プレスリリース 発行No.1500 令和7年6月11日
天然資源から抗糖化活性化合物を自動で探索するプログラムを開発
東邦大学薬学部生薬学教室の菊地崇准教授、李巍教授らの研究グループは、天然資源から抗糖化活性化合物を迅速に特定するための自動探索プログラムを開発しました。今後、本研究で開発された手法が、天然資源に含まれる抗糖化活性化合物の探索に有効利用されることが期待されます。
この研究成果は、2025年5月3日に学術論文誌「Analytical Chemistry」で公開されました。
この研究成果は、2025年5月3日に学術論文誌「Analytical Chemistry」で公開されました。
発表者名
斉 文君(東邦大学大学院薬学研究科薬科学専攻 修士課程 2024年度修了)
張 米(東邦大学薬学部生薬学教室 博士研究員)
菊地 崇(東邦大学薬学部生薬学教室 准教授)
大月 興春(東邦大学薬学部生薬学教室 助教)
李 巍(東邦大学薬学部生薬学教室 教授)
張 米(東邦大学薬学部生薬学教室 博士研究員)
菊地 崇(東邦大学薬学部生薬学教室 准教授)
大月 興春(東邦大学薬学部生薬学教室 助教)
李 巍(東邦大学薬学部生薬学教室 教授)
発表のポイント
- 抗糖化活性化合物の自動探索プログラムを開発しました。
- 薬用植物エキスの高速液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)(注1)データについて、開発した自動探索プログラムにより解析を行い、171種のメチルグリオキサール(MGO)捕捉化合物を高い信頼度で同定しました。
- 本研究で開発した手法は、今後、天然資源に含まれる抗糖化活性化合物の迅速同定に有効利用されることが期待されます。
発表内容
糖化とは、タンパク質と糖が非酵素的に反応し、最終的に終末糖化産物(Advanced glycation end products:AGEs)(注2)を生成する現象で、タンパク質の変性を引き起こします。AGEsは、全身の老化を進行させる原因の一つとして挙げられます。
生体内でのAGEsの生成には、グルコース代謝により生成し、反応性の高いカルボニル基を持つMGOなどが関わっています。そのため、反応性カルボニル種の除去がAGEs生成を防ぐための効果的な戦略として考えられています。天然物は比較的低毒性であり安全性が高いことから、AGEs形成阻害の有望な候補として着目されています。しかし、含有される化合物の種類が非常に多く、さらに化学構造が複雑なものも多いことから、天然資源からAGEs阻害物質を迅速に同定するための効果的な手法は、これまで十分に確立されていません。本研究では天然資源からAGEs形成阻害化合物を迅速に特定するための新たな方法として、LC-MSで得られたデータを自動で探索する解析プログラムを開発しました。
天然資源にMGO捕捉化合物が含まれる場合、その天然資源エキスにMGOを添加すると、MGOを捕捉する化合物の含有量が減り、新たにMGOと捕捉化合物との反応生成物(MGO付加生成物:MGO adduct)が生成します。開発した自動探索プログラムは、天然資源エキスのLC-MSデータからこれらを自動で検出し、MGO捕捉化合物を同定します。
48種の薬用植物についてMGO添加および非添加エキスを調製し、それらについてLC-MS分析を行いました。この分析で得られたデータに対し、開発した自動探索プログラムによる解析を行い、171種のMGO捕捉化合物を同定しました。本研究で開発した自動探索プログラムによって、網羅的で迅速なAGEs生成阻害化合物の探索が可能であり、今後、多くの天然資源に含まれる抗糖化活性化合物探索に適用されることが期待されます。また、他の反応性代謝物を捕捉する化合物の探索への応用も期待できます。
生体内でのAGEsの生成には、グルコース代謝により生成し、反応性の高いカルボニル基を持つMGOなどが関わっています。そのため、反応性カルボニル種の除去がAGEs生成を防ぐための効果的な戦略として考えられています。天然物は比較的低毒性であり安全性が高いことから、AGEs形成阻害の有望な候補として着目されています。しかし、含有される化合物の種類が非常に多く、さらに化学構造が複雑なものも多いことから、天然資源からAGEs阻害物質を迅速に同定するための効果的な手法は、これまで十分に確立されていません。本研究では天然資源からAGEs形成阻害化合物を迅速に特定するための新たな方法として、LC-MSで得られたデータを自動で探索する解析プログラムを開発しました。
天然資源にMGO捕捉化合物が含まれる場合、その天然資源エキスにMGOを添加すると、MGOを捕捉する化合物の含有量が減り、新たにMGOと捕捉化合物との反応生成物(MGO付加生成物:MGO adduct)が生成します。開発した自動探索プログラムは、天然資源エキスのLC-MSデータからこれらを自動で検出し、MGO捕捉化合物を同定します。
