性を示唆しており、類似の地形が発達するエリアでのさらなる調査によって、ボルネオ島におけるマルメスベユビヤモリ類の種多様性の解明が今後いっそう進むことが期待されます。
ホシマルメスベユビヤモリが発見された丘陵地は標高300m程度と低く、これまで知られていた花崗岩や砂岩を利用する種の生息地とは異なる地理的特徴を持っています。さらに、本種が生息する砂岩露頭はブキット・パトイの頂上付近に発達しており、風化・侵食によって形成された岩石地帯である点で、山体からの転石で形成された巨岩地帯とは成り立ちが異なっていると考えられます。本種の発見は、これまで見落とされていた低地や丘陵地の非カルスト露頭がマルメスベユビヤモリ類の生息環境として機能している可能性を示唆しており、類似の地形が発達するエリアでのさらなる調査によって、ボルネオ島におけるマルメスベユビヤモリ類の種多様性の解明が今後いっそう進むことが期待されます。
発表雑誌
雑誌名
「Zootaxa」(2025年12月4日)
5725(4), 511-532
論文タイトル
A new species of Cnemaspis (Squamata: Gekkonidae)from Temburong District, Brunei Darussalam
著者
Takaki Kurita, Yosuke Kojima, Kanto Nishikawa, T. Ulmar Grafe
DOI番号
10.11646/zootaxa.5725.4.4
アブストラクトURL
https://doi.org/10.11646/zootaxa.5725.4.4
「Zootaxa」(2025年12月4日)
5725(4), 511-532
論文タイトル
A new species of Cnemaspis (Squamata: Gekkonidae)from Temburong District, Brunei Darussalam
著者
Takaki Kurita, Yosuke Kojima, Kanto Nishikawa, T. Ulmar Grafe
DOI番号
10.11646/zootaxa.5725.4.4
アブストラクトURL
https://doi.org/10.11646/zootaxa.5725.4.4
研究支援
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究
研究課題名:「山地性トカゲ類の進化・集団動態から迫る熱帯の高い種多様性と過去の気候変動の関係性」
(20K15869; 研究代表 栗田隆気)
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究課題名:「アオガエル類における色彩的コミュニケーションの検証と色覚の多様性の解明」
(23K05919; 研究代表 児島庸介)
研究課題名:「山地性トカゲ類の進化・集団動態から迫る熱帯の高い種多様性と過去の気候変動の関係性」
(20K15869; 研究代表 栗田隆気)
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究課題名:「アオガエル類における色彩的コミュニケーションの検証と色覚の多様性の解明」
(23K05919; 研究代表 児島庸介)
以上
お問い合わせ先
【研究に関するお問い合わせ】
千葉県立中央博物館
研究員 栗田 隆気
〒260-8682 千葉県千葉市中央区青葉町955-2
E-mail: kurita[@]chiba-muse.or.jp
※E-mailはアドレスの[@]を@に替えてお送り下さい。
【報道に関するお問い合わせ】
千葉県立中央博物館 管理部企画調整課
TEL:043-265-3111
E-mail: kouhou_cbm[@]mz.pref.chiba.lg.jp
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
TEL: 03-5763-6583 FAX: 03-3768-0660
E-mail: press[@]toho-u.ac.jp
京都大学 広報室国際広報班
TEL:075-753-5729 FAX:075-753-2094
E-mail:comms[@]mail2.adm.kyoto-u.ac.jp
※E-mailはアドレスの[@]を@に替えてお送り下さい。



