プレスリリース 発行No.1546 令和7年10月17日
日本の高校生のスマートフォン依存傾向を「アプリ別」に分析
~ ゲーム・動画・SNSで異なる心理的背景、共通する「感情調節」の特徴 ~
~ ゲーム・動画・SNSで異なる心理的背景、共通する「感情調節」の特徴 ~
東邦大学医学部精神神経医学講座・社会実装精神医学講座の根本隆洋教授らと東京都立松沢病院の稲熊徳也医員の研究チームは、日本の高校生246名を対象に、スマートフォン(以下、スマホ)利用におけるゲーム・動画・SNS依存傾向を比較分析しました。その結果、3つのスマホ依存に共通して「感情調節目的の使用」が関連しており、思春期の情動発達と依存形成の関係が示唆されました。一方、それらのアプリケーション(以下、アプリ)ごとに異なる関連因子も見られ、ゲームは抑うつ、動画は不安、SNSは娯楽目的の無計画な使用が特徴と判明しました。スマホ依存はアプリごとに異なる心理的背景を持ち、今後の支援には、心理的特性と使用動機に応じた個別的・柔軟な介入が求められます。
本研究成果は、2025年10月8日に国際学術誌「Psychiatry and Clinical Neurosciences Reports」に掲載されました。
本研究成果は、2025年10月8日に国際学術誌「Psychiatry and Clinical Neurosciences Reports」に掲載されました。
発表者名
稲熊 徳也(東邦大学大学院医学研究科 博士課程4年、東京都立松沢病院 医員)
舩渡川 智之(東邦大学医学部精神神経医学講座 講師)
関﨑 亮(学校法人桐丘学園 理事長)
中村 陽一(東邦大学大学院医学研究科臨床腫瘍学講座緩和医療学分野 教授)
水野 雅文(社会医療法人あさかホスピタル 院長)
根本 隆洋(東邦大学医学部精神神経医学講座・社会実装精神医学講座 教授)
舩渡川 智之(東邦大学医学部精神神経医学講座 講師)
関﨑 亮(学校法人桐丘学園 理事長)
中村 陽一(東邦大学大学院医学研究科臨床腫瘍学講座緩和医療学分野 教授)
水野 雅文(社会医療法人あさかホスピタル 院長)
根本 隆洋(東邦大学医学部精神神経医学講座・社会実装精神医学講座 教授)
発表のポイント
- 日本の高校生246名を対象に、ゲーム・動画・SNSの3種類のアプリ依存傾向を比較しました。
- 3つのスマホ依存に共通して「感情調節目的の使用」が関連しており、感情調節の未熟さが依存形成に関与する可能性があります。
- アプリごとに関連因子が異なり、ゲームは抑うつ、動画は不安、SNSは娯楽目的の無計画な使用が特徴と判明しました。
- 依存するアプリの使用動機と心理的特性に考慮した個別的介入が求められます。
発表内容
研究チームは、日本の高校1年生246名を対象に、スマホ利用におけるゲーム・動画・SNS依存傾向の関連因子を比較分析し、それぞれの心理的特性と使用動機の違いを明らかにしました。
対象者の年齢中央値は16歳、スマホ使用開始年齢は13歳で、平日の使用時間は中央値5時間、休日の使用時間は8時間でした(表1)。依存傾向は、動画視聴26.4%、SNS利用20.7%、ゲーム19.5%に認められ、複数のスマホ依存を併せ持つ生徒も少なくありませんでした(図1)。
対象者の年齢中央値は16歳、スマホ使用開始年齢は13歳で、平日の使用時間は中央値5時間、休日の使用時間は8時間でした(表1)。依存傾向は、動画視聴26.4%、SNS利用20.7%、ゲーム19.5%に認められ、複数のスマホ依存を併せ持つ生徒も少なくありませんでした(図1)。
3つのスマホ依存に共通して「感情調節目的の使用」が強く関連しており、スマホが「不快な感情の対処手段」として利用されていることが示されました。特に思春期は情動調節能力が発達途上にあり、こうした利用が短期的な安堵をもたらす一方で、依存的な使用習慣を固定化させる可能性が示唆されました(表 2)。
95%Cl;95%Confidence interval:95%信頼区間、P;P値:有意差検定値
また、アプリごとの特徴も明確になりました。ゲーム依存は、男性・抑うつ・暇つぶし動機と関連し、気分低下に対する代償的利用が示唆されました。動画依存は、不安・衝動性(ポジティブ・アージェンシー:ポジティブな情動に応じて衝動的な行動をとる傾向)・忍耐欠如と関連し、不安の軽減や即時的報酬を求める視聴行動が強化されていました。SNS依存は、女性・抑うつ・楽しみ目的・熟考欠如と関連し、娯楽目的の無計画な使用の反復が依存形成に寄与していました。
これらの結果から、スマホ依存は単一の現象ではなく、共通する「感情調節」とアプリ特有の心理的要因が組み合わさった多面的構造であることが明らかになりました。
スマホ依存は単一の現象ではなく、依存するアプリごとに理解する必要があり、今後の支援には心理的特性と使用動機に応じた個別的・柔軟な介入が求められます。また、共通の対策として感情調節スキルの向上を重視し、ゲーム依存には抑うつへの心理的介入、動画依存には不安対処、SNS依存には娯楽目的の無計画な使用の反復の自己制御支援が必要となります。
これらの結果から、スマホ依存は単一の現象ではなく、共通する「感情調節」とアプリ特有の心理的要因が組み合わさった多面的構造であることが明らかになりました。
スマホ依存は単一の現象ではなく、依存するアプリごとに理解する必要があり、今後の支援には心理的特性と使用動機に応じた個別的・柔軟な介入が求められます。また、共通の対策として感情調節スキルの向上を重視し、ゲーム依存には抑うつへの心理的介入、動画依存には不安対処、SNS依存には娯楽目的の無計画な使用の反復の自己制御支援が必要となります。
発表雑誌
雑誌名
「Psychiatry and Clinical Neurosciences Reports」(2025年10月8日)
論文タイトル
Psychological and motivational factors associated with addiction tendencies to gaming, video viewing, and social networking services use among high school students: A cross‐sectional study
著者
Tokuya Inaguma, Tomoyuki Funatogawa, Ryo Sekizaki, Yoichi Nakamura, Masafumi Mizuno,
Takahiro Nemoto*(*責任著者)
DOI番号
10.1002/pcn5.70218
論文URL
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/pcn5.70218
「Psychiatry and Clinical Neurosciences Reports」(2025年10月8日)
論文タイトル
Psychological and motivational factors associated with addiction tendencies to gaming, video viewing, and social networking services use among high school students: A cross‐sectional study
著者
Tokuya Inaguma, Tomoyuki Funatogawa, Ryo Sekizaki, Yoichi Nakamura, Masafumi Mizuno,
Takahiro Nemoto*(*責任著者)
DOI番号
10.1002/pcn5.70218
論文URL
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/pcn5.70218
以上
お問い合わせ先
【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学医学部精神神経医学講座・社会実装精神医学講座
教授 根本 隆洋
〒143-8540 大田区大森西5-21-16
TEL: 03-3762-4151(代表)
E-mail: takahiro.nemoto[@]med.toho-u.ac.jp
URL: https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/psycho/
【ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
〒143-8540 大田区大森西5-21-16
TEL: 03-5763-6583 FAX: 03-3768-0660
E-mail: press[@]toho-u.ac.jp
URL:www.toho-u.ac.jp
※E-mailはアドレスの[@]を@に替えてお送り下さい。



