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プレスリリース 発行No.1297 令和5年7月18日

わが国の精神保健医療福祉サービスに対する人々の認識やニーズが明らかに
~ うつ病患者と健常対照者への全国オンライン調査より ~

 東邦大学医学部精神神経医学講座及び同社会実装精神医学講座 根本隆洋教授らの研究グループは、2022年度厚生労働科学研究費補助金 障害者対策総合研究事業「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける若年者等に対する早期相談・支援サービスの導入及び検証のための研究」(通称 MEICISプロジェクト、研究課題番号:22GC1001)において、全国的なオンライン調査により、わが国の精神保健医療福祉サービスに対する人々の認識やニーズを明らかにしました。今後、各自治体が実施する「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築やサービスの提供において、精神障害に関する普及啓発活動に加えて、若年層のメンタルヘルスに関する早期相談・支援を導入することが不可欠であると考えられます。
 
 本研究成果は、2023年7月17日に国際学術誌「Frontiers in Psychiatry」に掲載されました。

発表者名

内野 敬 (東邦大学医学部社会実装精神医学講座 助教)
福井 英理子(東邦大学医療センター大森病院 精神神経科 院内助教)
田久保 陽司(東邦大学医療センター大森病院 精神神経科 院内助教)
岩井 桃子(東邦大学医療センター大森病院 精神神経科 臨床心理士・公認心理師)
片桐 直之(東邦大学医学部精神神経医学講座 准教授)
辻野 尚久(東邦大学医学部精神神経医学講座 客員准教授)
今村 晴彦(長野県立大学大学院健康栄養科学研究科 准教授)
藤井 千代(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部 部長)
田中 邦明(東京足立病院 名誉院長)
清水 徹男(秋田大学 名誉教授、秋田県精神保健福祉センター 所長(研究当時))
根本 隆洋(東邦大学医学部精神神経医学講座・社会実装精神医学講座 教授)

発表のポイント

  • 現在わが国では、厚生労働省により「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築が推進されており、各自治体が主体となり具体的な精神保健医療福祉サービスを実施することが求められています。
  • 全国オンライン調査の結果、うつ病患者群、健常対照者群ともに、大半の人々は精神障害の好発年齢や有病率についての知識を有しておらず、また自身が精神的不調を抱えた際に、気軽に相談できるサービスが思い付かないと回答しました。
  • 両群ともに、「メンタルヘルス・精神疾患に対する国の政策により重点的に取り組むべき対象」としては「思春期・青年期」とする回答が最多でした。また、地域包括ケアシステムに求めるものは、「精神障害についての正しい知識の普及啓発」という回答が最多でした。
  • 今後、各自治体が実施するサービスには、精神障害に関する知識の普及啓発に加えて、若年層が早期にメンタルヘルスに関する相談・支援を受けられるサービスを含むことが欠かせないと考えられます。

発表内容

 わが国では2017年より、厚生労働省を中心に「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築が推進されています。その理念として、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが地域の一員として安心して自分らしい暮らしができることが示されています。本システムにおいて、各種サービスの実施主体は自治体となりますが、そのサービスの内容は様々で、相談窓口の設置、救急を含む医療体制の構築、住まいの確保、障害福祉サービスの拡充、当事者・ピアサポーターとの協働など、多領域にわたる基盤の整備が必要です。しかしながら、各自治体とも未だ具体的なイメージが定まらないのが現状です。
 本システムの構築においては、地域住民のニーズを把握し、これに沿ったサービスを提供することが欠かせません。今回、本研究グループは、わが国の精神保健医療福祉サービスについての人々の認識とニーズを明らかにすることを目的に、全国オンライン調査を行いました。
 調査は2021年3月に実施され、既に精神保健医療福祉サービスを利用している人(うつ病患者群)、及びこれまでサービスを利用したことがない人(健常対照群)を対象としました。2020年の国勢調査の結果に基づいて年齢と性別を統制し、全国のうつ病患者500名、健常対照者500名を抽出し、回答の結果を解析しました。
 結果として、うつ病患者群の70%以上、健常対照者群の90%以上の人々が、精神疾患の好発年齢や有病率についての知識を有していませんでした。また、うつ病患者群の約70%、健常対照者群の約90%の人々は、自身が精神的不調を抱えた際に気軽に相談できるサービスを思い付かないと回答しました(図1)。

図1.精神保健医療福祉サービスに対する知識や態度についての回答結果
【質問】不安や気分の落ち込み、ストレスに関することなど、メンタルヘルスに関する悩みを、気軽に相談できる相談窓口は思い付きますか?


 両群とも、メンタルヘルス・精神疾患に対する国の政策により重点的に取り組むべき対象として「思春期・青年期」という回答が最多であり(図2)、地域包括ケアシステムに求めるものは「精神疾患についての正しい知識の普及啓発」という回答が最多でした(表1)。

図2.精神保健医療福祉サービスの対象についての回答結果
【質問】メンタルヘルス・精神疾患に対する国の政策として、重点的に取り組むべきだと思う対象を選んでください。

表1.精神保健医療福祉サービスの内容についての回答結果
【質問】精神障害者が地域の一員として安心して自分らしい暮らしができるための地域包括ケアシステムにおいて、重要だと思うことを選んでください。

 これらの結果から、今後、各自治体が主体となり整備する地域包括ケアシステムにおいては、精神疾患の正しい知識についての普及啓発を行うことに加えて、若年層がメンタルヘルスに関する早期相談・支援を受けられるサービスを含むことが不可欠であると考えられました。

 本研究グループは、日本生命保険相互会社との共同研究契約に基づく社会連携講座として、2023年4月に「社会実装精神医学講座」を開設し、実装科学(implementation science)の手法を用いながら、本邦各地における若年層に向けた早期相談・支援体制の構築や支援に努めていきます。

発表雑誌

    雑誌名
    「Frontiers in Psychiatry」(2023年7月17日)

    論文タイトル
    Perceptions and attitudes of users and non-users of mental health services concerning mental illness and services in Japan

    著者
    Takashi Uchino, Eriko Fukui, Youji Takubo, Momoko Iwai, Naoyuki Katagiri, Naohisa Tsujino, Haruhiko Imamura, Chiyo Fujii, Kuniaki Tanaka, Tetsuo Shimizu, Takahiro Nemoto*(*責任著者)

    DOI番号
    10.3389/fpsyt.2023.1138866

    論文URL
    https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyt.2023.1138866
以上

お問い合わせ先

【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学医学部精神神経医学講座・社会実装精神医学講座
教授 根本 隆洋

〒143-8540 大田区大森西5-21-16
TEL: 03-3762-4151(代表)
E-mail: takahiro.nemoto[@]med.toho-u.ac.jp
URL: https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/psycho/

【本ニュースリリースの発信元】
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