プレスリリース 発行No.1465 令和7年3月11日
ツルニンジンの化学成分および主成分lancemaside Aの血管拡張作用を解明
東邦大学薬学部生薬学教室の菊地崇准教授、李巍教授、同医学部薬理学講座の杉山篤教授、同産学連携本部の伊藤勝彦産学連携アドバイザーらの研究グループは、長野県で栽培されているキキョウ科植物ツルニンジン(Codonopsis lanceolata)の根の成分解析を行い、その含有成分を明らかにしました。さらに主成分であるlancemaside Aについては、血管拡張作用を示すことを明らかにしました。本研究で得られた知見に基づき、今後ツルニンジンが健康素材として有効利用されることが期待されます。
この研究成果は、2025年1月6日に学術論文誌「Chemistry」で公開されました。
この研究成果は、2025年1月6日に学術論文誌「Chemistry」で公開されました。
発表者名
羅 暢(東邦大学大学院薬学研究科医療薬学専攻 博士課程1年)
段 澤南(東邦大学大学院薬学研究科薬科学専攻 修士課程 2022年度修了)
菊地 崇(東邦大学薬学部生薬学教室 准教授)
大月 興春(東邦大学薬学部生薬学教室 助教)
張 米(東邦大学薬学部生薬学教室 博士研究員)
李 巍(東邦大学薬学部生薬学教室 教授)
神林 隆一(東邦大学医学部薬理学講座 助教)
杉山 篤(東邦大学医学部薬理学講座 教授)
伊藤 勝彦(東邦大学産学連携本部 産学連携アドバイザー)
段 澤南(東邦大学大学院薬学研究科薬科学専攻 修士課程 2022年度修了)
菊地 崇(東邦大学薬学部生薬学教室 准教授)
大月 興春(東邦大学薬学部生薬学教室 助教)
張 米(東邦大学薬学部生薬学教室 博士研究員)
李 巍(東邦大学薬学部生薬学教室 教授)
神林 隆一(東邦大学医学部薬理学講座 助教)
杉山 篤(東邦大学医学部薬理学講座 教授)
伊藤 勝彦(東邦大学産学連携本部 産学連携アドバイザー)
発表のポイント
- 高速液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)(注1)により、長野県で栽培されているキキョウ科植物ツルニンジンの根にトリテルペノイドサポニン、ポリアセチレン、フラボノイド、フェニルプロパノイド類、リグナン、糖脂質、リン脂質、アミノ酸が含まれることを明らかにしました。日本産ツルニンジンの体系的な成分解析は初めての報告です。
- ツルニンジン根の各画分、主成分のlancemaside Aおよびlobetyolinについてラット大動脈リング標本を用いた血管拡張作用の評価を行ったところ、lancemaside Aが有意に血管拡張作用を示すことを明らかにしました。
- 本研究で明らかにした化学成分および生物活性の知見に基づき、今後ツルニンジンが健康素材として有効利用されることが期待されます。
発表概要
ツルニンジン(Codonopsis lanceolata)は東アジアに分布するキキョウ科ツルニンジン属の多年生草本植物です。本研究では、LC-MSを用いてツルニンジン根の成分解析を行い、トリテルペノイドサポニン、ポリアセチレン、フラボノイド、フェニルプロパノイド類、リグナン、糖脂質、リン脂質、アミノ酸の計27種類の化合物を同定しました。このうち、トリテルペノイドサポニンの1種は初めて報告される化合物でした。また、ラット大動脈リング標本を用いてツルニンジンの酢酸エチル画分、n-ブタノール画分、主成分のlancemaside Aおよびlobetyolinが血管に及ぼす影響を評価しました。その結果、lancemaside Aが血管拡張作用を示すことを明らかにしました。
発表内容
キキョウ科植物ツルニンジン (Codonopsis lanceolata) は北海道から九州、朝鮮半島および中国北部に分布する多年生草本植物で、その根は食用されています。
本研究では、各種クロマトグラフィー法を用いて長野県で栽培されているツルニンジンの根からlancemaside Aやlobetyolinなど4種の主成分を単離し、続いてLC-MSおよびLC-MS/MSにより、ツルニンジン根の成分解析を行いました。その結果、1種の新規トリテルペノイドサポニンを含む計27種類の化合物が同定されました。
さらにツルニンジンの酢酸エチル画分、n-ブタノール画分、単離した主成分のlancemaside Aおよびlobetyolinについてラット大動脈リング標本を用いて血管拡張作用の評価を行ったところ、lancemaside Aが血管拡張作用を示すことを明らかにしました。
