プレスリリース 発行No.1487 令和7年5月13日
食物アレルギーやアナフィラキシーで、なぜ喉や胃が締めつけられる?
— アレルギー性物質「PAF」が、食道と胃の上部の筋肉を
強く収縮させることを発見 —
— アレルギー性物質「PAF」が、食道と胃の上部の筋肉を
強く収縮させることを発見 —
アレルギーや炎症時に体内で作られる「血小板活性化因子(PAF)」(注1)が、ラットの食道および胃の上部
(胃底部)の筋肉を特に強く収縮させることを明らかにしました。
この研究成果は、学術雑誌「Biological and Pharmaceutical Bulletin」に2025年5月9日に掲載されました。
(胃底部)の筋肉を特に強く収縮させることを明らかにしました。
この研究成果は、学術雑誌「Biological and Pharmaceutical Bulletin」に2025年5月9日に掲載されました。
発表者名
小原 圭将(東邦大学薬学部薬理学教室 准教授)
吉岡 健人(東邦大学薬学部薬理学教室 講師)
田中 芳夫(東邦大学薬学部薬理学教室 教授)
吉岡 健人(東邦大学薬学部薬理学教室 講師)
田中 芳夫(東邦大学薬学部薬理学教室 教授)
発表のポイント
- 血小板活性化因子(PAF)は、アレルギー反応や炎症時に体内で作られる生理活性物質です。
- PAFは、消化管の中でも特に「食道」と「胃底部」の平滑筋に対して、強い収縮を引き起こすことが判明しました。
- これら2つの部位は、発生学的に同じ由来を持つため、同様の反応を示したと考えられます。
- また、PAFは大腸において異常な強い反復性収縮を引き起こすことがわかりました。これは炎症性腸疾患との関係性を示唆します。
- 今回の発見は、アレルギー反応時に感じる「喉のつかえ感」や「胃の不快感」の一因を説明する手がかりとなるとともに、PAFの働きを抑える薬の臨床応用に向けた新たな糸口となる可能性があります。
発表内容
食物アレルギーやアナフィラキシーなど、激しいアレルギー反応を起こした際、「喉が締めつけられるような感覚」や「胃の痛みや不快感」を訴える人が少なくありません。しかし、これまでその原因ははっきりと分かっていませんでした。研究グループは、アレルギーや炎症に関与する生理活性物質「血小板活性化因子(PAF)」に注目し、ラットの消化管の各部位[食道、胃、十二指腸~空腸、回腸、大腸(上行結腸・下行結腸)]の平滑筋における収縮反応を比較しました。その結果、PAFは特に食道と胃底部の平滑筋に対して強い収縮作用を示すことが明らかになりました(図1、図2)。この2つの消化管部位は、発生学的に共通の起源(前腸由来)を持つことが知られており、PAFへの反応性の高さはこの点と関連があると考えられます。また、PAFは大腸(上行結腸)においても、通常とは異なる強い収縮運動(反復性収縮)を引き起こすことが確認されました(図1、図2)。このような異常な腸運動は、炎症性腸疾患などの病態と関係している可能性があります。本研究成果は、PAFが消化管の特定の部位で強い運動変化を引き起こすことを初めて明らかにしたものであり、アレルギー性疾患に伴う消化器症状の理解や、PAFを標的とした新たな治療法の開発につながることが期待されます。
発表雑誌
雑誌名
「Biological and Pharmaceutical Bulletin」(2025年5月9日掲載)
48巻5号、563–570
論文タイトル
Platelet-activating factor (PAF) induces strong mechanical activities accompanied by basal tension increases in esophageal and gastric fundus smooth muscles from rat
著者
Keisuke Obara, Sana Takahashi, Miho Otake, Mako Fujiwara, Mio Yamashita, Azusa Murata,
Kento Yoshioka, Yoshio Tanaka
DOI番号
10.1248/bpb.b25-00125
アブストラクトURL
https://doi.org/10.1248/bpb.b25-00125
「Biological and Pharmaceutical Bulletin」(2025年5月9日掲載)
48巻5号、563–570
論文タイトル
Platelet-activating factor (PAF) induces strong mechanical activities accompanied by basal tension increases in esophageal and gastric fundus smooth muscles from rat