48種の薬用植物についてMGO添加および非添加エキスを調製し、それらについてLC-MS分析を行いました。この分析で得られたデータに対し、開発した自動探索プログラムによる解析を行い、171種のMGO捕捉化合物を同定しました。本研究で開発した自動探索プログラムによって、網羅的で迅速なAGEs生成阻害化合物の探索が可能であり、今後、多くの天然資源に含まれる抗糖化活性化合物探索に適用されることが期待されます。また、他の反応性代謝物を捕捉する化合物の探索への応用も期待できます。
発表雑誌
雑誌名
「Analytical Chemistry」(2025年5月3日)
97巻18号、9836–9847
論文タイトル
A Carbonyl-Trapping Mechanism-Based Automatic Mining (CTM-AM) Strategy for Accelerating the Discovery of Natural Products with Anti-Advanced Glycation End Products Activity
著者
Wenjun Qi, Mi Zhang, Takashi Kikuchi, Kouharu Otsuki, Wei Li
DOI番号
10.1021/acs.analchem.5c00216
論文URL
https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.analchem.5c00216
「Analytical Chemistry」(2025年5月3日)
97巻18号、9836–9847
論文タイトル
A Carbonyl-Trapping Mechanism-Based Automatic Mining (CTM-AM) Strategy for Accelerating the Discovery of Natural Products with Anti-Advanced Glycation End Products Activity
著者
Wenjun Qi, Mi Zhang, Takashi Kikuchi, Kouharu Otsuki, Wei Li
DOI番号
10.1021/acs.analchem.5c00216
論文URL
https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.analchem.5c00216
用語解説
(注1)高速液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)
高速液体クロマトグラフィーは、試料を液体の移動相に溶かし、化合物の極性や相互作用により分離する技術。質量分析は、分離された成分をイオン化し、得られる質量電荷比から成分の分子量や分子式情報を得ることができる分析技術。これらを組み合わせた分析技術がLC-MSです。
(注2)終末糖化産物(Advanced glycation end products:AGEs)
タンパク質と糖との反応により生成する最終産物で、体内で分解されにくく、蓄積します。老化、動脈硬化、アルツハイマー病、糖尿病合併症、悪性新生物、白内障など様々な疾患との関連が報告されています。
高速液体クロマトグラフィーは、試料を液体の移動相に溶かし、化合物の極性や相互作用により分離する技術。質量分析は、分離された成分をイオン化し、得られる質量電荷比から成分の分子量や分子式情報を得ることができる分析技術。これらを組み合わせた分析技術がLC-MSです。
(注2)終末糖化産物(Advanced glycation end products:AGEs)
タンパク質と糖との反応により生成する最終産物で、体内で分解されにくく、蓄積します。老化、動脈硬化、アルツハイマー病、糖尿病合併症、悪性新生物、白内障など様々な疾患との関連が報告されています。
添付資料

以上
お問い合わせ先
【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学薬学部生薬学教室
教授 李 巍
〒274-8510 船橋市三山2-2-1
TEL: 047-472-1161 FAX: 047-472-1404
E-mail: liwei[@]phar.toho-u.ac.jp
URL: www.lab.toho-u.ac.jp/phar/npcnm/
【本ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
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