Lancemaside Aは一酸化窒素(NO)合成酵素を活性化することが報告されており、今回の研究で認められたlancemaside Aの血管拡張作用は血管内皮細胞由来のNOの増加によるものと考察しました。本研究で明らかにした化学成分および生物活性の知見に基づき、今後ツルニンジンが健康素材として有効利用されることが期待されます。
本研究では、各種クロマトグラフィー法を用いて長野県で栽培されているツルニンジンの根からlancemaside Aやlobetyolinなど4種の主成分を単離し、続いてLC-MSおよびLC-MS/MSにより、ツルニンジン根の成分解析を行いました。その結果、1種の新規トリテルペノイドサポニンを含む計27種類の化合物が同定されました。
さらにツルニンジンの酢酸エチル画分、n-ブタノール画分、単離した主成分のlancemaside Aおよびlobetyolinについてラット大動脈リング標本を用いて血管拡張作用の評価を行ったところ、lancemaside Aが血管拡張作用を示すことを明らかにしました。
Lancemaside Aは一酸化窒素(NO)合成酵素を活性化することが報告されており、今回の研究で認められたlancemaside Aの血管拡張作用は血管内皮細胞由来のNOの増加によるものと考察しました。本研究で明らかにした化学成分および生物活性の知見に基づき、今後ツルニンジンが健康素材として有効利用されることが期待されます。
発表雑誌
-
雑誌名
「Chemistry」(2025年1月6日)
7巻1号、4
論文タイトル
Comprehensive Chemical Analysis of Codonopsis lanceolata Roots Using Ultra-High-Performance Liquid Chromatography–Quadrupole-Exactive–Orbitrap Mass Spectrometry
著者
Chang Luo, Zenan Duan, Takashi Kikuchi, Kouharu Otsuki, Mi Zhang, Ryuichi Kambayashi, Katsuhiko Ito, Atsushi Sugiyama, Wei Li
DOI番号
10.3390/chemistry7010004
論文URL
https://www.mdpi.com/2624-8549/7/1/4
用語解説
(注1)高速液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)
高速液体クロマトグラフィーは、試料を液体の移動相に溶かし、化合物の極性や相互作用により分離する技術。質量分析は、分離された成分をイオン化し、得られる質量電荷比から成分の分子量や分子式情報を得ることができる分析技術。これらを組み合わせた分析技術がLC-MSである。また、二段階の質量分析を行う技術がタンデム質量分析 (MS/MS) である。この技術は天然化合物の迅速な構造同定に有用である。
高速液体クロマトグラフィーは、試料を液体の移動相に溶かし、化合物の極性や相互作用により分離する技術。質量分析は、分離された成分をイオン化し、得られる質量電荷比から成分の分子量や分子式情報を得ることができる分析技術。これらを組み合わせた分析技術がLC-MSである。また、二段階の質量分析を行う技術がタンデム質量分析 (MS/MS) である。この技術は天然化合物の迅速な構造同定に有用である。
添付資料

図1.ツルニンジンとその主成分

図2.ツルニンジン各画分および主成分lancemaside A、lobetyolinの血管拡張作用評価
以上
お問い合わせ先
【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学薬学部薬理学教室
教授 李 巍
〒274-8510 船橋市三山2-2-1
TEL: 047-472-1161 FAX: 047-472-1404
E-mail: liwei[@]phar.toho-u.ac.jp
URL:www.lab.toho-u.ac.jp/phar/npcnm/
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