著者
Keisuke Obara, Sana Takahashi, Miho Otake, Mako Fujiwara, Mio Yamashita, Azusa Murata,
Kento Yoshioka, Yoshio Tanaka
DOI番号
10.1248/bpb.b25-00125
アブストラクトURL
https://doi.org/10.1248/bpb.b25-00125
用語解説
(注1)血小板活性化因子(PAF:Platelet-Activating Factor)
アレルギー反応や炎症時に体内で作られる生理活性物質のひとつで、血管や免疫細胞、平滑筋などさまざまな細胞に作用します。重度のアレルギー反応(アナフィラキシー)に関与することでも知られています。リン脂質由来の分子で、白血球、血小板、内皮細胞などで産生されます。
アレルギー反応や炎症時に体内で作られる生理活性物質のひとつで、血管や免疫細胞、平滑筋などさまざまな細胞に作用します。重度のアレルギー反応(アナフィラキシー)に関与することでも知られています。リン脂質由来の分子で、白血球、血小板、内皮細胞などで産生されます。
添付資料

図1. 本研究成果の概要

図2.PAFがラットの消化管平滑筋に与える影響の比較
この図は、「血小板活性化因子(PAF)」が、ラットのさまざまな消化管の筋肉にどのような影響を与えるかを調べた結果を示しています。図のA~Fは、それぞれ食道(A)、胃の上部(胃底、B)、十二指腸~空腸(C)、回腸(D)、大腸(上行結腸、E;下行結腸、F)の筋肉の動きを表しています。これらの筋肉は、通常、食べ物を体の中で運ぶ働きをしています。いずれの消化管でも正常な消化管の収縮に関わる副交感神経伝達物質であるアセチルコリン(ACh)を加えると強力な収縮反応を引き起こします。一方、PAFを加えると、食道(A)や胃(B)の筋肉で、他の部位に比べてより強い収縮や収縮の持続が認められました。また、大腸(上行結腸、E)では、通常とは異なる強い収縮運動(反復性収縮)を引き起こすことが確認されました。この実験から、PAFが一部の消化管の筋肉で特に強く作用し、異常な動きやけいれんのような反応を引き起こす可能性があることが示されました。なお、図に示すwは薬物を除去する操作(洗滌操作)を指し、Inhibitorsは消化管に存在する自律神経などの影響を排除するための薬物の処置を指し、PPVは筋肉を弛緩させる薬物を指します。
この図は、「血小板活性化因子(PAF)」が、ラットのさまざまな消化管の筋肉にどのような影響を与えるかを調べた結果を示しています。図のA~Fは、それぞれ食道(A)、胃の上部(胃底、B)、十二指腸~空腸(C)、回腸(D)、大腸(上行結腸、E;下行結腸、F)の筋肉の動きを表しています。これらの筋肉は、通常、食べ物を体の中で運ぶ働きをしています。いずれの消化管でも正常な消化管の収縮に関わる副交感神経伝達物質であるアセチルコリン(ACh)を加えると強力な収縮反応を引き起こします。一方、PAFを加えると、食道(A)や胃(B)の筋肉で、他の部位に比べてより強い収縮や収縮の持続が認められました。また、大腸(上行結腸、E)では、通常とは異なる強い収縮運動(反復性収縮)を引き起こすことが確認されました。この実験から、PAFが一部の消化管の筋肉で特に強く作用し、異常な動きやけいれんのような反応を引き起こす可能性があることが示されました。なお、図に示すwは薬物を除去する操作(洗滌操作)を指し、Inhibitorsは消化管に存在する自律神経などの影響を排除するための薬物の処置を指し、PPVは筋肉を弛緩させる薬物を指します。
以上
お問い合わせ先
【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学薬学部薬理学教室
准教授 小原 圭将
〒274-8510 船橋市三山2-2-1
TEL: 047-472-1331 FAX: 047-472-1435
E-mail: keisuke.obara[@]phar.toho-u.ac.jp
【本ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
〒143-8540 大田区大森西5-21-16
TEL: 03-5763-6583 FAX: 03-3768-0660
E-mail: press[@]toho-u.ac.jp
URL: www.toho-u.ac.jp
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