プレスリリース 発行No.1400 令和6年9月5日
最高裁判所の協力を得て医事関係訴訟の都道府県別発生率を調査
~ 発生率における地域差の存在が明らかに ~
~ 発生率における地域差の存在が明らかに ~
東邦大学薬学部の平賀秀明講師らの研究グループは、最高裁判所の協力を得て、医事関係訴訟(注1)の都道府県別発生率を調査し、その発生率に地域差が生じていることを明らかにしました。これにより、今後、地域の実情に応じた医療現場における医療安全対策・医療事故後の患者応対、法曹関係者における訴訟実務などへ寄与することが期待されます。
この研究成果は2024年7月31日に雑誌「医療の質・安全学会誌」に短報として公開されました。なお、医事関係訴訟の発生率について地域差が生じた要因については、現在追加解析を実施していますが、医療現場にいち早く情報提供することを目的として、今般、短報として本結果を公表しました。追加解析の結果については、解析終了後公表する予定です。
この研究成果は2024年7月31日に雑誌「医療の質・安全学会誌」に短報として公開されました。なお、医事関係訴訟の発生率について地域差が生じた要因については、現在追加解析を実施していますが、医療現場にいち早く情報提供することを目的として、今般、短報として本結果を公表しました。追加解析の結果については、解析終了後公表する予定です。
発表者名
平賀 秀明(東邦大学薬学部社会薬学研究室 講師)
小田 愛美(東邦大学薬学部6年)
増田 陽子(東邦大学薬学部6年)
小田 愛美(東邦大学薬学部6年)
増田 陽子(東邦大学薬学部6年)
発表のポイント
- 最高裁判所の協力を得て、医事関係訴訟の都道府県別発生率を調査しました。
- その結果、医事関係訴訟の発生率には地域差があることが明らかとなりました。
- 地域の実情に応じた医療現場における医療安全対策・医療事故後の患者応対、法曹関係者における訴訟実務などへ寄与することが期待されます。
発表概要
医療の質には古くから地域差があることが知られており、我が国でも人口規模、医療環境、医療事故の件数は地域により異なっています。東邦大学薬学部の平賀講師らの全国及び千葉県の先行調査研究*1 により、少なくとも我が国の医事関係訴訟の発生率には地域差が存在する可能性が示唆されています。しかし、千葉県以外の医事関係訴訟の状況は不明であり、実際に地域差が存在しているのかは明らかではありませんでした。そこで、本研究では、最高裁判所の協力を得て、全国の地方裁判所に提訴された医事関係訴訟の状況を調査しました。
その結果、人口100万人あたりの医事関係訴訟の発生率が全国と比較して有意に高い地域は、2地域(東京都及び大阪府)、低い地域は12地域(茨城県、福島県、岐阜県、秋田県、三重県、埼玉県、青森県、岩手県、山梨県、千葉県、長野県及び愛知県)であることが明らかとなりました(図1)。また、医療機関1000施設あたりの発生率が全国と比較して有意に高い地域は、2地域(東京都及び大阪府)、低い地域は、8地域(茨城県、福島県、岐阜県、三重県、秋田県、埼玉県、山梨県及び青森県)でした(図2)。さらに、医師・歯科医師1000人あたりの発生率が全国と比較して有意に高い地域は、2地域(大阪府及び東京都)、低い地域は、9地域(茨城県、福島県、岐阜県、徳島県、秋田県、三重県、山梨県、埼玉県及び青森県)でした(図3)。
本研究により我が国の医事関係訴訟の発生率には地域差があることが明らかとなりました。このことは、少なくとも地域の実情に応じて医療安全対策や医療訴訟対策を検討してく必要があることを示しています。
*1:参考文献
医療の質・安全学会誌 14 (4) : 455-466, 2019. https://doi.org/10.11397/jsqsh.14.455
その結果、人口100万人あたりの医事関係訴訟の発生率が全国と比較して有意に高い地域は、2地域(東京都及び大阪府)、低い地域は12地域(茨城県、福島県、岐阜県、秋田県、三重県、埼玉県、青森県、岩手県、山梨県、千葉県、長野県及び愛知県)であることが明らかとなりました(図1)。また、医療機関1000施設あたりの発生率が全国と比較して有意に高い地域は、2地域(東京都及び大阪府)、低い地域は、8地域(茨城県、福島県、岐阜県、三重県、秋田県、埼玉県、山梨県及び青森県)でした(図2)。さらに、医師・歯科医師1000人あたりの発生率が全国と比較して有意に高い地域は、2地域(大阪府及び東京都)、低い地域は、9地域(茨城県、福島県、岐阜県、徳島県、秋田県、三重県、山梨県、埼玉県及び青森県)でした(図3)。
本研究により我が国の医事関係訴訟の発生率には地域差があることが明らかとなりました。このことは、少なくとも地域の実情に応じて医療安全対策や医療訴訟対策を検討してく必要があることを示しています。
*1:参考文献
医療の質・安全学会誌 14 (4) : 455-466, 2019. https://doi.org/10.11397/jsqsh.14.455
発表内容
2005~2021年に全国の地方裁判所に提訴された医事関係訴訟の状況を調査し、医事関係訴訟の発生率における地域差の状況などについて、統計学的な手法を用いて検討しました。
全国の人口100万人あたりの医事関係訴訟の発生率(中央値)は6.30件/年であり、全国と比較して発生率が有意に高い地域は、東京都(12.97件/年、P<0.001)及び大阪府(10.99件/年、P<0.001)、低い地域は茨城県(1.77件/年、P<0.001)、福島県(1.93件/年、P<0.001)、岐阜県(2.50件/年、P<0.001)、秋田県(2.65件/年、P<0.001)、三重県(2.74件/年、P=0.001)、埼玉県(2.79件/年、P<0.001)、青森県(3.07件/年、P<0.001)、岩手県(3.36件/年、P=0.005)、山梨県(3.53件/年、P=0.009)、千葉県(3.58件/年、P<0.001)、長野県(4.20件/年、P=0.004)及び愛知県(4.78件/年、P=0.015)であることが明らかとなりました(図1)。また、全国の医療機関1000施設あたりの発生率(中央値)は4.38件/年であり、全国と比較して発生率が有意に高い地域は、東京都(6.99件/年、P<0.001)及び大阪府(6.68件/年、P<0.001)、低い地域は、茨城県(1.52件/年、P=0.002)、福島県(1.59件/年、P<0.001)、岐阜県(1.89件/年、P=0.002)、三重県(2.03件/年、P=0.004)、秋田県(2.21件/年、P=0.003)、埼玉県(2.47件/年、P=0.001)、山梨県(2.50件/年、P=0.022)及び青森県(2.60件/年、P<0.001)でした(図2)。さらに、全国の医師・歯科医師1000人あたりの発生率(中央値)は1.92件/年であり、全国と比較して有意に高い地域は、大阪府(3.05件/年、P<0.001)及び東京都(2.79件/年、P=0.003)、低い地域は、茨城県(0.73件/年、P=0.005)、福島県(0.76件/年、P=0.001)、岐阜県(0.83件/年、P=0.027)、徳島県(0.92件/年、P=0.049)、秋田県(1.00件/年、P=0.017)、三重県(1.04件/年、P=0.011)、山梨県(1.11件/年、P=0.037)、埼玉県(1.15件/年、P=0.009)及び青森県(1.16件/年、P=0.003)でした(図3)。
医事関係訴訟における地域差が生じた要因については、医療機関における医療過誤が少ない(医療側の要因)、または弁護士不足などによる訴訟へのアクセスの阻害(司法側の要因)などが想定されますが、現在追加解析を行っています。医療の質向上と被害者救済を含めた医療訴訟対策の検討のために、今後も精力的に解析を進めていく予定です。
全国の人口100万人あたりの医事関係訴訟の発生率(中央値)は6.30件/年であり、全国と比較して発生率が有意に高い地域は、東京都(12.97件/年、P<0.001)及び大阪府(10.99件/年、P<0.001)、低い地域は茨城県(1.77件/年、P<0.001)、福島県(1.93件/年、P<0.001)、岐阜県(2.50件/年、P<0.001)、秋田県(2.65件/年、P<0.001)、三重県(2.74件/年、P=0.001)、埼玉県(2.79件/年、P<0.001)、青森県(3.07件/年、P<0.001)、岩手県(3.36件/年、P=0.005)、山梨県(3.53件/年、P=0.009)、千葉県(3.58件/年、P<0.001)、長野県(4.20件/年、P=0.004)及び愛知県(4.78件/年、P=0.015)であることが明らかとなりました(図1)。また、全国の医療機関1000施設あたりの発生率(中央値)は4.38件/年であり、全国と比較して発生率が有意に高い地域は、東京都(6.99件/年、P<0.001)及び大阪府(6.68件/年、P<0.001)、低い地域は、茨城県(1.52件/年、P=0.002)、福島県(1.59件/年、P<0.001)、岐阜県(1.89件/年、P=0.002)、三重県(2.03件/年、P=0.004)、秋田県(2.21件/年、P=0.003)、埼玉県(2.47件/年、P=0.001)、山梨県(2.50件/年、P=0.022)及び青森県(2.60件/年、P<0.001)でした(図2)。さらに、全国の医師・歯科医師1000人あたりの発生率(中央値)は1.92件/年であり、全国と比較して有意に高い地域は、大阪府(3.05件/年、P<0.001)及び東京都(2.79件/年、P=0.003)、低い地域は、茨城県(0.73件/年、P=0.005)、福島県(0.76件/年、P=0.001)、岐阜県(0.83件/年、P=0.027)、徳島県(0.92件/年、P=0.049)、秋田県(1.00件/年、P=0.017)、三重県(1.04件/年、P=0.011)、山梨県(1.11件/年、P=0.037)、埼玉県(1.15件/年、P=0.009)及び青森県(1.16件/年、P=0.003)でした(図3)。
医事関係訴訟における地域差が生じた要因については、医療機関における医療過誤が少ない(医療側の要因)、または弁護士不足などによる訴訟へのアクセスの阻害(司法側の要因)などが想定されますが、現在追加解析を行っています。医療の質向上と被害者救済を含めた医療訴訟対策の検討のために、今後も精力的に解析を進めていく予定です。
発表雑誌
-
雑誌名
「医療の質・安全学会誌」(19巻3号、331-336、2024年)
論文タイトル
我が国の医事関係訴訟における地域差の存在 -医事関係訴訟の都道府県別発生率-
著者
平賀秀明*, 小田愛美, 増田陽子(*責任著者)
用語解説
(注1)医事関係訴訟
裁判所が作成している事件票上で「医療損害賠償」として集計されている事件のことである*2。医事関係訴訟においては、検査、手術、投薬等の必要性や適応の有無、診療行為が適切なものであったか否か、検査や治療行為についての説明が十分なものであったか否かなど、医療行為に関する様々な事項をめぐって争われることが多く、審理を進め、裁判をするには、医学に関する専門的知見が必要となる*2。
*2:参考文献
最高裁判所, 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第1回), https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20505106.pdf, https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20505101.pdf
裁判所が作成している事件票上で「医療損害賠償」として集計されている事件のことである*2。医事関係訴訟においては、検査、手術、投薬等の必要性や適応の有無、診療行為が適切なものであったか否か、検査や治療行為についての説明が十分なものであったか否かなど、医療行為に関する様々な事項をめぐって争われることが多く、審理を進め、裁判をするには、医学に関する専門的知見が必要となる*2。
*2:参考文献
最高裁判所, 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第1回), https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20505106.pdf, https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20505101.pdf
添付資料
以上
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東邦大学薬学部社会薬学研究室
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E-mail: hiraga-hideaki[@]phar.toho-u.ac.jp
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